俺が催眠にかかってみた
「おはよう(小声)」
いつものように教室に入ったが今日はいつもと違った。
「おはよヨータ♡」
「「おはようございますヨータ」」
三人の女子が挨拶を返してくれる。
「おはよう、チハ。それにサオリンとビビもおはよう」
うぉ~、俺が普通に挨拶してるぞ!
しかも呼び捨てで呼ばれてるし、女の子を愛称で呼んでいる!?
クラスがざわついているな。
それもそうか、男性を呼び捨てにしてはいけません!とこの間の授業でやってたし。
まあネタバラシすると、これはゲームの中の名前だ、いわゆるプレイヤーネームなんだ。
そりゃ、ボイスチャット繋いで三日もゲームやってたらお互い呼ぶのにも慣れる。
最初は大変だったが。
この三人は千春さんに沙織さんに美々《みみ》さんだ。
チハにサオリンにビビ。
分かりやすく言うと目隠れ女子三人組。
前にヘアピンをあげた三人。
元々三人でゲームをやっていたようで、俺とゲームのランクもほぼ同じくらい。姫プならぬ王子プをされる事もなく皆でチャンピオンを目指した。熱かった。
週末はこの四人でずっとゲームをしていた。
対戦ゲームだけではなくパーティーゲームだってしたんだ。
初めての女の子とのゲームは楽しかった。
えっ?
今日は催眠アプリやらないのか?って?
それなんだけどさ、正直もうやりたい事はやった感はあるんだよね。
顔を見て、太もも見て、おっぱいは見れなかったが、女の子とゲームをやって。
なんだか満足してしまったというかなんというか。
こっちから命令する事が無くなってしまったんだ。思い付かない…しいて言えばデコルテを見る事に未練はあるが。
いや、逆に考えろ!こっちから命令する事が無くなったなら女子から何かして欲しい事があるか聞いてみればいいのか?
あれ?何かして欲しい事ある?なんて催眠で出来るのか?
なんだか催眠が分からなくなってきたな。
そうだ!
俺が催眠にかかってしまうというのはどうだろうか?
いいんじゃないか!
もちろんかかった振りだが。
それなら女子が欲望のままに何か命令してくるかも!?
なんかコレってエッチじゃね?
そりゃ怖さもあるよ、でも少しエッチな命令とか受けてみたくもある。
最悪、襲われそうなら催眠解けた振りして逃げればいいから大丈夫だろう。
俺がかける催眠はエッチなのかエッチじゃ無いのかどうなのか分からない。俺は楽しくやっているが他の人はどんな使い方をするのだろう?
気になるな。
なんだか楽しくなってきた!
やるぞ!
いつものように教壇に立ち催眠アプリを起動する。違うのは画面を俺が見ている事。
幾何学模様がグルグル回り、ホワン♪ホワン♪と音が鳴る。
「あ、あの、皆に見て欲しいアプリがあるんだけど、これ見てよ。催眠アプリなんだけどさ…少しエッチな命令が…出来る…うっ、なんだか頭が…あぁ、力が抜…け…る」
教卓にスマホを投げ出し、頭をガクンと下げ両手も脱力させる。
ちょっと演技が臭かったかな?
思い付きにしては良かったよな?
いつも皆はこうなってるのよ、なんて言えないけど。これが公式の掛かり方だと思う。
「「「えっ?」」」
「「「嘘でしょ!」」」
「「「なんで?」」」
「「「本当に催眠術にかかっちゃったの?」」」
そりゃビックリするよな?
目の前で催眠術に掛かった人がいたら。
俺も最初はそうだったよ。
でもまだ俺が催眠アプリにかかっているかどうかを怪しんでいる感じがあるような?
どうにかなれ!俺に出来る事はもう無い。
さあ!来い!
誰か俺に命令してくれ!
「陽太君、まずは催眠に掛かっている間の記憶は無くなります。これから起こる事は何も覚えていないのです。分かりましたね?分かったら顔を上げてください」
キ、キター!
釣れたー!フィッシュオン!




