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第三十五話 俺は蝦夷地開拓計画のために奔走する

歴史MEMO

元治元年三月 天狗党の乱

 俺は今、人生最大の悩みを二つ抱えている。

 一つは武市と勤王党だ。時勢の変化で長州系の尊皇攘夷は勢いがなくなり、土佐勤王党もほぼ壊滅した状態である。武市は投獄されてしまった。勤王党の面々は土佐で拷問を受けているらしい。

 俺たちも土佐藩から帰国命令が出た。勝先生の嘆願もかなわず俺たちは脱藩浪士の身分になった。幕府の機関である海軍操練所に脱藩浪士がいるのはマズイ気もするが、そこは勝先生がうまいことやってくれているようだ。

 訓練の傍らで武市や土佐勤王党の皆をどうにかして助けることが出来ないかという算段もしている。亀弥太、太郎、沢村らの土佐仲間と計画を練っているところだ。

 長州が京都で勢力を復活させれば、土佐勤王党の立場も有利になり、機を見るに敏な山内容堂が武市を釈放する目がないわけではない。しかし、今の京の情勢は長州にかなり不利である。そんなこんなで大阪、京で用事があるときに長州の動向を探っていると、土佐藩士の北添佶摩(きたぞえきつま)と会う。佶摩は長州とも連絡をとっていて、今は浪士たちを集めて蝦夷地開拓の計画をたてているという。

 なんか浪士を集めて将軍警備とか言ってたら新撰組ができたのを思い出すが・・・。

 しかしまあ、長州の浪士の復権の手助けにはなるかもな。あんまり過激に走って長州藩が取り潰しにでもなったら、いよいよ武市はおしまいだし。この計画にのっちゃろう。

 ということで、京と神戸を往復しつつ、亀弥太を佶摩に引き合わせてパシリに使わせたりする日々を送り、俺は浪士の蝦夷地移住計画を推進することとなった。

 この計画を上手くいかせるには幕府の協力が必要不可欠。北方警備と北方開拓と京都の治安回復という一石三鳥という妙案ということで勝先生に相談した上で、江戸の幕臣大久保一翁にかけあうことが決まった。俺は江戸へ向かう。

 

 で、二つ目の悩み。

 楢崎龍に惚れた。

 いや、なかなかなびかないところとか、粋で気の強いところが可愛いんだよね。この攻略難易度の高さに燃えてる内に本気になっちゃったというか。今は寺田屋で働いてて綺麗な化粧とかしてて、すげー美人になってるんだ。ホント、マジで。それにちょっとだけど、俺に気がある感じ? ニヤニヤ。

 まあ、それで悩みというのは江戸の佐那のこと。

 今から江戸の大久保一翁のところへ蝦夷地開拓の根回しをしに行くところなんだけど、江戸に行ったら千葉家へ寄るしなぁ。ちょっと気まずい。それに佐那のことも好きだー。二人好きでなにが悪い。男はそういうもんだ。

 ふぅ。


 俺は神戸から江戸に向かう。

 江戸についた俺は大久保一翁と面会して、蝦夷地開拓のことについて話あった。一翁は勝先生の上司であり、勝先生と同様に幕府どうこうより日本全体を見れる視野の広い人物だ。俺の話にも賛同して便宜をはかってくれることになった。

 さて、ここまでは順調。これから気合いれるぞー。千葉家だ。

「龍さん、急がしそうだね」

「ああ、海軍も忙しいし、勝先生の使いもあるし、今度は蝦夷地開拓計画も進めてるしで、体が二つ欲しいぜよ」

「二つあったら、一つは江戸に置いてくれよ。佐那が淋しがってる」

「お兄様!」

 佐那が顔を赤くして重太郎に突っ込む。

 酒も入っていい感じだ。うまくボロも出てないし順調。ちょっと気が入って飲みすぎたけれども。

「俺は土佐をまた脱藩することになったけれど、勝先生の元で海軍を作って幕府海軍の偉い人になれば、土佐藩も俺を無視できまい。そうすれば武市も助かる。それまで時間がかかるから、長州と幕府がうまく和解して、桂や久坂が復権することで武市の身の安全をはかる。そのための浪士の蝦夷地開拓ぜよ。それが全部順調。糞土佐藩にこれ以上、勤王党を弾圧させるわけにはいかんぜよ」

 なんか酔って呂律の回らない舌で変に語る俺。

 らしくはないが、この日はやけに気分良くてテンションが高かった。

「全部がうまく行けば、妻を2.3人娶って・・・」

「龍馬さま!」

 佐那の叱責。

 ちっ、冗談っぽく伏線張ろうとしたのに!

「少しションベンぜよ」

 俺は立ち上がって便所に行こうとしたが、足がふらついて倒れた。

「おいおい、大丈夫か。龍さん」

 いたた。

 ん? あー、大久保邸に着ていった羽織の袖が今ので破れたー。

 いい羽織なのにー。着替えてから晩酌するべきだった!

「はぁ。おっちょこちょいなんだから。羽織はなおしておきます」

「ええよ、新しいの買うから」

 俺はぶらぶらと邪魔だった袖を完全に破って捨てた。かっこ悪いがまあ千葉家の中なんでいいや。

 そのまま便所に行く。

 そしてこの日は早々に寝て、翌日に神戸に戻る船に向かうことにした。

 この日が千葉家に泊まった最後の日となった。

 佐那に会った最後の日となった。

 佐那は破れた袖を大事にしまっていたという。


 俺は神戸に戻ってきた。

 そこで一つの報告を聞いた。

 北添佶摩と望月亀弥太が死んだ。

 池田屋にて新撰組に殺されたのである。



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