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俺のトモダチ事情。  作者: 日向栞
【日常、春。】
1/19

新学期、初めの初め。

 桜舞い散る春――――では残念なことにない、四月。前日の大雨のせいで散った桜をバックに、俺は中学三年生になった。

 まぁ、たいした心境の変化もないし、どうでもいいことなのだけれど、周りにいる新一年生の笑顔や緊張した面持ち、進級して二年生になった後輩の誇らしげな顔を見るのは、少し楽しいのかもしれない。


 そんなことを思いながら昇降口に張り出された紙を見る。

 人が多いから時間がかかるのを覚悟していたかが、すぐに名前を見つけることができた。


 3-1 佐藤葉月(サトウ ハヅキ)


 別にクラスなんか、どうだっていい……と言いたいところだが、今回は違う。

 一組、というのは何故か問題児が必ずいるクラスで、その問題児を制御す出来る先生が担任なる……が、そんな人はそうそういないから、同じ人になる。

 ちなみに、一年、二年、と一組を担当していた先生は那賀川ナカガワだった。

 そして、俺は去年も……一組だった。


 先生が同じだと、尚更変わった気がしないな。


「また一組か……」


 別に物凄く嫌なわけではないが、クラスにいるであろう問題児の顔を思い浮かべ、ため息が漏れる。

 あれは少し厄介だ。関わらなければいい、と言い切るには距離が近すぎる。


 そもそも俺は、クラス替えや担任替えを、どうでもいいなんて思っていない。

 誰がいるのか、誰と一年過ごすのか、ましてや今年は三年生。修学旅行や最後の体育祭、文化祭の盛り上がり度も、クラスメイトと担任にかかっている。

 そんな教室に期待や不安が入り混じった心境で行くのが――――ではなくて、そんな心境の友達を見るのが、楽しみだった。

 俺は、まぁ……うん。周りほど気にはしない。どうでもいいわけじゃないけど。


 学年が上がったせいで増えた階段を黙々と上り、[3-1]と書かれた教室に入って、名前の張られた席に座る。

 周りを把握しようと首を動かした瞬間、机の上に手が勢いよく置かれた。


「なぁっ!!」

「っ、ぅお!?」

「同じクラスになんの初めてだろ? 話したことはあるけどさ。改めまして、俺は近藤一樹コンドウ カズキって言うんだ。よろしくな!!」

「あ、あぁ。俺は佐藤葉月だ……よろしく」


 勢いよく、しかも満面の笑みで自己紹介をされ、俺は少したじろいだ。

 ていうか、コイツ眼鏡ギリギリのところに手を振り下ろしやがった……。壊す気なのか?


 ずれた眼鏡を直しながら、未だに笑顔なそいつを改めて見る。

 染めたのかと思うほど、明るい茶髪に、まだ冬服の奴が殆どで、入学式&進級式なのにもう半袖を着ている。流石にまだ寒いだろ。

 こんなやつ、中学生……ましてや三年生でもいるんだな。そんなの小学生までだろ。

 そんなことを考えつつ、苦笑いをしていると、後ろから控えめに背中を突かれた。


「……葉月君、葉月君」

「ん?」

「同じ、クラスですね……よろしくお願いします」

「あぁ、菜乃花ナノカ


 振り向くと斜め後ろに、こげ茶の髪を二つ結びにした、小学校からの友人――――斎藤菜乃花サイトウ ナノカがいた。

 色白で華奢な身体に、どこかのお嬢様を思わせる穏やかな微笑みを浮かべる菜乃花。噂によれば男子にモテるらしい。

 そんな彼女の名前を呟くと、座ったまま深々と頭を下げられた。

 ……相変わらず、菜乃花は礼儀正しいようだ。






 しばらく他愛のない会話を続けていると、ガラガラッとドアが開けられ、先生が入ってきた。

 ――――那賀川だった。

 がっしりとした体系でいつもジャージ姿。少し背が低いけれど、鋭い目は威圧感抜群だ。


「今から集会だぞー、全員集まれー」


 その声に、小さくため息をつくと、急に重くなった腰を上げ、イスをしまう。


 さて、長い長い地獄のスタートだ。

 ……なんてったってウチの校長の話は長いことで有名だから。











 そのあと、校長が代わったと聞いて、三年の全員が廊下で喜び、そのせいで那賀川に集会の倍の時間説教をされたのは、また別の話。

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