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わがまま夫人と夫、二度目の対面

 その後、ヴィヴェカはオルガに言われるがまま、物置らしき部屋にドレスを運んだ。


 彼女曰く、後で知り合いの商人を呼んでくれるということだ。オルガの知り合いということは、まともに査定してくれるだろう。


(オルガの仕事ぶりは、評価しているものね)


 確かに、彼女はヴィヴェカのことを嫌っていた。かといって、このヘルベルガー侯爵家のデメリットになることはしない。そういう信頼だけは、きっちりとあった。


「……では、奥様。旦那様の元に向かわれ……る、のですよね?」


 オルガがそう問いかけてくるが、その目は相変わらず疑っている。だからこそ、ヴィヴェカは肩をすくめて息を吐く。


「えぇ、旦那様を孤独には、出来ないもの。私だけでも、しっかりと家族になって寄り添わなくちゃ」


 胸に手を当てて、ヴィヴェカはそう告げる。そうすれば、オルガの目が見開かれた。


 きっと、ヴィヴェカの口からこんな言葉が出てくるとは想像もしていなかったのだろう。


「さぁて、旦那様の元に――」


 しかし、気を取り直してリステアードに会おう。リステアードに会わなくては、決意も何も無駄なのだから。


 そう思い、ヴィヴェカが勢いよく振り返ったときだった。何か、壁のようなものに顔をぶつけた。


「きゃぁっ」


 思いのほか、可愛らしい悲鳴が口から漏れた。美陽のときならば「ぎゃあっ」だろうな、と思いつつヴィヴェカは恐る恐る顔を上げる。


 ……そこには、ラフな衣服に身を包んだリステアードが、立ち尽くしていた。


「だ、だ、旦那様!?」


 驚いて、上ずった声を上げてしまった。


 だが、どうやらヴィヴェカよりもリステアードの方が驚いているらしい。彼は目をぱちぱちと瞬かせながら、口をパクパクと動かしている。……一体、どういうつもりなのだろうか?


「え、えぇっと、申し訳、ございません。慌ててしまって……」


 とにかく、まずは謝ろう。ぶつかったのは、こちらなのだから。


 心の中でそんな風に考えヴィヴェカがぺこりと頭を下げるものの、リステアードは全く反応してくれない。


 ……いたたまれなかった。


(旦那様、どうして反応してくださらないのかしら……?)


 普段のリステアードならば、「大丈夫か?」くらい声をかけてくれるだろうに。……というのはあくまでも想像である。ヴィヴェカはリステアードに謝罪したことがないので、想像しか出来ない。


 恐る恐る、下げていた頭を上げた。……リステアードは、先ほどと同じ様子で立ち尽くしていた。


「あ、あの、旦那様……?」


 彼の方に手を伸ばすと、彼が一歩後ずさった。


 その目は彷徨っており、明らかに様子がおかしい。……一体、何だと言うのだ。


「えぇっと、ですね」

「……あぁ」


 ようやく、リステアードが声を発してくれた。それにほっと息をつく間もなく、リステアードがどんどん後ずさっていく。


(ちょ、逃げるつもり⁉)


 それに気が付いたからこそ、ヴィヴェカは慌てて彼を追いかけようとする。彼は、ヴィヴェカから視線を逸らさずに後ずさっていた。……さながら、熊から逃げるときの方法のようだ。


(熊から逃げるには、死んだふりよりもこっちの方が効果的……って、そんなの関係ないでしょ!? 私が熊だって言いたいの!?)


 なんだか、考えたら頭に血が上りそうだ。


 ならば、考えないほうがいい。そうだ。考えずに、ゆっくり、ゆっくり。まずは落ち着いて――。


「って、落ち着けるわけないわよ!」

「……は?」


 どうやら思ったことが、口から出てしまっていたらしい。


 それに気が付いたものの、時すでに遅し。美陽もといヴィヴェカの絶叫はリステアードの耳にしっかりと入っていたらしく、彼がぽかんとした表情を浮かべる。


 ……が、ある意味ヴィヴェカにとって、それはチャンスだった。


「逃げないでくださいっ――!」


 これを逃がしたら、リステアードに向き合えない――!


 その一心で、ヴィヴェカは彼の方に手を伸ばした。手を、伸ばしたのだが――。


「きゃぁあっ!」


 その場で足を躓かせ、豪快に脚をもつれさせた。


「ヴィヴェカっ!」


 どんどん近づいてくる床。いくら絨毯が敷いてあるとはいえ、さすがに顔面から落ちたら痛いだろう。


(うん、間違いなく痛いわ……)


 廊下の絨毯は、部屋ほどふかふかではない。つまり、ある程度のけがは免れない。


 ヴィヴェカは迫りくる衝撃に耐えるべく、目をぎゅっと瞑った。


 だが、いつまで経っても衝撃は来ない。それどころか、感じるのは人肌の温かさ。


「……え?」


 慌てて瞼を開ける。そうすれば、ヴィヴェカの下には……ほかでもないリステアードがいた。


「ヴィヴェカっ! 大丈夫か!?」


 彼は、ヴィヴェカの肩を掴んでグラグラと容赦なく揺らしてくる。……大丈夫だ。大丈夫なのだが。


「そ、そんなに、揺らされると、別の意味で苦しいです……!」


 さすがにこのレベルで揺らされると辛い。


 ヴィヴェカは、そうとしか思えなかった。

ヴィヴェカは前世の記憶がよみがえってから、ポンコツになってます(苦笑)


どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします……!


(また、異世界転生転移ランキング13位ありがとうございます……!)

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