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俺のトモダチ事情。  作者: 日向栞
【嘘つき彼女、赤い傷。】
11/19

新たなナゾ。

「じゃーねー」


 校門前に来たとき、実咲は俺を見て言った。右手で手を振りながら、何事も無かったように。

 そして自然に背を向ける。そりゃ俺と反対方向に行くんだから、当然だ。

 だから、俺はその背中に言う。



「なんかあったら、電話しろ。……なんかあったら、な。」


 実咲の足が止まる。振り返らず、ただ止まる。

 何も喋らない。僅かにさえ、揺れもしない。呼吸する音さえ聞えない。


 もう一度、何か声をかけようとした瞬間、実咲が振り向いた。


「イラズラでもかけたるわー!! ばぁか、ヘタレのくせにーー」


 ニッ、と笑って、駆け出す。

 俺は何か言おうと、開きかけた口を閉じた。その代わりに、笑う。

 ガキか。コイツは。バカって……。


 駆けた実咲は、すぐにある曲がり角も曲がりきれずに、ふらふらと減速し、後ろからでも分かるくらいに、膝に手をつき、露骨に疲れていた。……そういえば、体力なかったな。それに荷物もあるし。


 そんな微笑ましい光景に、頬が緩みそうになった瞬間――――目を見張った。

 あの、ガキくさい実咲が、どこか諦めたような、泣きそうな、顔で腕を眺めながら笑っていたから。

 あんまりにも、俺の中では異様な光景に、目が離せないでいると、すぐに元の顔に戻り、そのまま実咲は真っ直ぐに前を向き、曲がり角を曲がって行った。


 なんなんだよ、アイツ……。

 一瞬の怒涛な精神的疲労に、力なく笑うと、今度は大きなため息が出た。人って実はそうそうため息なんてつかないと聞いたけれど、最近はやけに多い気がする。

 わけわかんねぇ、本当に、マジで。




 それでも、実咲の知られざる一面? を見れたのは、……なんだろう、少し、距離が近づいた気がして嬉しかった。

 たとえ、その距離が、いい意味でなかったとしても。

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