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第三十二話 俺は勉学に励み金を借りに行く

歴史MEMO

文久三年五月 長州藩、下関から外国船を砲撃

「龍馬、脱藩の罪が許されて良かったぜよ。たまには家に帰って来い」

 権平兄貴が大阪出張中に勝塾に来た。

 会うのは一年ぶりか。みんなどうしてるかな。

 世間話や近況、土佐での家族の様子などを話した後で兄貴は帰っていく。今度会うのはいつになることやら。脱藩許されたとはいえ忙しくて土佐にもしばらく帰られないだろうし。

 文久三年の五月、俺が勝塾に入って二ヶ月過ぎた。航海術から砲術、英語などいろんな学問をする傍ら、勝先生の用事で大阪と神戸を走り回ったりもしててとても忙しい。

 長次郎、亀弥太らの勝門下生はじっくり勉強してるので俺より出来がいい。まあ、俺は勝先生の元で航海術より人脈作りとか雑用とかやってるからな。他の奴より頭はイマイチな分、人脈作り交渉は得意だから適材適所か。

 以蔵は勝先生の護衛を勤め刺客を返り討ちにしたらしい。その腕を見込まれてジョン万次郎の護衛もやったりしてた。

 武市の方は土佐に帰った。

 それを言うにはここ数ヶ月の政治状況を説明しないといけない。

 文久三年四月、幕府は朝廷に攘夷決行の約束をした。決行日は五月十日だった。これにより世間は尊皇攘夷の勝利とばかりに沸きかえったが、そう簡単にはいかない。外国の軍事力を良く知る幕府は攘夷決行は各藩が自己責任で行うことと言い圧力をかけたのだ。結果、五月十日に攘夷を決行したのは長州藩だけだった。その長州藩は沿岸の砲台を数日で外国船に破壊されて痛手を負った。

 今や世論は再び混沌としている。幕府の策で長州は孤立し、異国の強さが改めに知らされた。諸藩は様子を見守っているところだ。

 我らが土佐藩は山内容堂が動いた。

 実は勤王党の平井収二郎と間崎哲馬らが、朝廷に土佐藩の改革の勅許を得ようと工作していた。その内容は開国派である山内容堂の排除である。それに激怒した容堂は平井、間崎らを捕らえて牢に入れたのだ。

 武市は彼らを助けるために一先ず土佐に帰国したのだ。

 それにしても間崎は大変だ。大丈夫かな。

 収二郎はまあ別にいいか。


「金が足りねえ」

 そんな中で勝先生がつぶやく。

「どのくらいですか?」

 知り合いの商人回れば数十両なら借りられるが。

「三千両くらいだな」

 おい。いくらなんでも!

「海軍操練所は早くても来年だし手狭だからな。大阪の勝塾を神戸に移してより多くの塾生を募ろうと考えてんだが、移転費用が足りねぇ」

 それを俺に言ってどうするんですか。

 そんな大金作れません。

「それでだ。金は持ってる奴に出させりゃいい」

 幕府は出してくれないんでしょ。

「政治総裁の松平春嶽公にお願いしてある。いっちょう、三千両をぶんどって来てくれねぇか」

 俺がかよ!


 春嶽公がいくらお人好しだからといってもそんな大金を簡単に出すわけがない。根回しはしてるようだが、回答は先延ばしにされているようだ。いくらなんでも無理ぽ。

 とはいえ、勝先生の頼みだから仕方が無い。海軍塾の発展のためだしな。

 俺は福井藩へと旅立った。


 福井へ着いた。春嶽公へ面会である。

 俺はとりあえず海防の重要さを説き、長州の攘夷によって諸外国からの圧力が高まっている現状を説き、海軍創設の緊急さをアピールする。

「その為には五千両が必要なのです!」

 少し盛る。

 最初大きめに言っておいて後で下げる作戦だ。

「しかし、藩としてそれだけの大金を簡単に出せるものではない」

 ここが正念場。

 とにかく粘る。勝塾が上手くいかないと俺の拠りどころが無くなる。勤王党もちょっと危ないし。

「五千両は無理だ。2千5百両なら用立てよう」

 少し少ないが、ほぼ計画通り! 仕方が無いか。

 俺の交渉力すげー。

 この後は春嶽公やその側近たちといろいろ政治について談笑したりした。

 考えてみると政治総裁って幕府のトップとこんな話してるなんてすげーよな。慣れたけど。春嶽公が良い意味で威厳がないのがいい。良い意味で。

 なんかいろんな話をしたが大政奉還とかいうのが面白かった。

 幕府が朝廷に政治をする権利を返すんだと。馬鹿みたいな話だが、春嶽公は本気で提案したらしい。朝廷には政権運営能力が無いからすぐに根を上げて幕府を頼るだろうということだが、全体的にやっぱり人がいいというか。春嶽公は甘ちゃんなんだよな。良い意味で。

 生き馬の目を抜くような今の時代、俺みたいなタヌキで無いと生き残れないぜ。

 とまあ、いろいろと収穫があった俺は意気揚々と大阪に帰った。


「ほう、2千5百両も用意出来たのかい。二千両で良かったんだが、そう言うと値切られると思って多めに言っておいたんだがよ」

 一番のタヌキは勝先生だ!


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