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第三十七話 俺は長崎で薩長同盟の計画を聞く

 西郷の力を借りて薩摩で船乗りの仕事をすることになった俺たちは一先ず長崎についた。俺とか長次郎とか陸奥とか沢村とか太郎とか、まあメンバーはそんな感じ。

 なんかみんな幕府はどうだの薩摩はどうだの長州はどうだの言ってるけど、俺はあんまやる気ねぇ。しょせん俺らが何かしたって時代は動かないしな。亀弥太みたいになるだけだ。それより西郷みたいな曲者の手伝いでもしてたほうがまだ時代の波に乗れそうな気がする。まあ、あの曲者に乗せられて利用されるだけで捨てられるってことはないように気をつけんといかんけどな。


 長崎においては小曾根さんという商人と知り合った。商人の知り合いは大事にせんといかん。下関の白石とかから金たくさん借りて返してないけど、それも友達だからいいもん。

 それから芸妓のお元ともお知り合いに。ムフフ。

 長崎に京都に江戸に各地に女がいるのが船乗りの甲斐性というもんだよ。ムフフ。

 そして、長崎から薩摩へ向かうことになる少し前に俺はある男と会った。


 「おまん、龍馬か?」

 声をかけてきた男は土佐訛りでどっかで見た気がするが思い出せない。たぶん、勤皇党の誰か。誰だっけ?

 「おう、久しぶりじゃの。おまんも元気やったか」

 とりあえず知ってるふりをする。

 「しばらく長州におったぜよ」

 「長州か。今は大変らしいの」

 「ああ、それで今度は薩摩に行くんじゃ」

 男は目に鋭い光を灯す。

 ああ、なんか厄介ごとを持ち込んでくるな、こいつ。

 面倒くせぇ。

 「おまんは薩摩と親しくしてるようじゃの。俺に西郷吉之助を紹介しとおせ」

 げっ、やっぱり。

 西郷とはしばらく手組む予定だから厄介なのを近づけるわけにはいかんしな。それに長州は薩摩を恨んでるから、長州帰りのこいつが西郷を暗殺するとかもありえる。

 ここは上手く断らないと。

 「西郷は忙しいからの。そうそう人に会えんわ」

 「だが、西郷は今は長崎にいるんじゃろ。時間は少しでええんじゃ」

 ふん、身分の怪しい奴を西郷に会わせられるか。

 「目的は何だ」

 まあ、素直に答えるとも思ってないが。

 「薩摩と長州の手を組ませる」

 ・・・・?

 ハァ?

 「ソレハトテモ面白イ冗談デスネ」

 この男は頭おかしいのか。長州は薩摩を憎んでるし薩摩も長州を信用してない。

 犬猿の仲の両藩の手を組ませるだと。

 「薩摩と長州が手を組んで幕府を倒さないと日本はお仕舞いぜよ!」

 暑苦しい。

 いやー、まあ何とかなるんじゃね。

 「幕府がこのまま長州を滅ぼせば次は薩摩ぜよ。そうして薩摩も長州も滅んだら腰抜けの幕府だけでは異国の言いなりで日本は滅ぶぜよ!」

 ツバが飛んでる。汚ねぇな。

 そんなに熱くなられてもな。俺は単なる船乗りだし、仲間もいるから稼がなくちゃいかんしなー。西郷にそんな話して機嫌損ねて首なったら大変じゃん。

 「このままでは武市さんも浮かばれんぜよ!」

 ・・・おい、何て言った?

 武市がどうした!?

 「武市さんは先日切腹したぜよ」

 「詳しく話せ」

 「容堂公が後藤象二郎に命じて腹を切らせたぜよ。武市さんほど日本のことを思ってた人はおらんかったのに」

 武市が切腹・・・。

 そうか、やはりそうなったか。脱藩して逃げてれば良かったのに。馬鹿なやつだ。

 「岡田以蔵も打ち首になったとか」

 あれは普通にバカだから仕方ない。

 「おまんは武市さんの・・・」

 「黙れ」

 男の台詞をさえぎって黙らせる。

 容堂公は攘夷や志士活動に理解はあった。佐幕派ではあるが今の幕府のありように批判的だ。

 だから武市もほとぼりが冷めるまで捕らえていて、後で必要になったら利用する気でいると思っていた。

 想像以上に吉田東洋暗殺の恨みが深かったか・・・。

 

 俺は呼吸を整えて黙祷した。

 武市、お前の無念は俺が晴らす。

 「さて、その薩長を組ませる話について詳しく聞こうじゃないか」

 俺はニヤリと笑う。

 不思議と力が沸いてくるようだ。ここ数ヶ月の無気力はこのための充電期間だったのだ。

 まあ、多分。

 そういうことにしておこう。

 おっと、その前に。

 「ああ、その前に大事なことを聞かなければいけんかった」

 俺は真剣な顔で聞く。

 「なんだ?」

 「おまん名前なんやったっけ?」

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