スライム、初めての戦闘
草の茂みに隠れる僕達の前に、一匹のスライムが現れた。
「見つけた。アキラ君あのスライムを倒して」
「えー無理ですって!僕魔物と戦ったことない
んですよ」
「大丈夫よ。アキラ君のステータスがあればス
ライムなんて一撃よ。さあ、早く」
ステータスを確認した後、僕はマリン先生に連れられ町の外に狩り連れてこられてこらされていた。僕のレベルアップが目的だそうだ。早速実験開始というところだろう。
僕は後ろにいるエイプリルさんを見る。僕達の頼もしい護衛役で過去に冒険者をしていた経験があるらしい。
此処は一つ経験者からのアドバイスを頂きたい。
「エイプリルさん、スライムってどうやれば倒
せるのですか」
「・・・・・・」
「エイプリルさん?」
トン。
僕はエイプリルさんからナイフを渡された。
アキラはナイフを装備した。
「ちょ、ナイフで、ですか?」
「あの体の真ん中に見えている核を狙うのよ」
「無理ですって、僕は今まで生き物を殺したこ
とが無い、」
「さっさと行けよ、おら!」
マリン先生と問答を繰り返す僕に苛立ちを覚えたのか、エイプリルさんが僕の背中を蹴飛ばし、僕はその衝撃でスライムの前に飛び出し転倒する。
慌てて起き上がる僕のすぐ目の前にはスライムがいた。スライムに目なんてないけど、目が合った気がした。
来る。
そう思った瞬間スライムが飛び掛かってきた。僕は反射的にナイフを突き出し、ナイフはスライムの核を貫く。
一瞬だった。
スライムは溶けるように消えていなくなり、また声が聞こえた。
「剣技刺突閃光一式・雷光を習得しました」
怖い。なんだ、その仰々しい名前の技は?
僕はレベルこそ上がらなかったが新しい技を手にいれた様だった。
「どう、レベルは上がった」
「いえ、レベルは上がりませんでした。けど、
剣技を手に入れました」
「剣技?今のスライムとの戦いだけで?ただナ
イフで刺しただけで剣技を覚えたの?」
「はい、刺突閃光・一式って名前です」
「ああん、刺突閃光だと!」
今までずっと黙っていたエイプリルさんが驚きの声を上げた。信じられない、嘘をつくなと僕を問い詰めメンチを切る。
「剣技刺突閃光はB級いやA級冒険者でも習得
が難しい剣技だぞ。それをたかがスライム一
匹刺しただけで習得できるはずがないだろ
うが!」
「でも実際に習得出来てしまいましたし」
「スキルの習得が異常に早いと言う訳ね。知識
や経験、自己研鑽など関係なく習得出来る
か。あの神の加護がかんけいしているのか
も」
マリン先生はぶつぶつと腕を組んで一人考え込んでいた。
「じゃあ、試してみましょうか」
何かを思いついたらしい。
「アキラ君、今度は素手でいってみましょう」
「素手ですか?」
「ええ素手よ。殴って倒すのよ」
スライムが現れた。
アキラの攻撃。
アキラは脱力して腰を落とし、大地を踏み抜
き、全身をしならせ、力一杯殴りつけた。
ズドンッ。
会心の一撃。
アキラはスライムを倒した。
アキラはレベル3になった。
武技 発勁を習得しました。
「アホかー!ふざけんなよ、お前一体何してく
れてんだよ、こら!!アーン!発勁なんても
のを簡単に習得するんじゃねーよ!ボケが!
真面目に修行する武術家さん達に謝れ、この
野郎!」
「そんなこと言われても僕困ります」
「これは本物ね」
エイプエルさんがエキサイティングになんで、どうして、私がどれだけ努力してもと、大騒ぎする中マリン先生はまた考え込んでいる。
僕は発勁が気になっていた。僕が知っている通りのものであれば、発勁は武術の奥義で習得するにはとてつもない修行が必要になる技だ。その極意を一回の戦闘で得られるなんて。
ちょっと試してみよう。あの岩なんか丁度良いかな。
僕は岩の前に移動する。大きさは高さ2メートル幅3メートル厚さは1メートルと少し位。
僕は構えて発勁と言葉を呟く。僕の体が自然に動いた。手を開き腰を落とし、大きく強く足を踏み込む。僕の掌が岩を叩く。
ズドーン!!
一拍おいて、岩は粉々となり大きな音をたて吹き飛んでしまった。
「ワーオゥ・・・」
余りの出来事に僕は言葉を失う。手や体には痛みや異常はない。信じられない。目の前には粉々になった岩がある。
僕がこれをやった?
「アキラ君凄いじゃない。本当に発勁を習得し
ているのね」
「嘘だ。こんなの嘘だ」
いつの間にかマリン先生とエイプリルさんが僕の傍まで来て粉々になった岩を見ながら、それぞれの感想を言っている。
「凄いわ。凄すぎるわ。今までこんな実験素材
を見たこと無いわ。研究よ。体の隅々、脳ま
で調べ尽くすのよ!」
「ふざけんなよ、どうしてこんな奴に、無職の
変態クズ野郎なんかに、どうして神はこれ程
の才能を与えたんだよ?」
2人の、僕に対しての称賛とも卑下とも取れる言葉、そして2人が見せる美人が興奮と怒りの表情に、
僕は、取り敢えず興奮した。