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第四十一話 俺は念願の船を手に入れ・・・ない

 長州の武器の買い付けは上手く行っているようである。

 才谷屋の流れを汲む身としては大きな商談に入りたい気もあるが、こういうことは商売が分かっている長次郎に任せた方がいいだろう。

 俺は薩摩や長州との橋渡しでいろいろやらなきゃいけないことが多いからな。

 俺は薩摩との調整、長次郎は長州と武器購入交渉、陸奥がお慶さんと・・・まあ、適材適所で仕事ってことで。


 どうやら薩摩の武器代理購入により薩摩と長州の壁が壊れつつあり、薩長同盟の話が進みそうである。嘘から出た誠というか俺が本当に薩長同盟の中心人物になってしまった。中岡は既に手を引いて今は別の仕事を始めているらしい。いろいろ忙しいやつだ。

 まあ、こうなったら中岡の手柄も全部奪っておくか。あいつは細かいこと気にしないタイプだし。


 そんな折に長次郎から相談を持ちかけられた。

 「長州が武器弾薬だけでなく船も購入しようとしてます。しかし、長州に軍船を動かす人員が足りません。ここでうまく立ち回れば船を手に入れることが出来るかもしれませんよ」

 なんだと。それは好機!

 「長次郎! なんとしてもその船を手に入れるぜよ。そうすれば亀山社中は薩摩の紐付きでなく独立できるぜよ」

 最近は薩摩にも長州にもいいように追い込まれて使われる毎日だ。これで一発逆転してやる。

 「そうなれば遊んでる沢村さん達も仕事が出来ますしね」

 あいつらは遊んでるわけでもないぞ。

 え・・・カステラ作りと長崎での連絡係りと訓練・・・かな?

 カステラは質が悪いのが広まって激安にもかかわらず売れなくなってきたからな。

 そうなると金を稼げる仕事をしてるのは俺と長次郎だけか。まあ、陸奥も金づるとのコネだからある意味で仕事してることになるのだが。

 


 久々に亀山社中の秘密アジトに戻ると人が増えていた。

 な・・・何を言ってるのか わからねーと思うが、

 俺も何をされたのかわからなかった。

 「ああ、龍馬さん、近頃の龍馬さんの活躍が噂になって、亀山社中に入りたいという人が増えたんですよ。これでかなりの一大勢力になります」

 無駄飯食らいが増えてる!

 「さ、沢村ぁ・・・」

 俺はジト目で沢村をにらむ。

 「こいつは土佐藩の長岡謙吉(ながおかけんきち)、龍馬さんと同じく河田小龍先生の弟子でかなりの知恵者です。こいつは小曽根英四郎(こそねえいしろう)、あの小曾根さんの息子でぜひ亀山社中に入りたいと、奴は土佐の池内蔵太(いけくらた)で、隣が越前の小谷耕蔵(こたにこうぞう)で・・・」

 えーい、どうでもいいー。

 今は俺や長次郎くらいしか仕事がないんだから、人が増えても支出が増えるだけでいいことなんかねー。

 こうなったら長次郎になんとしても船を手に入れてもらわないと破産する!

 沢村の奴はいい仕事したという充実したドヤ顔してやがるし。

 「はぁ・・・まあ、俺はまた薩摩に行くから沢村は留守番しときや。西郷から生活費を受け取ってくるまでは節約しとけ」

 「その・・・お金についてですが、どうも近藤の奴が使い込みをしているようで」

 沢村が真剣な顔で言う。

 長次郎がか?

 うーん、しかし、長次郎は今は重要な交渉をしているから予算については好きに使わせてるしな。

 「あいつには長州との重要な交渉があるやき、予想外の出費でもあるのやろう。好きにさせとき」

 俺が言うと沢村は不満気のようだが頷いた。

 どうも俺がいないとまとまらないようだな。



 それからなんやかんやでまた日々が過ぎ、長州の武器弾薬の調達の目途がついた頃に長次郎に会った。

 開口一番、長次郎の口から期待していた言葉が聞ける。

 「龍馬さん! ついに船が手に入りました!」

 長次郎の言葉に俺は小躍りした。

 やったぜ。

 俺は念願の船を手に入れた!

 「船はユニオン号といいます。薩摩藩名義で長州の金で買い付けますが、所有権は亀山社中です」

 これで勝つる!



 その話を聞いてすぐに俺は桂に会いに長州へ行った。

 俺を薩長同盟の首謀者に祭り上げて謀殺しようとした嫌な奴だが、ユニオン号のことで上機嫌なので不問にしてやろう。

 それに長州は今は大変なことになっている。

 ついに幕府が軍を動かしたのだ。第二次幕長戦争の始まりである。

 かなりテンパっているようなので、寛大な俺は見逃すことにした。

 「桂さん、京都で西郷と話をしたらどうです。もう悠長なことは言っておられんですやろ」

 薩摩と長州の壁が取り除かれつつある今、一気に薩長同盟まで行ったほうがいいだろう。

 「ああ、坂本さん。大事なことを言い忘れてました」

 なんだ?

 「僕は改名して桂でなく木戸になりました」

 そんなのどーでもいいわ!

 「もうしばらくしたら京都へ向かいます。それまでの繋ぎをよろしくお願いします」

 またも使い走りな俺。

 いいけどな。



 大阪へ行き薩摩側と連絡を取り、再び長州へ向かう。

 下関で桂・・・もとい木戸と再開した。

 「坂本さん、困ったことが起きました」

 なんだろう。

 薩摩との話がまたこじれたのか?

 俺の責任じゃねーぞ!

 「長州の金で買ったユニオン号の名義が亀山社中になっているのですが、どうしたことなんでしょう?」

 少しキレ気味に睨み付けてくる木戸。

 「ちょ・・・それはそういう契約と聞いてるぜよ!」

 「伊藤がそちらの近藤に騙されて調印したと言ってます!」

 長次郎~!

 まずい。ここで木戸と長州を怒らせたらまずい。

 しかし、ことは船だぞ。簡単にひけない。

 「け、契約が成立したなら仕方ないやき」

 「ですが、これについて怒ってる仲間が近藤を闇討ちする計画を立ててます。僕では抑えきれません!」

 お前は長州の重役なんだから抑えろよ!


 仕方無くユニオン号は長州名義でその操舵を亀山社中に依託。また、水夫の訓練も亀山社中が行うという契約を新たに結ぶことになった。


 俺はこうして念願の船を手に入れ・・・ることが出来なかった。

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