第七話 防衛戦
今回は急いで書き上げた為に誤字脱字が多くあるかもしれません。気がついた方は教えて頂ける幸いです。
リアとレオ、ウィーナを含めた十人が砦の一室に集まっていた。
「敵兵数は約千。このシュク砦でどう立ち向かうか……」
三十歳位の騎士が眉間に皺を寄せて難しい顔をする。
それを真似たように部屋にいる騎士全員が同じ表情をする。
「いっそ砦を捨てて逃げるというのは?」
「砦の先には民家もある。騎士として彼らを見捨てる事は有り得ぬ」
「うむ。それはそうだが、リアーナ様の安全には仕方あるまい?」
今、この場に居る騎士達の意見は逃げるのと迎え撃つの二つに別れていた。
レオはウィーナが何も言わないので黙って壁に背を預けて隅に立っていた。
「このまま話し合いをしていては時間が無くなる。多数決で決めるのはいかがか?」
一番歳のとった騎士が決定方法を提案し、他の騎士達は頷いた。
「まずは迎え撃つ方が良いという者?」
仕切っていた騎士と他の騎士二人が手を挙げる。
「私の代わりに民が傷つくのは有り得ないわ」
その言葉と共にリアは手を挙げる。
リアの行動に騎士達は目を見開き驚く。
ただ一人、ウィーナはその行動に優しく微笑みながら手を挙げる。
「リアーナ様ならそうおっしゃると思ってました」
これで票数は五。
レオは溜め息を吐き、挙手をする。
「俺が意見していいのか分からないが、迎え撃つに一票」
「では、敵兵を迎え撃つ事に決定します。兵達には第一次戦闘隊形を」
ウィーナの命令に一人にの騎士が立ち上がり、走って出て行く。
「……問題はどう迎え撃つか」
その難題に室内は沈黙に捕らわれた。
兵力が十倍。いくら砦での防衛戦だからといっても兵力が違い過ぎる。
「近づく前に矢で殺し尽くすなどは?」
「現実的ではないな」
「ここは意表をついて攻勢に出るはどうだ?」
「うむ、迎撃と撤退を繰り返して兵を削るのが現状最良かもしれない」
「しかし、敵兵に囲まれ孤立すれば兵力が激減するな」
再び思考の袋小路に入り黙り込んだ。
だが、そんな状態で一人だけ声を出す人物が居た。
「私に考えがあるわ」
リアは腕組みをして悩むように周りを見渡す。
「レオ。森で相手にした敵兵は何人?」
「確か百人位だったと思う」
リアはそれを聞いて蠱惑的な笑みを浮かべる。
その表情に嫌な予感を感じたレオは釘を刺す。
「流石に千の兵の相手は出来ないぞ」
「そんな事させないわ。ウィーナ、レオと同じ事出来る?」
次にウィーナの方に向き、リアは真面目な顔で質問する。
ウィーナは少し思考を巡らせてから口を開く。
「試してみないとわかりませんが、五十人ほどなら大丈夫だと思います」
「充分よ」
リアは砦の地図を取り出して机の上に広げる。
「私が考えた作戦はまず二人以外の兵士は全て弓兵として動いてもらうわ」
リアがそう口にすると一人の騎士が手を挙げて疑問を声に出す。
「砦の守りはとうするんでしょうか?」
その疑問は尤もだ。全て兵士を弓兵すればじかに敵と相対する兵士がいなくなり防衛が出来なくなる。
リアはその言葉に頷きながら答える。
「砦の守りはレオとウィーナの二人にやってもらうわ」
「なっ!?」
「いくらなんでもたった二人で千の兵を相手にする事は無理ですっ!!」
騎士達は怪訝な表情でリアを見つめる。
その視線をモノともせずにリアは悪戯をするような顔をして地図上の一ヶ所を指差す。
「ここに二人を配置するわ」
その作戦に室内は静まり返った。
その中で一番最初に口を開いたのは意外にも話し合いに口を出さなかったレオだった。
「勝算と理由は?」
「まず理由は二人が他の騎士に比べて桁違いに強いから。次に勝算は決して勝たなくてもいい防衛戦だからよ」
レオとリアはお互いに見つめ合い視線を外さず真剣な表情をする。
「ウィーナ、グネルヴァ領主に援軍の要請を」
「既に連絡はしてあります。今朝早馬で後一日でこちらに到着するようです」
ウィーナと話が終わったリアはレオに最終確認をする。
「レオ、出来る?」
「一日中戦い通しか」
ニヤリと口元を歪めながらレオは答えを言う。
「それしか方法が無いのなら仕方ない」
その台詞を聞いてリアは次にウィーナの方へ向き直り見つめる。
リアが口を開く前にウィーナが言葉をかける。
「リアーナ様のご命令とあらば」
リアは嬉しそうでもあり、悲しそうでもある不思議な表情をして頷いた。
「それでは全て兵士は各々の配置に着け」
ウィーナの命令と共に騎士達は部屋から退室をし、三人だけ残った。
「レオ、ウィーナ。ごめんなさい」
パタンとドアが閉まったのと同時にリアは頭を深く下げて二人に謝った。
理由は言わずもがな、今回の作戦は二人に死ねと言っているのと同じ意味だったからだ。
「頭を上げてくださいリアーナ様」
ウィーナは諭すように柔らかな声で語りかける。
「この作戦でリアーナ様を確実に護れるのなら私は死をいといません」
「……ウィーナ」
リアは泣きそうになりながらも必死に我慢してウィーナに抱き付いた。
「ありがとう。でも、絶対に死なないで」
「はい」
返事を聞くとリアはウィーナから離れてレオを見つめる。
「レオも絶対に死なないで」
「……わかった。死なないでリアを護るとこの刀に誓おう」
レオの答えを聞いたリアは一歩下がり、まぶたを閉じて手を胸に当てて祈る。
「神の加護が有らんことを」
その祈りを聞いた二人はリアの考えた作戦通りある場所向かった。
砦を囲んだ傭兵と騎士の軍団から開戦を告げる角笛が鳴り響く。
「準備はいいですか、レオ?」
「ああ、大丈夫だ」
ウィーナは槍を構え、レオは紫竜の柄を握る。
二人の目つきが鋭い物に変わる。
「開けぇ!!」
騎士の声と共に二人の視界に千の敵兵の姿が映り込んだ。
「矢を放てっ!!」
ウィーナの命令で百の矢がレオ達に突撃して来た敵の兵士達に放たれる。
「「「ギァァア!!」」」
半数の矢が命中し、半数の矢が地面に突き刺さる。
矢で殺し損なった大量の兵が二人に襲いかかって来た。
何故、二人だけが狙われているかというと。
「門が開いているのなら普通はそこから入ろうとしますよね」
「だけど、あんな大人数じゃこの砦の狭い門は入れない。相手は自主的に四人ずつ入る事になる」
「四人程度なら私達の敵ではないですからね」
流石はリアーナ様、と言ったウィーナは敵が五十メートル先に居るのを確認して祝詞を唱える。
「来るぞ」
「わかってます。レオ、あなたの背中は私が護ります」
「じゃあ、ウィーナの背中は俺が護るよ」
戦前の緊張をほぐす軽口を言い合って二人は眼前まで迫ってきている敵兵に突撃する。
ウィーナは最初に門へ侵入して来た三人の心臓を続けざまに突き刺し殺して。
レオは槍を引き戻す前のウィーナに斬りかかった一人の首を居合いで断ち切った。
「ウィーナ!!」
「わかってます」
一瞬の戦闘だったが、その隙に傭兵が一人レオ達の横を通り過ぎて砦内に侵入しようとしていた。
それに気づいたレオが声を出すのと同時にウィーナは駆け出して後ろから首に槍を突き立てる。
「……カフッ」
傭兵が死んだのを横目で確認したレオは目の前に居た敵兵の脚を切り裂き、横を通り抜けようとした敵には一回転して刀で肩を切り落とす。
見事な連撃だったが、回転するのはどうしても行動を制限してしまう。
それは相手にとって絶好のチャンスだった。
「し、死ねぇ!!」
斜め前から迫ってくる切っ先にレオは反応出来ない……いや、反応しない。
「レオ、油断大敵ですよ」
「がぁあ、あぁあ」
レオの顔の真横から伸びた槍が相手の眉間を正確に捉えて風穴を空けていた。
「すまない」
礼を言いながらレオは槍が刺さったままの相手を蹴って数メートル飛ばす。
「ひっ、ば化け物」
「撤退、こんな奴らに勝てるかっ!!」
今までの戦いを見て戦意喪失した敵兵士達が慌てて門から退却していく。
しかし、国王騎士団はその隙を見逃さない。
「今だ、放て!!」
どこからともなく騎士の声が響き、門の外に無数の矢が降り注いだ。
敵の悲鳴が門の中に反響して二人は顔をしかめる。
「……第一陣はこれで終わりのようですね」
「すぐに次が来る。気を抜くな」
レオの言葉と共にそれまで動きのなかった敵兵士達が盾を持ち動き始めた。
「矢を防ぎつつ、盾で俺達を押し切る作戦か?」
「そのようですね。私が正面から行きます、なので」
「俺は裏から叩く」
ウィーナの台詞に被せてレオは先回りした言葉を言う。
その言葉にウィーナは頷きながら微笑む。
「では、いきましょう」
「ああ」
ウィーナは地面を蹴って敵に突撃し、レオは高く飛び上がり天井を蹴って相手の隊列の後方に着地した。
今度の敵の数は約五十。
これからまだ増えていくだろうが、二人は臆する事無く敵を切り裂き、突き刺し、肉片の山を築き上げていく。
四日ペースにしようと思った矢先に投稿が遅くなるという大失敗……
誠にすいません
だがしかし、年末とお盆は忙しいから仕方ないですよね?
分かってくれる人が居る事を祈ってます。