試験
「さて、私はスライムを討伐してくる。」
「お、おい。場所すら知らないんだぞ。一旦ここは皆で考えないか?」
シュヴァルクが提案してきた。
「私は忙しいのだ、仲良く考えていてくれ。じゃあな。」
私はさっさと部屋を出て、ギルドの外に出た。
随分と簡単な試験だな。特殊個体のスライム2匹と言えば有名なシャール・ヒュールのネームド持ちが真っ先に浮かび上がってくるが、はっきり言って自殺行為でしかない。
特殊個体という魔物のことをどれだけ知っているかがこの試験で必要な知識だと思う。
とりあえず武器を持っていないので、街の武器やへと足を運んだ。
「いらっしゃい。」
店内に入り、武器の質を見極める。
武器は値段より質だ。あまり喋らない店主は作った作品を誰かに見つけてほしいという気持ちを持つ傾向が強い。
ここの店主そういう人だ。
壁に飾られたいくつもの剣や杖、防具などを見る。
「この短剣いくらだ?」
「...ほう、そうだないくらがいい?」
「10。」
「それじゃぁ売れないな。」
「10金貨だ。」
「!?」
「これにはそれぐらいの価値があると感じた。釣りはいらん。持ってくぞ。」
「まいどあり。」
10金貨と言ったが、もう少し高くてもいい。良い剣だ。
店を出て森に向かおうとしたら、エルフの冒険者に会った。
「奇遇ね、私今から森に行こうとしているのだけど。」
「私もだ。ほかの2人はどうした?」
「自殺でもしてるんじゃない?」
「あっちのスライムに行ったのか...。」
「2人の選択よ、尊重してあげましょう。」
まさか、あっちのスライムに行ったとはな。
このエルフも私と同じ考えだろう。
知識があるかないかは恐ろしいな。
「ここら辺の森はスライムがよく出現する。あなたも多少の知識は持っているようね。」
「まぁな。」
「どう?私と協力しない?」
「なぜだ?」
「エルフは視野が良い。早く見つけられるぞ?」
「協力してもメリットは無いように見えるが?」
「見つけたスライムが強個体出会ったとき保険としてあなたと戦うことで死亡を免れることが出来る。立派なメリットね。」
「私にはデメリットだ。よって断らせていただく。宣言しよう。私はこの後すぐに森へ行き、試験を終わらす。」
「ふん、私の方が早いに決まってるじゃない。追いつけるかしらね?」
そういってエルフは、素早く森へ入っていった。
私は森の入り口に湧いていたスライムを手に取り、核を覗いてみた。
今手に取った青色のスライムには黒い核がある。
次に横にいるスライムを見てみる。
手のひらサイズのかわいいスライムには赤い核があった。
私はこのスライムを短剣で真っ二つにする。
すると、スライムは核を中心として2つに分かれ始めた。
小袋に入ってた治癒薬をスライムに数滴垂らすと、スライムは2匹に分裂した。
このスライム達に魔法を使う。
誰にも見られないように周囲を確認し、スライム達を手で包み込む。
『転換・特魔』
手の中のスライム達の核が金色に変わったことを確認して、冒険者ギルドへと向かった。
流石に私が一番だろう。冒険者ギルドに戻り、試験部屋へと向かう。
中にはラテナが座っていた。
「どうしたの?まだ質問があるのかしら。」
「今から目の前で試験を終わらす。思ったがこれが一番早いなと。」
そう言って、小袋から先ほどのスライム達を取り出し、ラテナの目の前でスライム達を殺した。
砕け散った金色の核2つは綺麗な青緑色の結晶へと姿を変えた。
ラテナは信じられないといった表情をしていた。
「どうだ?今、特殊個体のスライム2匹を確かに目の前で倒した。この結晶が証だ。」
「驚いたよ。そうだね、試験は終了だ。確かに確認は取れた。この試験参加者に次ぐ、試験は終了だ。合格者はカルのみ。異論は認めない。以上。」
カードからラテナの声が響き渡る。
便利なカードだな、と思いつつ、椅子に腰をかけた。
「それでは合格者のカルさん、記録は15分37秒、このギルドの記録を更新しました。掲示板に掲載はどうしますか?」
「いや、秘匿で頼みたい。」
「分かりました。ではカードをこちらへ。」
カードを所定のケースへ入れた。
「では後日、新しいカードを発行いたしますのでまた受付へ来てください。本日は試験お疲れさまでした。」
試験も無事終わったので、今から来るであろう面倒事を回避するべく、冒険者ギルドを素早く出た。