わがまま夫人の断捨離 その2
本日余裕があればもう1話更新します……。
その後アイシャをオルガに預け、ヴィヴェカはとりあえず宝石類やアクセサリーを整理することにした。
アイシャに関しては、後々家庭教師をつけることになりそうだ。ヘルベルガー侯爵令嬢として、恥にならない程度には立派になってもらわなければ困る。
……まぁ、それはヴィヴェカには言われたくないことだろうが。
「よし、やるわよ」
言葉で自分の気持ちを引き締め、ヴィヴェカはアクセサリーの類が入った鏡台の引き出しを開ける。
そこには、色とりどりのアクセサリーがしまわれていた。日の光に当たらないそれらは、少々哀れに思えてしまう。
けれど、ここにあるアクセサリーはまだマシな方だ。ここにしまわれているアクセサリーはまだ身に着けている方。クローゼットの奥底に眠っているアクセサリーに関しては、一度も身に着けたことがないものばかりだ。
(まずは、今後も身に付けそうなものを選びましょう)
ヴィヴェカの持っていたドレスはとても派手なものが多かった。だからだろう、派手なドレスに見栄えするアクセサリーが多い。
だが、それはもうやめる。派手なものを身に着けていても許されるのは、二十代半ばまで。現在のヴィヴェカは二十三歳なので、もうそろそろ落ち着いたドレスを身にまとうべきというのも、関係している。
まぁ、一番はやはり派手なものを着る勇気がないというだけなのだが。
引き出しにあるアクセサリーから、今後身に着ける予定のものだけを吟味する。一応侯爵夫人としての体裁は保たなければならない。それすなわち、高価なものをすべて売り払うことはいけないということだ。
「それに、いくつかはアイシャに渡してもいいかもしれないわ」
体格が違うのでドレスの類は無理だが、アクセサリーや宝石の類に関しては引き渡すことが出来る。
特にアイシャはとても可愛らしい容姿をしていた。ならば、少々派手なものを身に着けてもアクセサリーに負けることはないだろう。
(……こういう風にしていると、本当に母親になった気分だわ)
ふと、心の中でそう思った。
義理とはいえ、娘が出来たのだ。娘に私物を下ろすというのは、少々楽しいことかもしれない。
もちろん、彼女が年頃になれば新品を与えるつもりだ。でも、まだ一桁年齢のときは母親のお古で十分。少なくとも、美陽だったときもそうだったと思う。
そんなことを考えながらアクセサリーを見ていると、「奥様」と声をかけられる。どうやら、オルガが戻って来たらしい。
「……三つに分けておられますが、どういうことでしょうか?」
彼女はヴィヴェカの手元を見つめつつ、素直に疑問を口にした。
なので、ヴィヴェカは笑う。
「いえ、私が今後身に着けるもの、売るもの。あと、アイシャにあげられそうなものを分けているのよ」
少しだけ微笑みながら、オルガにそう言ってみる。
すると、彼女は感心したような表情を見せた。……今までのヴィヴェカならば、明らかに考えないことだからだろう。
「アイシャは……いえ、アイシャ様はとても可愛らしい容姿をされていますものね」
「えぇ、私とは違うわ」
ヴィヴェカはどちらかと言えば美人という言葉が似合うタイプだ。それに対し、アイシャは可愛らしい、愛らしいというタイプ。
美形であることに間違いはないが、似合うものに関しては全く違う。むしろ、真逆と言っても過言ではない。
「アイシャはどういうものが好きかしら? できたら、本人の希望に沿うものをあげたいのだけれど……」
眉を下げながらそう言えば、オルガは少し考え込んだ。きっと、アイシャの好みを思い出しているのだろう。
「そうですね……。アイシャ様は黄色系がお好きでしたよ。私物の多くも黄色系ですので」
「じゃあ、トパーズとか、いいかもしれないわ」
アイシャはきれいな金色の目を持っていた。それすなわち、黄色も似合うということだ。
心の中でそう思いつつ、ヴィヴェカは笑う。手元は絶え間なく動かしていた。
(前世では、子供は比較的好きだったものね)
そして、そう思いなおす。
美陽だった頃。度々親戚の子供を預かって面倒を見ていたことがあった。働き出してからはご無沙汰になっていたが、彼女たちは今も元気にしているのだろうか?
(……そういえば、なんていうか、前世の私ってどうして死んだのかしら?)
不意にそう思ってしまった。
美陽としての記憶を思い出しても、死因までは思い出せていない。
ついでにいえば、趣味嗜好以外は、あまり覚えていない。……不思議なほどに。
(だけどまぁ、死んだのならばいいわ。私は今後ここで生きていくのだから)
でも、覚えていないということはそれすなわちそこまで未練がないということなのだろう。
こういうときは、ポジティブに考えるべきだ。そう判断し、ヴィヴェカはオルガと共にアクセサリーや宝石の類を整理していく。
(アイシャ、喜んでくれるといいのだけれど……)
そう思うと、自然と口角が上がった。
どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします……!




