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第十七話 俺は攘夷に目覚める

 なんだかんで半年が経過した。

 俺はとりあず一年間の留学延長を申請しておいた。もしかすると一生江戸暮らしだけど、とりあえず今は北辰一刀流の目録を得て剣術使いとして一流にならなければならない。全てはそれから。

 そして、その半年の間にあることに気づく。

 もしかして俺って天才かもしれない。

 いや、桂や武市みたいな剣の天才を目の当たりにして自分の才能に限界を感じていたのだけど、近頃ちょっとコツが分かって来たのだよ。相手の癖を読んだり視線でフェイントをかけたりすることで、初動で相手の二手三手先を行くというのが出来るようになってきた。おそらく桂の未来が読めるかのような動きもこれの発展系なんだろな。

 レベルの高い小千葉道場でもかなり上位の実力になってきたのが分かる。

 なんか、毎日のように殺気のある攻撃を稽古でくらってるからだろうか。

 てか、道場生はみんな俺に厳しすぎる。

 なんだよ、みんな佐那ファンクラブかよ! 妬みもほどほどにしろよ!

 佐那もあんまり道場でベタベタすんなよ。嬉しいけど怖いよ。てか、わざとだろー。

「近頃の坂本くんの上達ぶりは目覚しい」

 と、重太郎からもお褒めの言葉。上から目線だなぁ。まあ、道場の師範だし、俺より強いけど。でもなんかプライベートでは一緒に酒とかよく飲むようになって、気分は既に兄弟分だぜ。

 本当の兄弟になるのもそう遠くはないか?

 

 半年の経過は俺よりも武市の方に大きな変化をもたらしていた。

 士学館の塾頭になっていたのだ。半年足らずで。

 なんか士学館で頭角を現して、同志を集めたりしてるうちに風紀を粛清して、荒っぽかった士学館を規律ある道場に変えたとかなんとか。その手腕を買われて塾頭になっちまった。

 もちろん剣の腕も士学館でトップクラス。

 ちょっと俺の幼馴染すごすぎるんですけど。ヘイ、江戸のみんな、武市は俺の親戚なんだぜ。凄いやろー。サインもらってやろーかー。

 

 武市の江戸へ来た目的は攘夷運動のためである。とは本人は名言している。

 確かに士学館で同志を集め、桂とも親しくしているらしい。

 俺はちょっと剣術修行が急がしくて、武市や桂と疎遠だったが、少し落ち着いて来たので、奴らの会合にちょっと顔出すことにした。

 まあ、あんまり思想や政治の話は苦手なんだけどな。ここは得意の分かったふりで聞き流す作戦だぜ!

 

「幕府はいよいよ通商条約を結ぼうとしてるようです」

「ハリスの奴は許せん。同志を集めて切り捨ててやりたい」

「軽挙妄動は慎むべきだ。今こそは我ら各藩の志士たちが連携して・・・」

 おお、熱いですな。さすが今流行の志士の方々。

 うん、酒がうまい。

 桂、武市という長州、土佐の大物志士が集めただけあって、この会合は結構レベルの高いものらしい。俺には難しすぎるけどな。

「坂本どのは攘夷をどのようにお考えで?」

「え、あー、攘夷さいこー」

 このアタリメは旨いな。

「坂本さんは幕府をどう思われます?」

「え、あー、幕府はダメダメー」

 煮豆もいけるな。この料亭また来ようかな。

 みんなの話を右から左へ受け流すー。

「龍馬は土佐で河田小龍のところで学んでいたのですよ」

 武市が余計なことを言う。

 こら、アゴ野郎! 小龍先生の名前出すな。開国派と思われたら俺の命が危ない!

「ほう。では『漂巽記略』をお読みで」

「ええまあ・・・」

「坂本さん、私はジョン万次郎どのにお会いしたことがあります。彼は本当に日本の将来を思っている素晴らしい男です」

 急に桂の野郎が話に入ってきた。うぜぇ。

 だが、その桂のウザさよりも会話に出てきた人名に俺の意識が止まる。

 え、ジョン万次郎? って、あの漂流してアメリカに行った万次郎?

「そ、それは本当ですか。桂さん!」

 ヤバイ、興奮してきた。小龍先生の話はその万次郎から聞いたことをまとめたものだ。ああ、万次郎って実在するんだ。小龍先生の空想上の存在ではなかったんだ。妄想壁ありそうだったもんな。小龍先生。

 急に目を輝かせる俺に苦笑しながら武市が口を挟む。

「龍馬は異国好きですからに」

 だからおいアゴ野郎! 余計なこと言うな! 開国派だと思われたら命がヤバイんだろ!

「確かにアメリカやイギリス、フランスの情報は重要ですからね。敵を知らずんばという奴ですよ」

「おいはフランスのナポレオンを尊敬してるでごわす。人民のための革命をなしたナポレオンこそが英雄でごあす」

「やはり一番の英雄はアメリカ独立の父ワシントンだっぺ」

 ・・・へ?

 何これ。これって攘夷派の会合なんじゃかったっのか。なんでみんな外国好きなんだよ!

「異人を国から追い出すことと異国好き嫌いは別です。攘夷は日本が他のアジア諸国のように列強の植民地にならないようにするための方策を論じるものですから」

 少し勘違いしてたかもしれない。

 なんか攘夷って異人切り殺せとかいう単純馬鹿の集団だと思ってたよ。

 武市道場の連中とか目が血走ってるからなー。

 ああいうのばかりだとおもっていたよ。

「とはいえ、下の連中は異人切ればいいと思っている者も多くて、我々は苦労しますが」

 ああ、やっぱりそうなんだ。武市道場のやつらが攘夷派の標準なんだ・・・

 とはいえ。

 各藩の俊英が集まってるこの会合は俺の攘夷に関するモヤモヤを少し晴らしたらしい。

「それで、桂さん。ジョン万次郎さんに会えないもんかなぁ」

 俺は少し本気で武市や桂と付き合っていこうかと思った。

 

 これ以降、俺は武市や桂の尊王攘夷活動にに少し足を踏み入れることになる。

 つか、桂、ジョン万次郎に会わせやがれー!

 結局あいつは紹介してくれんかった!

 もしかして、やはり想像上の人物なのか、ジョン万次郎。だってジョンだもんな。小龍先生は妄想癖ありそうだし、桂は虚言癖ありそうだし。

 本当に存在するなら会わせろよ。このウザ桂!

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