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剣の民と華の少女  作者: ナナヤ
第二章 ティリア編
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第十六話 ソフィア

すいません。遅れました。

今回はいつもとは少し違い、レオが出てきません。

多分、次回にはレオが出てくると思います。

レオ好きな人が居たらごめんなさい……。

誤字脱字、文法がおかしかったら教えて頂けると幸いです。


 神聖ティリア王国は約三百年前に建国された比較的新しい国だ。

 ティリアが出来た背景には当時存在したララス帝国の宰相の反逆があった。

 ララス帝国の宰相は国の王を殺し、次の王位継承権を持つ幼い王子を亡き者にしようとしていた。

 この時、予知によりその事実に気が付いた聖女ティリアが王子を助け、反宰相派の貴族達をまとめ上げて宰相に対抗した。

 聖女ティリアが早期に動き出したおかげで両軍とも被害が最小限で解決した。

 そして、更にティリアの名が有名になった事柄がある。

 それは反逆の罪で宰相が処刑される時の事だ。

『たとえ、国を陥れようとした罪人でも一人の人間です。許す事が出来なくとも安易に命を奪って良いという事ではありません』

 そうティリアが言うと国民は彼女の思想を尊敬し、宰相を殺さずに追放するだけにしたのだ。

 他にも沢山の功績と尊敬に値する思想から彼女はいつしか聖女と言われだした。

 それから数十年、彼女が亡くなった時にララス帝国は国名を神聖ティリア王国と改名した。

 これが神聖ティリア王国の建国と聖女ティリアの偉業だ。






「ここかしら?」

「そうだと思います」

 ティリアの王城に着いてリア達はすぐさまある部屋へ赴いていた。

 先ほど巡回をしていた兵士に聞いた友人の居場所まで来た二人は辺りを見回して場所を確認する。

「とりあえず、ノックしてみるわ」

 そう言ってリアが扉を叩こうとした瞬間。

「どういう事だ、ソフィア!?」

 中から男の怒鳴り声が聞こえてきた。

「ウィーナ!!」

「はい、わかってます」

 ウィーナは勢い良くドアを開けて中に侵入する。

 それと同時に脚の力で前へ跳躍する。

「はぁあ!!」

 気合いと共にウィーナは右手で紅髪の男の首を掴み、右足を相手の脚を引っ掛けて押し倒す。

 見た目は柔道の大外刈りに似ているが、首を抑えて地面に倒す分、殺傷能力は各段に上がる危険な技だ。

 しかし、男はわざと後ろに倒れるようにバクちゅうをしてそれを避ける。

「止めてください!!」

 男が着地した瞬間に銀髪を腰まで伸ばした少女が間に入って仲裁する。

 銀髪の少女がいきなり目の前に現れたおかげでウィーナと紅髪で鋭い目つきの男は冷静さを取り戻し、やっとお互いの顔を認識する。

「アルベルト・アルティスラ?」

「そう言うお前はウィーナ・アリアスか?」

 二人共、面識がある訳ではないが、ある程度友好関係にある国の有名な騎士の顔は噂で聞いていた。

 お互いに害が無い事がわかると構えを解いて頭を下げる。

「すいません。怒鳴り声が聞こえたもので怪しい者だと……」

「いや、俺が声を荒げたせいだ」

「いえ、こちらが」

「いや、俺が」

「ストップ、二人とも謝ったんだからそのくらいでいいんじゃない?」

 謝り続ける二人にリアは半ば呆れながら間を取り持つ。

「……そうですね。ソフィア様に会いに来たのですし」

「そうよ。私達はソフィアに会いに来たんだから」

 ウィーナは苦笑い、リアは笑顔でそう言った。

「ありがとう。リアーナ、ウィーナ」

 銀髪の少女……ソフィア・シェンアルトが微笑みながらそう応える。

 朗らかな雰囲気が流れるが、そこでリアがある事に気付く。

「……ウィーナ。そこのバカを捕まえて」

 アルベルトを指差しながらそう言い放つ。

 ウィーナとアルベルト、そしてソフィアは驚いた顔をする。

「り、リアーナ様?」

 流石に招待された国の騎士をバカ呼ばわりしたのに焦る。

 しかし、リアは怒ったようにアルベルトを睨み付ける。

「ねぇ、なんでソフィアが泣いてるの?」

「「えっ?」」

 ソフィアとウィーナが驚き、声をあげる。

「ソフィアは隠そうとしてるみたいだけど、目元が赤いし、うっすらだけど涙の跡があるもの」

「確かにそうですね」

 リアに言われてウィーナはソフィアの顔を注視すると、そう言って頷く。

 ソフィアは慌てて手で顔を隠す。

「という訳だから、ウィーナ」

「わかりました」

 ウィーナは再び攻撃しようと動き出す。

 が、それをソフィアが止めに入る。

「待って下さい。私のせいですから、アルは悪くないですから!!」

「どういう事? 話してくれる、ソフィア?」

 ソフィアの態度をいぶかしんだリアは首をひねる。

 そんなリアに苦笑をしながら、泣いていた理由を話し始める。

「先日、私に婚約の話があったんです」

 ソフィアは俯きながら話を進める。

 そんな中、アルベルトは壁側に立ち尽くす。

「その方はこの国有数の貴族なのですが、私はそれを断ったんです」

「なんで断ったの?」

 国有数の貴族ならば、断る必要性が感じられないリアはそう質問する。

「それは……」

「その貴族の性格が最悪だったとか?」

「マイフレバ候は誇り高く、気高い人だっ!!」

 今まで黙っていたアルベルトは自国有数の大貴族を侮辱された事に声を張り上げる。

 リアはそんなアルベルトを睨むと、一言。

「何よ?」

「いや、なんでもありません」

 大人しくアルベルトは引き下がる。

 リアはアルベルトの言動とソフィアの話で大体泣いていた理由を理解する。

「要するに、婚約を断ったソフィアがそこのバカに怒鳴られて泣いたのね?」

「そうですけど、アルは悪くないんです。私が……私が忘れられないから」

 絞り出すように泣き始めるソフィア。

「悪いけど、ウィーナ」

「そうですね。わかりました」

 リアがすまなそうな表情をすると、ウィーナは理解して頭を下げて扉に向かう。

「後、そこのバカ」

「わかっている。…………すまないが、ソフィアを頼む」

「言われなくてもわかってるわ」

 ウィーナに続いてアルベルトは部屋を出て行った。

 パタン。

 二人が部屋を出ると、ソフィアの泣き声だけがこだまする。

 しばらくすると、ソフィアは落ち着きを取り戻してくる。

「ごめんなさい」

「大丈夫?」

 心配そうな表情をするリア。

「もう、大丈夫です。ありがとう、リア」

「気にしないで。ソフィアの為だもの」

 再びお礼を言いながらソフィアは席を立つ。

 リアはテーブルにあったクッキーを一つつまむ。

「はい、リア」

 ゆっくりとした優雅な動きでソフィアはテーブルに紅茶を置く。

「ありがと」

「熱いから気を付けて下さいね」

「ん。さすがソフィア、紅茶が凄く美味しいわ」

 普通はメイドや執事が煎れる紅茶だが、ソフィアは趣味として紅茶を煎れる。

 しかも、その腕はヘタな小間使いより遥かに上手い。

「久しぶりね、ソフィア」

「久しぶりです、リア」

 そうお互いに言うと二人は嬉しそうに笑顔になる。

 二人の心情は約二年ぶりに会う親友を嬉しく思っている。

「ソフィア。良かったらさっきの話聞かせてくれる?」

 急に真面目な声でそう聞く。

 ソフィアは悲しそうな笑顔で話を始めた。

「リアに出会う九年くらい前の話です」

 何故九年前の話から始めるのかわからないリアは頭の上にハテナマークを浮かべる。

「私に婚約の話があったんです」

「えっ? そんな昔に?」

 今、一七歳のソフィアから考えると六歳の頃の話だ。

 一般的に婚約は一五歳から二十歳の間に行われる。

「今考えるとおかしな話だったんですが、その頃は深く考えずに了承したんです」

「それじゃ、ソフィアは婚約してる事になるじゃない?」

 リアの言うとおり、そんな昔に婚約が成立しているなら先ほどの婚約話は意味がない。

 だが、ソフィアは首を横に振る。

「…………その婚約は破棄された事になってるんです」

「なんで?」

 リアに質問されると、ソフィアは泣かないが、悲しそうな表情をする。

「亡くなったんです」

 その答えにリアは話を聞いた事に罪悪感を覚える。

 しかし、ソフィアはでも、と声をあげる。

「あの方は、絶対……生きてます。生きてるはずです」

 それは願いというより懇願。

 心の底からそう願うソフィア。

「絶対、だい、じょうぶだって。あの方は……、わらって、そう言ったん、です」

 泣かないように震えながら我慢していたソフィアだが、とうとう涙を流し始める。

 リアに少しだけソフィアの気持ちが分かった。

 二ヶ月前、ティルナノーグで起きた反逆。そして、助けてくれた傭兵との別れ。

 ソフィアとは状況が違うが、辛いという気持ちは痛いほどわかる。

「だから、わた、しは。あの方が、戻ってくるまで、待って……、いたい、んです」

 数滴だった涙は次第に流れを速くさせる。

「私の、わがままだって、解って、るんです。でも、忘れられない、んです。あの方の、笑顔が、声が……」

「……ソフィア」

 数十分経つと、ソフィアは落ち着き始めだした。

「ごめんなさい、リア」

「こっちこそ無理矢理聞いてゴメン」

 気まずい雰囲気が部屋の中に漂う。

 そこで、ある事を思い付いたリアはそうだ、と言って立ち上がる。

「街に行きましょ、ソフィア」

「え?」

 いきなり言われた台詞が理解できなくてソフィアは戸惑う。

 しかし、リアにはそんな事は関係無く、ソフィアの手を引くと、立ち上げさせる。

「そうと決まれば、行くわよ!!」

「え? ええっ!?」







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