午後
試験開始5分前に冒険者ギルドに到着した私は慌てることもなく、中に入る。
「カ、カルさん!もうすぐ始まってしまいます!こっちです!」
どっちかというと受付嬢の方が慌てていたな。
案内された部屋に入ると、私と同時に受ける別の冒険者達が座っていた。
先ほど列に並んでいたエルフの冒険者もいた。
あの人は食べれたというのか、羨ましい。
「それでは揃いましたので、説明をします。今回の試験の総監督を務めます、元冒険者、ラテナです。よろしくお願いします。簡潔で良いので皆さんの名前と得意分野、一言お願いします。貴方からで。」
「俺は、シュヴァルク、短剣と長剣を組み合わせた戦い方をする。何をするのかは分からないが、よろしくとでも言っておこうか。」
「私はシュヴァルクと同じメンバーのチェリン。主に長弓を扱うわ。よろしくね。」
「私は見ての通り、エルフよ。名前はエール。エルフらしく、探知系の魔法が得意だけど、普通に剣の方が得意なの。よろしく。」
「私はカル。直射日光が苦手なんでね、フードを被っているが気にしないでくれ。得意は無い。よろしく頼む。」
「はい、ありがとうございます。今回4名の冒険者様達が行う試験内容は、討伐依頼です。」
試験で討伐系はよくあるが、大抵、10人規模のパーティーを組んで挑む場合が多い。
まぁこの試験は上級者向けだから人数が少なくても何とかしろって言うんだろうな。
「討伐するのは特殊個体のスライムです。2匹です。」
「質問だ。形式は?」
「今回の試験は、早いもの順とでも言っておきましょうかね。協力あり、妨害あり、裏切りありの何でも許可します。」
「殺人も?」
エルフの一言で静まり返った。
「冗談よ。何でもと言われたのは初めてだもん。」
「許可します。冒険者というのはその時の選択力を問われます。選択時の責任はもちろん伴いますが、意味のある行動と見なし、黙認します。」
とんでもない試験だな、そう思った。
「もう一個質問だ。1匹を俺が、もう1匹を別のだれかが討伐、もしくは2匹まとめて討伐、この場合はどうなる?」
「どちらでも構いません。スライムを2匹討伐さえすれば終わりです。ほかに質問はありますか?」
「では私から。シュヴァルクと同じメンバーなのですが、メンバー間ではすべて共有されるという規則がありますよね。試験でも通用しますか?」
「はい。我々が定めた規則の下、活動を行っているので、シュヴァルクさんが討伐した場合、自動的にチェリンさんも合格となります。逆も然りです。」
私はふと思ったことを口にしてみた。
「この試験はまだ説明段階で本格的には始まっていないよな?」
「えぇ。」
「ここでメンバーを組むのはありか?」
「......そうですね、たった今不可能になりました。」
「はい?」
「私が許可しません。それだけです。」
笑顔で断りやがった。
全員で、メンバーになって協力して討伐しようと思ったのに。
「もう質問は無いですよね?それでは私の宣言をもって試験を開始したいと思います。」
ラテナは右手を高く挙げた。
「ただいまより試験を開始する、期限は今この時から2日後までとする。特殊個体のスライム2匹を討伐し、報告せよ。スライムが討伐されたことを確認次第この試験は終了する。それでは始め!!!」
後出しの情報を出し企んでいそうな表情を浮かべたラテナは部屋から出て行った。
この部屋に残った異様な空気間に包まれた私たちは唖然としていた。