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第三話 俺は舎弟を作り女に溺れる

 十七歳になっていた俺は乙女姉ちゃんからのシゴキも減り意気揚々だった。

 かなり調子に乗っていたといえよう。

 初恋が破れた傷はとうにふさがり悪友を連れて高知城下の花街に繰り出す日々であった。


 悪友の望月清平(もちづきしんぺい)がいい店知ってたんだよ。

 まあ、今では俺の方が詳しいけどな。

 そもそものきっかけは清平だ。あいつが悪い。あいつが諸悪の根源なのだ。望月兄弟の兄、清平が悪いのですよ。皆さん。

 こうして土佐に女殺しの悪名轟く色男が誕生したのである。

 

 十代の中盤から後半にかけての俺について一つ述べることがある。

 これは男にしてみると大事なことである。

 俺は女に非常にもてた。

 大事なことなんで二回言います。

 俺は女に凄いもてた。

 

 なんと言っても坂本家は金持ちである。高知城下の花街の女にしてみたら、見栄ばかり高く金のない上士よりも気さくで金のある下士の方が上客である。家では堅物をきどってる権平兄貴も十年ほど前まで花街の常連だったらしい。

 家では乙女姉ちゃんにしごかれてはいたのだが、それでも家族全体からは甘やかされていたのかもしれない。小遣いはかなり貰っていた。堅物な武市さんを連れてきたり、友人の望月兄弟とかを引き連れて豪遊したりしてた。

 あの頃は花街が俺の唯一の癒しだった。

 

 俺の女を口説くテクも抜群だった。

 女兄弟の多い家で育ったもので女というものを多少は理解しているつもりだ。そこを上手い具合に使って楽しく会話に持っていく技はみなに関心されていたものだ。

 その腕は狙ったわけでもない素人娘にも発揮されてしまうことがあるのも困りものだった。

 町民の娘とかに狙ったわけでもないので惚れられてしまう。ほんと困る。まあ、据え膳食わぬわけにもいかないから、頂いちゃうわけだが、それはそれで話がもつれて困る場合がある。

 

 嘉永五年の俺は絶好調だった。

 年は十八歳。下半身の暴走に理性が付いていかない年齢である。花街での遊びにも慣れて来て刺激的な男女関係を求めようなどと馬鹿なことを考えていたりした。

 ああ、この頃の俺をぶん殴りたい。

 城下で暮らす武家の未亡人、商家のお嬢さん、果ては農家の娘やら、知人の家の下働きの下女やら・・・ある時期に五人ほどの女性と同時に関係を持っていた。

 それが破綻するのは年があけて嘉永六年のことであるのだが、とにかく嘉永五年の俺は調子に乗っていた。ホントに図に乗っていた。殴りたい………。

 

 その年は剣術においても絶好調だった。日根野道場において俺は上位を争う腕前に成長していた。乙女姉ちゃんとの立会いでも攻撃をくらうことはなくなり、念願の乙女姉ちゃん超えを果たした。それにより特訓と称した死のシゴキがついに無くなったのである。

 俺が少々、有頂天になるのも仕方がなかろう。

 

 そういえば道場に通う金が無くて山で一人で剣を振っていた少年に剣を教えてあげたのもこの頃だった。なんか先生面したくて無償でいろいろ教えてあげたあげく小遣いとかもあげたりしていた。最初に出会った頃は捻くれてて殺気じみたものを発揮してた少年はしばらくすると俺に懐いてまるで子犬のようだった。

 名は岡田(おかだ)以蔵(いぞう)という。

 

 この以蔵、思いのほか剣の才能があった。技という点は稚拙だが、とにかく踏み込みが早いし思いっきりが良いのだ。

「見たことは無いが薩摩の示現流(じげんりゅう)というのが一撃必殺の打ち込みが秘伝らしい。以蔵の剣は示現流に近いのかもな。一撃必殺の剣ぜよ」

 俺がそう評すと以蔵は目を輝かせて礼を言う。素直で憎めない奴だった。

 このような舎弟を手に入れた俺は天狗になっていた。

 この増長は嘉永五年の間はずっと続く。

 

 年があけて嘉永六年二月。調子に乗っていた俺は冷や水をかけられることになる。

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