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第二十一話 俺は道場を開きヤンデレを説得する

 土佐では武市の名声がますます高まっていた。武市道場は盛況だ。

 道場で屈指の剣術家に成長した岡田以蔵、子供の頃から俺や武市と入魂じっこんな望月兄弟、武市に次ぐ見識を持っていると俺が密かに思う中岡(なかおか)慎太郎(しんたろう)、暑苦しい攘夷馬鹿の吉村(よしむら)虎太郎(とらたろう)、攘夷狂の上士の平井収二郎、他に池田寅之進、那須信吾、集まってる面々は多種多様に渡り、土佐の一大勢力だ。


 俺が土佐に帰って来た頃は燃えに燃えていた。佐那を長い間待たせるわけにはいかない。直ぐ攘夷だ、明日にも攘夷だ、Hey! Joey!

「焦ってもどうにもならんぜよ。龍馬」

 武市に窘められた。

 しかし、安政五年はやることがなかった。武市は一藩勤王を目指し、土佐の上層部とのコネ作りなどの政治工作に奔走していたが、俺はそういうの苦手だしノータッチ。

 なんか年末近くに水戸から住谷寅之助とかいう奴が来たから適当に接待して帰しておいたが、それくらいか。


 安政六年、俺はかなり焦れて来た。

 この頃には井伊直弼の専断でいわゆる安政の大獄がおきていた。橋本佐内、吉田松陰の逮捕、西郷吉之助の逃亡など大物志士たちの弾圧が起こる。幕府に対する攘夷志士たちの怒りは高まっている。

 前に危惧したとおりに金銀の交換比率のミスにより日本の金が海外にどんどん流れていくのも深刻だ。物価上昇と不景気で民衆の不満が蓄積していく。


 あまりにやることがないので日根野道場で剣術に打ち込んだ。こんなことなら小千葉道場に後一年くらい世話になってた方が良かった。早まったかなー。

 で、今更ながらに日根野道場で小栗流の免許皆伝。

 せっかくなので道場を開くことにした。坂本道場である。

 武市一派と見られていて藩から警戒されていた俺のところに入門してくる上士はいなかった。

 不景気で町民や下士たちも来なかった。そもそも武市道場の近所に開いたのがまずかった。ターゲット丸被りじゃん。

 入門者は一名。

「龍馬おじさん!素振り終わりました」

 千鶴姉ちゃんの子供の高松太郎だ。

 身内だけかよ!

 道場は一ヶ月で閉鎖した。


「武市さん、暇だぜよ。俺に何か仕事くれよ」

 俺は武市に頼む。

「ちょうど良かった。朝廷工作を行う為に京へ密偵を送ろうと思ってるのだが、それについて頼みたいことが」

 ん、なんだ?

「加尾の説得を頼むぜよ」

 平井収二郎が横から言う。

「加尾はまだ嫁にいっとらんかったのか。それに何で俺が説得?」

「お前のせいじゃくそボケが。伸ばして煮込むぞ!」

「俺のせい?」

「前の破談は家族総出で加尾を無理矢理止めたんじゃ。それなのに加尾はまだお前を信じて嫁にも行かず・・・ああ、ホントに貴様が諸悪の根源じゃ。ねじって突き刺すぞ!」

 収二郎はなんか頭に血を上らせてわめく。

 ああ、もてる男はつらいのぉ。

「龍馬、後始末してこい」

 ちょっと疲れたように武市が言う。


「お久しゅうございます。龍馬さま」

 儚げな声で加尾が挨拶する。

「加尾どの、この度はご機嫌麗しゅう」

「兄上は私に京都へ行けなど申します。ですが、私は嫌です。それに龍馬さまがついに迎えに来てくれました」

 ポッと頬を染める。

 ・・・ヤバイ、全然変ってない。むしろ悪化してる。

 とにかくここは俺が加尾を好きではないとはっきりと伝えて、俺への未練を断ち切ってから、京都で心機一転、やり直して貰わなければ。

「龍馬さまに会えない日々、何度か死を考えました。短慮を起こさずに良かった。私は今幸せです」

 目が、目が逝ってる。

 これが噂のヤンデレというやつですか。

 ヤバイ、これは俺を刺して自分も死ぬとか言い出すパターン!

 これ説得出来る自信がねぇぞ。

 とりあえず、先延ばしだ!

「加尾どの、私は兄上と同じ志の元に戦っております。今回の加尾どのの京での仕事、滞りなく成果があげられましたら、私と貴方の思いが遂げられるのです」

「本当でございますか。加尾、龍馬さまの為にお勤めを受けます」

 嘘です。

 とりあえず口から出任せで問題を先送りじゃ。俺には佐那がいるし、京都でいい人見つけてくれ。頼む本当に。


 加尾はこうして京に行くことになった。

 スパイ活動はすこぶる順調らしい。恋する乙女の力はすさまじい。

 なんかいろいろと俺は自分の人生を考え直したくなった。

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