第25話 村へと着けばテンプレ通りにイベント発生?(2)
村の中央で震えるランちゃんの肩を、トラがぽんと叩いた。
「ちょっと待っとれよ、ランちゃん! 儂が仙術で音の出所を探しちゃるけぇ〜」
「……お願い、ある……。トラ……頼む、ある……」
トラは目を閉じ、指先を軽く弾いた。
その瞬間──空気がわずかに震え……
「……あっちじゃ」
余りにも早い特定に、ランちゃんは目を丸くした。
「えっ!? は、早いある……!」
俺はトラの指す方向を見ながら、ランちゃんへ優しく言った。
「女性だと思う。三人いるよ。村の人かな?」
ランちゃんは驚愕しながらも、俺たち三人を見つめた。
「ミチとトラ、山……凄いある! 何でこんなにも早く音の出所が解り、人だと認識して、性別、人数まで特定できるあるか!? まるで英雄さまや勇者さまみたいある……!」
トラと山ちゃんは褒められて上機嫌……。
「よせやい〜、ランちゃん! 儂ら褒めても何も出んけぇ〜、あっははははははははは」
「困った時はお互いさまだからね、ランちゃん……。ねぇ、ミチノリさんもそう思うよね」
俺は照れながら頷いた。
「うん。じゃあ、行こうか! 怪我してるかもしれないし」
「うん、ミチの言う通りある」
俺たちは頷き合い、音のする方向へ向かった。
◆ 倒れていたのは──妖狐の三姉妹?
「あっ! 居た!」
トラが立ち止まり、指差した先には──
地面を枕に横たわり、呻いている三人の女性……
ランちゃんは蒼白になり、駆け出した。
「妖蘭ー! 胡蝶ー! 寒椿ー!」
名前を叫びながら、三人の許へと飛び込む。
俺たちも急いで駆け寄ったが──
そこで俺は思わず叫んだ。
「な、何でこの人たち……。頭に狐の耳がついてるんだぁあああっ!?」
三人とも、ランちゃんと同じ中華美人……。
その上年上のお姉さま……。
しかし、頭にはふわふわの狐耳……。
チャイナドレスは破れ、妖艶な太ももや下着まで露わになっている。
トラと山ちゃんは完全に釘付け。
「……はぁ……」
「……はぁ……」
鼻の下を伸ばし、すけべ顔で固まっている。
俺は二人へ怒鳴った。
「トラ! 山ちゃん! ボーッとしてないでランちゃんのところへ行くぞ! 仙術で傷を治すんだ!」
「えっ!」
「ああ!」
「わかった、ミチのあんゃん!」
「うん、行くよミチノリさん!」
二人は慌てて我に返り、ランちゃんの後を追った。
◆ 妖狐の三姉妹の妖力は──50?
ランちゃんは三人の肩を揺らしながら叫ぶ。
「妖蘭ー! 胡蝶ー! 寒椿ー! 大丈夫あるか!? 返事するある!」
俺は三人の状態を確認しようと仙術を使った。
──妖力:50
「……あっ、本当だ……妖力がある……」
トラと山ちゃんも頷く。
「儂はじっくり見ちょったから気づいたで〜。耳がついちょるし妖力もある」
「うん、僕も妖力を感じたよ。三人とも妖狐だね」
俺はさらにランちゃんへ視線を向けた。
──しかし、ランちゃんの妖力は測定不能。
(……誰だ、コイツは?)
仏さまへ念を送っても返事はない。
(お〜い、仏さま〜! 妖力50って高いのか低いのか!?)
完全に無視。
俺はランちゃんを横目で見ながら、内心で警戒を強めた。
しかし──
「ミチ〜! 妖蘭の傷を早く治して欲しいある! お願いある!」
ランちゃんが涙目で嘆願してきた。
俺は慌てて頷いた。
「あっ、ごめん……。今すぐ治すよ!」
( 仙術《《ヒール》》発動! ……たぶんこれでいけると思う……?)
俺は掌をかざし──
生前、ネットゲームにハマっていた息子たちが叫んでいた言葉を思い出す。
だから俺は脳内で想像! 妄想!
よし! やるか!
「ヒール!」
青い光が掌から溢れ、妖蘭の身体を包む。
「……ッう……。あっ……。痛……。たた……」
呻いていた妖蘭の顔が、徐々に穏やかになっていく。
俺は続けて叫んだ。
「トラ! 山ちゃん! 自分の前のお姉さんも治して!」
「うん! ミチのあんゃん!」
「了解、ミチノリさん!」
二人は掌を広げ──
「ヒール!」
青い光が三人の妖狐姉妹を包み、傷が癒えていく。
◆ 天界──観世音菩薩の視点
釈迦如来さまは蓮の上で微笑んだ。
「(釈迦如来さま……。予定通り、妖狐三姉妹との遭遇イベントが発生しました)」
釈迦如来さまは、観音菩薩さまの話を聞き、微笑み、お茶を飲みながら頷き、終われば。
「(よろしい! ミチたちが女性を助けるイベントは、ラブコメとしても美味しいですからね)」
観世音菩薩はくすりと笑った。
「(この後は《《妖狐三姉妹とのラブコメ騒動》》を発生させます。
ミチたちを《《命の恩人》》として慕わせる予定です)」
釈迦如来さま、満足げに微笑む。
「(ふふ……物語はますます面白くなりますね)」
◆地上──妖狐三姉妹、目を覚ます
「……あ……あなたたち……助けてくれた、の……?」
妖蘭がゆっくりと目を開け、俺たちを見つめた。
その瞳は、まるで恋する乙女のように潤んでいた。
トラと山ちゃんは、また鼻の下を伸ばす。
ランちゃんは三姉妹の手を握りしめ、涙をこぼした。
「妖蘭……胡蝶……寒椿……! よかったある……!」
俺は胸を撫で下ろしながら思った。
(……これ、絶対に《《次のラブコメイベント》》始まるやつだよな……)
──そして、釈迦如来さまと観音菩薩さまの仕掛けた
【九尾の妖狐三姉妹がミチ、トラ、山ちゃん三兄弟のメインヒロインになる、ラブコメ騒動】イベントが幕を開けるのだった。
◇◇◇




