第四話 援軍
……主人公最強と言ってる割にはレオがピンチです。
この後ももっとピンチになる予定なのですが……どうしよう?
今回もまたバトルです。
稚拙な文章かもしれませんが、最後まで読んで頂けると幸いです。
PS、新キャラ登場
レオとリアは森を走っていた。
「リア、大丈夫か?」
「平……気だ、から」
リアに合わして走っている為、レオはほとんど息切れをしてない。
しかし、駆けている速さは長距離を走るには少し速い。
「森を抜けるぞ」
前方の木々の間から草原と少数の民家が見える。
「リアは民家に駆け込め」
「レオはどうするのっ!?」
レオは森の終わりで立ち止まり、今まで走ってきた道を睨む。
「迎え撃つ」
何かを言いかけたリアだったが、その言葉を飲み込み眉をひそめた。
「……必ず迎えに来てよね」
「もちろん」
リアは悔しそうな表情をしながら民家に走り去っていく。
それを確認したレオは刀に手を当て瞑想する。
──百、いや百二十?
森に音が反響して聞き取り辛いが、敵兵力に大体の予想を付ける。
兵力の差に絶望しかける。
「……護るモノさえなくなった身」
レオは思い出す。
「だが、今一度護る事を出来るのなら」
無力で何も出来なかった過去を。
「今度こそ護ってみせる」
瞬間、レオの姿は消えて辺りには大量の馬の足音が響いていた。
「はぁ……はぁはぁ、はぁ」
リアは涙を浮かべて走っていた。
「レ、オ死な……ないで」
彼女が泣いている理由は恐怖からくるものではなく。
──何も出来ない。私が残っても足を引っ張るだけ。
役に立てない悔しさからだった。
「もう、少し」
森から民家まで半分に差し掛かった時にリアはある事に気が付く。
「あれは、馬?」
左側から大量の馬が走って来るのが見えた。
リアは慌てて走り出す。
「騎士団!?」
森から来る騎士団はレオが抑えているはずだ。
ここに騎士団が来るとするなら元から別働隊で動いていたのか、方向からして他の領地の騎士団だろう。
しかし、後者は考えにくい。
「ここはもう、グネルヴァ領……なのに」
他の領地の騎士団が勝手に入って来るなど有り得ない。
逆説的に森で騎士団が二手に別れて一方がリアを捕らえに来たに違いない。
「流石に……馬には勝てないかしら」
リアも頑張って走っているが、馬の速さには勝てずにどんどん距離を詰められる。
「きゃぁっ!?」
長い時間走り続けて疲労が溜まっていたのだろう。
地面あった小さな出っ張りを跨ぐ事が出来ずに躓いてしまう。
──もう脚が動かない。
馬の足音が段々と大きくなる。
リアはレオのように音で戦力を分析出来る訳ではないが、今から逃げ切れる数ではないとわかった。
──レオ、ごめんなさい。
今も独り戦っているであろう唯一の味方の姿を思い浮かべる。
捕まる事を覚悟したリアだったが、彼が責任を感じてしまうのではないかと心配していた。
気が付くとすぐ近くまで馬が迫ってきていた。
──最期にレオに会いたいな。
自分のピンチに颯爽と現れた人物の顔を思い描く。
ただ、リアは彼にもう会えない事に涙を流した。
「そのような場所に寝ておりますと体に悪いですよ。リアーナ様」
思っても無いことを、と思いながら起き上がるリア。
しかし、相手の姿を見た瞬間、動きを止めた。
「あなたは!?」
レオはその頃、ひたすら刀を振り回していた。
「ハッ!!」
気合いと共に馬の足を切り裂く。
「うぁあ、たす……助けて!!」
落馬をして命乞いをする騎士の首を切り落とす。
同時に横に跳び、後ろから突撃してきた騎士を避ける。
「行かせるかっ!!」
横を通り抜けようとした騎士に落ちていた剣を投げつける。
ザシュッ。
「……ゴフッ」
「二十……二十一、二十二」
突っ込んでくる馬を木に飛び移る事で避け、同時に木を蹴って騎士に瞬時に近付き刀を振るう。
着地と共に横から近寄ってきていた騎馬の首に突き刺し、そのまま力を込めて騎士の胸に刀を突き立てる。
──まずい、押し切られる!!
レオはほとんど無傷だが、確実にじりじりと森の出口に近付いている。
多勢に無勢、あまりにも戦力差があり過ぎた。
レオが一人倒している間に相手は三人出口に向かって走り出し、その三人を倒すと六人が出口に向かっている。
「二十四人目!!」
木を利用して跳び蹴りをして馬から落とした騎士の首を空中ではねる。
しかし、その選択はミスだった。
「もらったぁ!!」
「くっ!!」
空中で無理な体勢だった為、避けることが出来ずに槍を持った騎士がレオのわき腹を穿つ。
「……ガ、アァ」
「うぐぅ」
槍がわき腹を刺す一瞬手前で体を捻ってかわし、相手の首を刀先で切り裂いた。
槍を持っていた騎士は倒れ、レオはわき腹から血を流した。
「……二十五」
自分の血で汚れている槍を手に取り、出口に向かって走っている騎士に投げつけた。
「二十六」
レオは焦っていた。
何故なら今自分がヤられてないのは場所が森だからであり、馬がその機動力を存分に発揮出来る草原では流石のレオでもここまで保たないからだ。
「二十七、二十八」
続け様に二人の騎士の体を斬る。
出口まで五十メートル。
──打って出るしかないか。
一秒だけ動きを止めたレオ。だが、瞬時に駆け出しトップスピードなる。
近くに居た騎士の脚と馬の横腹を斬る。
斬る瞬間だけ速度を落とすが、またすぐに最高速度となり移動する。
斬る、避ける、突き刺す、跳ぶ、蹴る、斬る、駆ける、跳ぶ、斬る、斬る、避ける、突き刺す。
「三十六」
先行してきた騎士全員を斬り捨てたレオは刀で体を支える事でやっと体勢を維持する事が出来た。
無理もない、先の戦闘と併せて五十三人との殺し合いを繰り広げたのだから。
「……来たか」
体中の筋肉が休ませろと悲鳴をあげる。
歩くだけで筋肉が千切れるような痛みを発する。
しかし、レオは歯を食いしばり力を込める。
「……護ってみせる。絶対に」
「お願い助けて!!」
その人物を見た瞬間、リアはレオの救出を願った。
その人物……ウィーナ・アリアスは優しく微笑む。
「大丈夫ですよ。我らティルナノーグ国王騎士団はリアーナ様の味方です」
黒のポニーテールをしたウィーナはうやうやしく頭を下げ、リアに手を差し出す。
その手を握って立ち上がったリアは首を横に振る。
「レオを……今まで私を護ってくれたあの人を助けて!!」
リアは喉が張り裂けるような大声で懇願する。
「今も戦っているレオを助けて。ウィーナ」
懇願は嗚咽に変わり、リアの瞳には涙が溢れ出す。
ウィーナはその表情に困惑するが、それがリアの願いならばと頷き騎士達に命令する。
「半数は私に付いて来い、もう半数はリアーナ様を御守りし砦までお連れしろ」
「ウィーナ、ありがとう」
「いえ、リアーナ様の願いは我らの願いですから。それでは行って参ります」
ハンカチをリアに渡してウィーナは白い角のある白馬に跨る。
「ティルナノーグの騎士よ。反逆者共に正義の剣を突き立てよ」
「「「「オオオォォォ!!」」」」
「突撃っ!!」
地響きのような轟音と共にウィーナ達は森の方向へ走り出した。
「六十六、六十七、六十八」
レオは満身創痍で刀を振るっていた。
わき腹からは止まる事無く出血をし、顔には大量の斬り傷、左腕は馬に蹴られて動かなく、両脚は酷使し過ぎて感覚が無くなってきている。
「押し切れぇ!! 相手は一人、休ませるな!!」
出口まで十メートル。
文字通りギリギリの所でレオは耐えていた。
「六十九、七十」
馬の脚を斬り、騎士が落ちた所で刀を突き立てる。
ついでに殺した騎士から剣を奪い、違う騎士に投擲する。
出口まで五メートル。
敵は残り五十人。
「ガァ、……七十一」
横から槍で殴られたレオだが、わざと吹き飛びダメージを減らす。
吹き飛んだ先の木を踏み台に跳躍して殴った相手の腕を斬り落とす。
結果的に相手を倒せたが、出口まであと木が三本だけになってしまった。
「今だ突撃!!」
敵の全騎士が勢いよく突撃して来るのにレオは歯軋りをし、近くにあった数本の木の幹に刀を振るいすぐに後ろに跳ぶ。
「ギャアア!!」
「ひぃいい、ぐぺ」
「避けろ避けろ!!」
自身の重さに耐えきれなくなった木が数本倒れて数名の騎士達を押し潰した。
しかし、レオの反撃もここまでだった。
「囲め囲め囲め」
騎士達がレオの周りを半円状に囲む。
その数、約四十人。
「だいぶ手こずらされたな黒いの」
「お前達が弱いだけだ」
黒いの呼ばわりされたレオは吐き捨てるように答える。
「ふん、殺せ」
この隊のリーダーであろう騎士がつまらなさそうに命令する。
命令と共に数人の槍を持っている騎士が前に出る。
「……ごめん、リア」
レオは頭に浮かんだ少女に向けて謝罪をする。
同時に騎士達は槍を引き突き刺す。
瞬間。
「「「「オオオォォォ!!」」」」
怒号と一緒に馬の駆け出す音が聞こえた。
「な、なんだ!?」
「ひっ、アレは!!」
「国王騎士団!?」
「逃げろ!!」
悲鳴にも似た声をあげ、騎士達は半円状だった陣形を崩し始める。
「バカな、国王騎士団は演習に出てるはず」
相手のリーダーの顔に動揺が浮かぶ。
その瞬間をレオは見逃さなかった。
「ハッ!!」
最後の力を振り絞り、一瞬でリーダーの首を斬り裂いた。
「た、隊長!?」
「撤退、撤退!!」
リーダーの死亡で騎士達は完璧に浮き足立ち烏合の衆と化した。
それと時を同じくして角の生えた白馬に乗った騎士が膝をついているレオの前に現れた。
「ユニコーン?」
レオは初めて見たソレをユニコーンだと直感した。
しかし、レオは幻を見ているのかと感じていた。
何故ならユニコーンは他の馬より速く強靭だが、圧倒的に数が少なく、何より乙女の前にしか顕れないと言われているからだ。
「貴殿がリアーナ様の言っていたレオですね?」
ユニコーンに乗っていた人物が降りてレオの前に立つ。
その人物はレオと同じ漆黒の髪を後頭部で一つに結っていて、容姿は綺麗だが少しつり目で凛々しい印象を受ける少女だった。
「あ、ああ。そうだけど」
一瞬呆然と見とれてしまったレオだったが、慌てて返事をする。
「随分とボロボロですね。立てますか?」
「大丈夫、一人でも立ち上がれる」
レオは差し出された手を握らず刀で体を支えて立ち上がる。
「私の名前はウィーナ・アリアスです」
「俺の名前はレオンハルト。リアからはレオって呼ばれている」
相手にならって自分の名前を言ったが、ウィーナは眉間に皺を寄せてレオを睨み付ける。
「……今なんと?」
「レオって呼ばれている」
聞き返されてレオはついさっき言った台詞をそのまま口に出す。
しかし、ウィーナの意図した答えではなかったらしく眉間の皺が少し深くなる。
「もっと前です!!」
「俺の名前はレオンハルト」
「行き過ぎです。リアーナ様をなんとお呼びした!?」
「えっと、……リア?」
言った瞬間、ウィーナの額に青筋が出来るのをレオは見た。
「リアーナ様を呼び捨てにするとはいい覚悟ですね。……そこに正座!!」
「はいっ!!」
とっさにレオは冷たい地面に正座をする。
いや、レオには正座をする以外の選択肢がなかった。
「傭兵風情がリアーナ様を呼び捨てにするとは何事ですか!!」
「いや、それはリア本人が……」
「言い訳など聞いてません!! 大体ですね」
ウィーナのお説教はその後一時間にも渡って続けられた。
終わった頃には出血による目眩と正座による足の痺れで立ち上がる事が出来なくなったレオだった。
余談だが、リア達を追いかけていた騎士達はウィーナが率いた国王騎士団によって殲滅させられた。
真面目キャラ、ウィーナ。
私的にはすごく気に入っているキャラです。
これから彼女も活躍すると思うのでよろしくお願いします。