青の龍とゲーム・ナイト⑨
「ひっ……!? に、人間ッ……!」
路地に入ったとたん、ガラの悪そうな男たちに取り囲まれてしまった私たち。
それに青くんが恐怖の声を上げ、荷物を放り出して私にしがみついてきた。
「おいおい、なんだよ、そんなに怖がることないだろ。仲良くしようぜ、なあ」
なんて、ニヤニヤ笑いながら距離を詰めてくる男たち。
手に刃物を持っている人もいて、何をしてくるかわからない。
なんて、冷静に状況を見ているようでいて、実際のところ、私も絶賛パニック中である。
(なっ、なんで? なんで私たちが路地に入ったとたん、狙いすましたように、こんなっ……)
と混乱するが、そこで理由に思い当たる。
もしかして……両替してるところを見られて、後をつけられた?
しまった、うかつに金貨なんて出さず、もっと警戒すべきだった!
でも、前回の散歩ではこんなことなかったのに!
……いや、そうか。前回は強面の赤龍帝様がいたから、変な人が寄ってこなかったのだ。
だけど今回の同行者は、いかにも気の弱そうな青くん。
のん気な二人組が大量のお金を見せたりしたから、カモだと思われたんだ……!
「くっ、くっ、来るなぁ……。ぼ、僕は強いんだぞっ……。僕に無礼を働くと、ど、どうなると思って……」
私にしがみつき、ブルブル震えながら、小声でそんなことを言う青くん。
駄目だ、これじゃ逆に相手を増長させるだけだ。
(わっ、私がどうにかしなきゃっ! 怖がりの青くんを連れてきたのは私なんだし、一の子分だし、保護者だしっ!)
青い顔をしながらも使命感に駆られ、逃げ道はないかと視線を巡らせるが、男たちは逃がすものかとばかりに道をふさいでくる。
顔には下卑た笑みを浮かべ、もうこっちのものだと言わんばかりだ。
なので、もったいないけど、本当にもったいないけど、私は財布に手を伸ばすと、金貨を一枚取り出し、彼らにこう言ったのだった。
「いっ、一枚あげるわ。これで許して」
精一杯の交渉のつもりだった。
だけど男たちは、吸い寄せられるように金貨を見つめた後、にやりと笑ってこう応えたのである。
「ほー、こりゃ気前がいい。けど、そんなビビんなって。仲良くしようぜ、なあ」
「あっ!」
そして男は私の手をつかみ、ぐいっと引き寄せてきた。
私と、そして引き離された青くん両方の口から驚きの声が上がる。
やばい、やばい……この人たち、思ったよりヤバい人たちだ。
たぶん、このまま私を連れ去るつもりなのだ。
お金を全部奪って、私自身も売り払おうという腹積もりなのかもしれない。
(駄目だ、私じゃどうにもできないっ……。青くんを、頼るしかない)
そう、龍の力なら、こんなやつらどうってことないはずなんだ。
なんなら、もう見られてもいいから、私を連れて空間を移動してくれるだけでいい。
そういうことを伝えようと、彼のほうを振り返ったのだけれど。
だけど彼は恐怖に震え、すがるようにこちらを見ていて。
幼子のようなその姿を見たとたん、私の口から飛び出したのは、予想外の一言だった。
「青くん、逃げて!」
「っ……!」
自分でも驚いたけど、でも、そうだ。青くんだけでも逃がさないと。
だってこいつらは、青くんも連れ去るつもりだろうから。
私のせいで彼がひどい目にあったりしたら、私は申し訳が立たない!
すると青くんは、ハッとした表情を浮かべ。そしてわずかにうつむくと、今までとは打って変わった低い声でこう言ったのだった。
「……おまえら、いいかげんにしろよ」
小さな、怒りの声。
だけどそれを、男たちがからかった。
「あん? なんだ、おぼっちゃん。聞こえねえぞぉ?」
「恐怖でおかしくなっちまったか? 情けねえなあ」
そして、下品な笑い声をあげる男たち。
だけど、それはすぐに恐怖の声にかわることとなる。
なぜならば、そんな彼らの目の前で、青くんの体が空へと浮かび上がり。
そして次の瞬間……強烈な雷光が、周囲を満たしたのだから。
「おまえら! 僕のウルリカに、触ってんじゃ、ねええええええええええ!!!」




