学園長からの呼び出し
俺の城に招待するよ!夜のダンスパーティーをしよう!
我ながら良い誘い文句だったのではないだろうか。
隠語に隠語を重ねてスマートな誘い方だ。もう誘い下手なんて言わせないぞ。
ニマニマしながら自習室へと歩いている。
姫と木こりの姉妹とお爺さんに王子が並んで歩いているんだ、目立つ。
あと着替える時間が無かったとはいえ、お爺さんの変装は解いて欲しい。
いくら俺でもお爺さんは抱けない。
そのくらい完璧な変装なんだよな。
演劇部の皆は公演の成功に興奮している。
「あんなに盛り上がったのは陽太様が居たからなのよ。男装の王子様ではこうはいかなかったわ。本当にありがとう」
部長さんが言うには、なんでも普段プロが行う演劇では『白雪男装王子』という題名らしい。
女性が男装して王子役をやり、その王子を眠らせ観客が好き勝手するのがウケている。
そういう事か。演劇って静かに見るイメージがあったんだよ。それなのに今日のお客さんは良く喋るなと思っていたんだよ。
知らなかったのは俺だけだったのか。
「でも陽太くんが知らなかったのが逆に良かったのよ。新鮮だったし、最後のキスからのディープキス、そして自習室に誘う流れ。あの後お客さんなかなか立ち上がれなかったのよ!全員濡れてたわ!」
本当かよ。
「抱き付いて匂いを嗅いだり、あのパンツ見せ付けるクダリなんて女性なら一度は妄想する事よ。あれ?部長って確か下着…」
「嫌~!陽太様になんて物を見せてしまったのよ私」
「いやいや、この後ちゃんと見せてもらいますから皆の」
「「「「いや~ん♡陽太様のエッチ♡」」」」
ピンポンパンポーン♪
『一年A組の陽太様、至急学園長室までお越しください。至急学園長室までお越しください』
ピンポンパンポーン♪
「「「「そんなぁ~」」」」
なんで皆は落ち込んでいるんだ?
そんなのブッチすればいいだろ。ブッチは死語か。
「陽太くん、これを見て生徒手帳のここ!学園長からの呼び出しには直ちに答える事。男性も特別扱いとはならない。直ぐに行かないといけないの!陽太くん」
「え~、嫌だよ!俺のこれどうするの?もう限界だよ!生殺しだよ!」
「「「「そんなの私もだよ~」」」」
最後に皆とハグとキスをして、後日絶対に誘うからと約束して学園長室へと向かった。
学園長には一言言ってやらないとだな。
この学園の一番偉い人だろ?言える訳無いよなぁ。
学園長室の前では学園長自ら出迎えてくれ、そのまま頭を下げられた!
「陽太様、急な呼び出し本当に申し訳ございません。陽太様に会って頂きたい人が中に居るのです」
ふむふむ、学園に多額の寄付をしている財閥の孫娘か。学園長も断り切れなかったのだろう。
俺に何か頼みがあるようだ。
って絶対に面倒なやつだろ!嫌だよ!
「会うだけ会って帰られてもいいですから!どうかお願いいたします!」
会うだけだよ?
頼みごとを聞くかは分からないよ?
コンコンコン♪
ドアをノックして学園長に続いて入る。
目の前のソファーには優雅に紅茶を飲む令嬢が居た。女の子やお嬢様なんて言えない、令嬢だ。
俺に気付くと立ち上がり綺麗なカーテシーで挨拶をした。見るからに上質なワンピースの裾を持ち膝を曲げる姿に見惚れた。
「お初にお目にかかりますわ。わたくし桜子と申します。以後お見知りおきを」
桜子という名前通り綺麗な美人さんだ。
一人称が「わたくし」なんて言う人だ。絶対に関わってはいけないと俺のセンサーが反応する。
帰りたい。
とりあえず挨拶か。
「ご、ごきげんよう」
…無理だ。




