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第四十六話 俺は戦争に参加する

 ワイルウェフ号が沈んだことで俺の計画が全てパアだ。

 しかも船員として乗っていた池内蔵太も遭難して死んでしまった。船長はよく知らない鳥取の人だけど優秀だったんだろう。

 莫大な借金ものしかかってやる気が無くなってきた。


 亀山社中で商売して世界に乗り出す夢はもう無理だ。幕府を倒す目的も薩摩と長州を結びつけたことで俺の役目はおしまい。もう薩摩で温泉に浸かって余生すごそうかな。


「坂本さん。長州に兵糧を届けてもらわんといかんのでごわす」

 落ち込む俺に対して西郷が容赦なくせかす。

 長州が幕府と戦争するからその援護をするんだったな。薩摩は表立って動けないから後方支援とかく乱というわけ。

 そして支援の兵糧を届けるのが表向きは薩摩と無関係の亀山社中。つまり俺達。

 そのために薩摩に来るはずだったワイルウェフ号は沈没。後は長州名義のユニオン号しか残っていない。


「薩摩は借金の返済は急かさないでごわす。坂本さぁの好きにすればよろしい。おいどんらは同志ですからの」

 これは「借金返済は急がせないけど必ず返せ。それまで薩摩のパシリとなれ」と訳します。マジで。

 くそっ。薩摩に借金でしばられて隠居もできねぇ!

 俺は意気消沈したままユニオン号へ乗り込むのだった。



 薩摩を出発したユニオン号は一路長州へ………向かう前に長崎へ寄ることになった。亀山社中でやることがあるからな。

 そして長崎に寄る前にワイルウェフ号が沈んだといわれる海域に寄って黙祷を奉げる。

 池内蔵太とその他大勢、安らかに眠れ。

 長次郎も死んだし近頃は死ぬ奴が多い気がする。

 そもそもは亀弥太が死んだのを皮切りに武市に長次郎と次々と知り合いが死んでいく。なんか疲れたわ。



 長崎についた。長州につくまでにいくつかやっておくことが有る。

 一つはお龍の処遇。彼女はしばらく京都には帰れないだろう。かといって薩摩に置いておくのも気がひける。西郷にはあんまり借りを作りたくないからな。薩摩といえば家老の小松がお人よしっぽくて利用出来そうだったが………やめとこう、どうせ西郷と大久保にいいように操られるだけだ。

 やはり長崎の信用できるところに預けとかないと。


「それで私のところに来たわけですか」

 とお慶さんは俺たちを見て言う。

 洋風の間取りの部屋にテーブルと椅子が用意してあり、俺とお龍は椅子に座り用意された日本茶を飲んでいた。和と洋の混ざった複雑な空間だ。

「坂本さんには贔屓にしてもらってますし借りもありますから構いませんが……」

 お慶さんが口ごもる。

 何か問題でもあるのだろうか。

「そろそろコレを引き取ってもらいたいのよ」

 ハァとため息を吐く。

 その視線の先には洋室の板間に正座している陸奥がいた。

「そんな! ご主人様!」

 嘆く陸奥。

 お前は身も心もペットになってしまったのか………。


「アレは引き取りますから、お龍のことはお願いします」

「悪いようにはしないよ」

 俺はお慶さんと握手すると陸奥の手を引いて立ち上がらせようとした。

「ま、待ってください。坂本さんだって綺麗な女の人連れてるじゃないですか。人のことに口挟まないで下さい」

「龍は妻ぜよ。いい加減に動け」

「妻って………結婚したんですか!? お元さんはどうしたんですか?」

 馴染みの芸妓の名前を陸奥が言う。

「お元?」

 背後でお龍のつぶやきが聞こえる。

 俺は力を込めて陸奥の鳩尾にパンチを入れた。グフッと声を上げて陸奥が気絶する。そのまま担ぎあげると背後を見ないまま部屋を出る。

「いろいろと忙しいんで行って来るぜよ。お龍も元気でな!」

 陸奥を担いだまま振り返らずに逃げ出した。



 亀山社中はごったがえしていた。

 かなり久しぶりに帰ってきたんだが人が増えてるな。

「龍馬さん。久しぶりです」

 声をかけて来たほうを見ると、土佐での知り合いがいた。

 確か、そう長岡謙吉ながおかけんきち。小龍先生のところでも一緒だった奴だ。

「亀山社中の仲間になりたいと思って来たんですが、龍馬さんがいないので今は無理だと言われまして待っていたんです」

 なるほど。しかし、俺のいない間も仲間はどんどん増えていたんだが。

 その辺りの管理してるのは沢村だっけか。あいつは志士としては使えるが事務仕事には向いてないんだよな。長次郎がその手の仕事が得意だったんだが………。

 ふと思い出す。長岡は医者の子供で学問は得意だったはず。

 沢村よりも亀山社中を任せるのに適しているかもしれない。

「長岡。歓迎するぜよ。ちくっと手を貸してもらいたいことがあるきに」

「はいっ。それはそうとして、気になってたんですが、その担いでる人は誰ですか?」

 俺は肩に担いでいた陸奥を下ろした。

「亀山社中の一の頭脳派ぜよ。こいつにいろいろ教えてもらうといい」

 悲しいことに事実なのよね。他に脳筋しかいねぇ!



「沢村、おんしはワシと長州に行くぜよ」

 と、沢村を連れて長州に旅立つことにした。留守は陸奥と長岡に任せる。借金だらけで首が回らない財務を押し付けたといってもいいけどな。

 俺は亀山社中の脳筋連中を連れてユニオン号へと乗り込むと長州へ向かった。

 長州はいよいよ幕府との開戦である。

 気が重い。


「幕府と戦争じゃー!」

 みんなに向けて激を発する沢村。

 沢村、自重しろ。

「おおっー」

 沢村の激に合わせて気勢をあげるみんな。

 沢村だけじゃねぇな。人選これで良かったのだろうか。

 危ないところに行くから武闘派で揃えたのは不味かったかな。




 長州に着くとさっそく木戸との会談が始まる。

 俺は西郷から託された兵糧を長州に受け渡す手続きをしようとした。

「兵糧は坂本さんが貰ってください」

「えっ?」

「薩摩から受け取るとうるさい人が藩内にいるんですよ。薩摩は幕府を牽制してもらうだけで十分です」

「ほ、本当に米はもらっていいんだな。後で返せと言うなよ」

「ええ。坂本さんも船が遭難したということで大変でしょう」

 ラッキー。

 今は少しでも物入りだ。金でも米でももらえるものは貰っておけ。

「では、ユニオン号は予定通りに長州のものとして受け取ります」

 そうだった。

「幕府との戦で使いますので亀山社中への貸し出しは終わりです」

 なん……だ……とっ!

「そうですね。下関の高杉のところへユニオン号を届けていただけませんでしょうか?」

「し、下関はもうすぐ開戦するらしいぜよ……」

「そうらしいですね」

 にこにこと笑いながら応対する木戸。

 兵糧を貰ったからには断れない流れだ。この策士が!

 タダより高いものはない。



「ユニオン号は亀山社中の人たちが操縦していただきたい。戦の指揮は僕がとる」

「任せて下さい」

 胸をドンと叩いて快諾する……沢村。

 おい、俺に話を通せ!

 まあ断れないんだけどさ。

「坂本さんは本陣でお休みください」

 えっ、いいの?

「沢村さんらをお貸し頂ければ十分です」

 どうぞ、どうぞ。

 こんなのでよければ。

「それでは安全のために護衛を」

 至れりつくせりだな。

 俺は陸地でゆっくりと戦争見物でもするか。


「よろしくでござる」

「おんしかよっ!」

 出てきた三吉慎蔵に突っ込みを入れた。


 薩長同盟締結で俺の護衛の任務が終わった三吉慎蔵は長州に帰ってきていたらしい。

 それにしてもまた俺の護衛とは縁があるというか。

「拙者と坂本氏は赤い糸で結ばれているのでござる」

 気持ち悪いこと言うな!

 なんか心理的疲労が………。



 慶応二年六月。

 幕府と長州の戦が始まる。世に言う第二次長州征伐、又の名を四境戦争という。

 この戦争において坂本龍馬は高杉晋作と共に戦い大きな戦果を挙げた。

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