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1話 魔族の王子と婚姻!?

☆追放(?)場面から始まりますが、基本ほのぼのわちゃわちゃライフです!

☆異形の魔物が溢れる恐ろしい土地……のはずが誠実な王子に出迎えられ予想外の歓迎ムード!? 温かな日々はカトリーヌの能力を開花させ……?


カドカワブックス様より、2024/10/10発売予定の作品(の、ウェブ版)です。

楽しんでいただけますと幸いです!

 隣り合う国同士の仲がよろしくないのは良くあること。

 ヒト族純血主義を掲げるエリン王国と、多種族国家のゼウトス王国は、百年もの長きに渡って戦争を続けてきた。

 

 少し前まで、戦況は押しつ押されつで均衡を保っていた。

 しかし近頃は、エリン王国の形勢おおいに不利、との噂がエリンの王城内でも密かに噂されるようになっていた。


 表向きは、ヒト族純血主義による魔族討伐戦争の正義を信じる態度を取りながら、人々は征服の恐怖におびえていた。


 

 * * *


 

「無才無能のカトリーヌ。今日よりお前を、第一王女と認める。我が偉大なるエリン王国に尽くす機会をやろう」

 

 ここはエリン王国の王城の大広間。

 無慈悲な声で国王が告げた。

 

 壇上(だんじょう)に居並ぶ王族たちに見下ろされながら、カトリーヌはひざまずいていた。

 ハニーブロンドの髪は(つや)を失っており、エメラルドグリーンの瞳は(かげ)っている。

 

(生まれて十八年、 (めかけ)だったお母様の身分が低いからと、一度もお父様……国王陛下から認められることが無かったのに。突然、王女にするなんてどういうこと?)


「お前の母親は占いの才があったが、お前は何も出来ない無才無能。仕方なく城に置いてやっていたが、喜べ、お前にも役目が出来たぞ」


 王の言葉に、嫌な予感が加速する。

 女に王族の身分を与えて使う。使い道などひとつしかない。


 カトリーヌは、お仕着(しき)せの灰色のワンピースのすそを握って、王の言葉の続きを待った。

 

「魔族討伐戦争は、一旦和睦(わぼく)の運びとなった。しかし奴らは和睦の条件をつけてきたのだ。エリン王国と魔族領――ゼウトス王国との王族同士の婚姻だ。フン、ふざけた願いだ」


 エリンの王は、ゼウトス王国を指して『魔族領』と呼んだ。

 国家とすら認めたくないという意向だ。

 

「アンヌは魔族に嫁ぐなんて絶対に嫌ですわ! 和睦なんてどうでも良いです! 全部やっつけちゃえば良いのよ!」

 

 義妹であり正妃の娘であるアンヌ王女が甲高い声で叫ぶ。

 

「ええ、わたくしの大事なアンヌちゃんを、恐ろしい魔族のもとになんて行かせませんわよ」

 

 カトリーヌの継母である正妃が、ベッタリとした声でアンヌをなだめた。

 

 「……そこでだ、カトリーヌ」


 王は重々しく言葉をつむぐ。

 

(そんな、そんな、まさか……)

 

 とまどうカトリーヌに、王は無情に告げた。


「アンヌの代わりに、魔族に嫁げ」


 王の声が大広間に響いた。


 絶望に歪む視界。体から力が抜けそうになる。

 

 しかしそのとき、カトリーヌの頭に王都の人々のやつれた様子が浮かんだ。

 窮状(きゅうじょう)を訴えるために、城門の外に領主たちが馬車を連ねる光景が浮かんだ。

 

 みんな、長く続く戦争に疲れ果てている。平和を求めている。

 

 王妃は溺愛するアンヌ王女を魔族に嫁がせることなど、絶対にしない。

 和睦のためには誰かが嫁ぐしかない。


(いいわ、魔族領でもなんでも、行ってやろうじゃない。まさかいきなり食べられたりしないだろうし……しないよね?)


「……承知いたしました。国王陛下」


 覚悟を決めてカトリーヌが答える。

 

 王妃と王女が蔑むような笑い声を上げるが、カトリーヌの意識はすでに未来へと向いていた。

 両国の平和を長く続けるためには、この婚姻を成功させなくては。

 

(大丈夫。なんとかなるし、なんとかするしかないんだから)


 カトリーヌはクッと顎を上げる。エメラルドの瞳が、朝陽あさひをうけた湖面のように光り輝いた。

1話~3話は本日中更新。4話以降は毎日18時公開予定です!

よろしければラストまでお付き合いください。

評価など頂けますと、大変はげみになります。

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無才王女、魔王城に嫁入りする。 ~未来視の力が開花したので魔族領をお助けします!~

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