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第三十一話 俺は人を斬り謹慎する

歴史MEMO

文久三年三月 新撰組結成

「今回は春嶽公を迎えに江戸まで来たんだがよ」

 勝先生が口を開く。

「ちょうど、容堂公がいるから挨拶して来るわ。お前らの脱藩の罪も許してもらえねえか聞いてくるわ」

 山内容堂、土佐藩の前藩主である。安政の大獄で謹慎をくらっていたが、この度、ついに謹慎がとけて精力的に政治活動を開始し始めていた。勤王党は間崎が容堂に取り入ることで土佐藩での地盤を固めている。以前は開国派であった容堂が近頃は間崎の語る攘夷に関心を示しているとも聞く。武市の一藩勤王の活動成果が出てきたとも思えた。

 勝先生が戻ってくるまで焦れた。

 もし脱藩が許されたら勝門下生として自由に動ける上に土佐に帰って家族と会うことも出来るからな。

 夕方、帰ってきた勝先生は言う。

「龍馬と沢村の脱藩の許しは得たぜ。ただ、正式にはまだだがな。そのうちに藩からお達しがあるはずだ」

 よっしゃー。


 俺たちはそのまま江戸に戻り数日間過ごした。

 俺は千葉家に世話になっていたが、その時に重太郎からある相談を受ける。

「私の弟子が飛び出して行ってしまった」

 俺には関係ない話だ。

「軽挙妄動は慎むように言ったのに攘夷を行うと」

 今時、攘夷をしない志士とかいないしねー。

「それで勝鱗太郎殿を斬ると」

 なんだってー!!

 ちょ、それは話が違う。大問題だ。


 その男は岡田という名で鳥取藩士らしい。

 俺は江戸にいる間の勝先生の護衛を勤めることとなる。

 まあ、すぐに大阪に再出発することになったわけで、岡田は現れずにホッとしたのだが。


 大阪、俺と長次郎と他数名の勝先生の弟子たちで秘密の会合中である。

「大阪に岡田がいて勝先生の命を狙っています」

 どこからそんな情報を拾ってくるんだ長次郎。耳が早いな。

 俺たちは岡田の情報を聞いて思案する。

「護衛するのにも私達がずっとついているわけにもいけませんし」

 新宮(しんぐう)馬之助(うまのすけ)が言う。

 馬之介は土佐藩士で小龍先生のところで学んでいた兄弟弟子だ。江戸に戻った時に勝塾へ勧誘しといたやつだ。長次郎ほど才はないが実直で信用できる男だ。長次郎が才だけで生意気すぎるとも言えるが。

 そもそも刺客から護衛できそうなのは俺を含めて数名しかいないし、俺が一番強いから役目回って来るし、俺も勝塾で勉強したいから護衛とかに時間取られたくねぇ。

 いっそうのこと、岡田を斬るか。

「では、坂本さんお願いします」

 俺かよ!

「剣の達人じゃないですか」

 長次郎が言うと褒めてるというより嫌味に感じる。

 だが、仕方が無い。俺は隣で話を聞いていた馬之助に刀を借りることにした。

「どうして、自分の刀を使わないのですか?」

「俺の刀は坂本家に伝わる名刀なんだよ。血で汚せるか!」

 普段は刀抜かないから使わない刀を持っててもいいんだよ。

 俺は実戦派じゃないんだけどな。まあ、今回は特別。


 闇夜の晩。

 岡田発見、現在一人。

 背後から近づく。気づいてない模様。

 息を殺す。心臓ばくばく。

 岡田気配を感じて振り向く。

 と、同時に一気に踏み込んで袈裟切り。

 ドサッ

 死んだ。


 しかし、勝先生は敵が多いからな。心配だ。

 俺以外で誰か護衛出来る奴を探した方がいいかもな。

 そうだ、以蔵とかどうだろう。あいつなら腕もいいし、俺の命令なら聞くしな。

 俺は土佐藩邸に出向いた。

「坂本龍馬だな」

 藩の上士に見つかった。

 ああ、そういえば俺は脱藩中だった。まだ脱藩の罪を免除してもらってなかったっけ。

 なんか嫌な予感。

「脱藩の罪において沙汰があるまで藩邸で謹慎を命じる」

 一応、容堂公と勝先生の間で話はついてるんだよな。

 謹慎したら罪は許されるんだよな?

 しかし、役人の上士は細かいことは知らされてないらしく、俺は藩邸に監禁された。


 土佐藩邸に監禁されている俺のところに武市がやってきた。

「一年ぶりだな。龍馬」

「勤王党は盛況のようだ。世間は攘夷で盛り上がってるぜよ」

「朝廷が幕府に攘夷実行の期限を迫っているところだ。後一歩で攘夷ぜよ」

 ほんとに世間は尊王攘夷一色。

 しかし俺は軟禁。

「武市さんの力で俺の謹慎は解けないものか」

「龍馬の謹慎は形だけぜよ。大殿さまから脱藩を許すという許可は出てる。ただ、お咎めなしとはいかないからな、数日だけ藩邸に謹慎させてるだけぜよ」

 とはいえ、何も言われてないから不安だ。

 今頃は長次郎とか勝塾で航海術を勉強してるころかなー。

 羨ましいぜ。

 あー、早く外に出てぇ。

「そうそう、以蔵を借りたいんだ」

「以蔵を?」

「勝先生の護衛にどうかと思ってな」

 武市が若干嫌な顔をする。

 まあ、勝先生は開国派の幕閣として知られてるから尊攘派からすると敵みたいなもんだが。

「まあいい。以蔵はお前に任せるよ」

 不本意そうながら、武市は許可してくれた。

 なんだかんだで武市は懐が深い。

 数日後、謹慎が解けた俺は脱藩の罪を正式に許された。

書き溜めていた分が底をついたので、これからは週2.3回ほどの更新となります。

龍馬伝に触発されて書き始めたのですが、ドラマに追いつきそうで、追い抜くと書くネタに困りそう。

今のペースだと全70~90話くらいになりそうです。

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