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わがまま夫人と養女

(幼女の使用人なんて、いたら覚えていると思うのだけれど……)


 そう思いつつ、ヴィヴェカは引きつった顔で無理やり笑みを作り上げた。


「えぇっと、どちらさま、ですか……?」


 ヴィヴェカのその声は震えていた。


 何故ならば、幼女が明らかにヴィヴェカに怯えていたからだ。身を固くし、震えている。……なんだか、悪いことをしているようだ。


「は、はい! 私はアイシャと申します!」


 ……いや、名前を聞いているわけではないのだけれど。


(いいえ、こんなにも幼い子供だったら、そう受け取ってもおかしくはないわね)


 自分を無理やり納得させる。


 それから、しばしの無言の時間。どちらも言葉を発さず、無言で見つめ合う。


 そんな時間が三分ほど続いた頃だろうか。オルガが顔を見せた。


「……あら、奥様、それにアイシャ、どうしたのですか?」


 オルガが戸惑ったような声を上げる。この場において、オルガはヴィヴェカとアイシャ、どちらにとっても救いの女神だっただろう。


 その証拠に、アイシャも顔をぱぁっと明るくしていた。何ともまぁ、可愛らしい。


「えぇっと、オルガ。この子は……?」


 恐る恐るそう問いかける。まさか、リステアードの隠し子なのだろうか?


(って、それはないわよね。旦那様はヴィヴェカ、つまり私に一筋だし。……ない、わよね?)


 いくら一筋だったとしても、お酒に酔って間違えて……という可能性はゼロじゃない。


 無意識のうちに頬をヴィヴェカが引きつらせていると、オルガは納得がいったような様子だった。


「この子はアイシャでございます。……旦那様の、お子ですよ」

「えぇっ!?」


 まさかまさかの、隠し子がいたのか。


(そんなことライトノベルでは語られていなかったけれど!?)


 それに、どうしてリステアードの子供がメイド服を身に纏っているのだろうか。


 内心で慌てて混乱するヴィヴェカを、どう思ったのだろうか。オルガは「はぁ」とため息をつく。


「奥様。何を考えられているのですか?」


 混乱するヴィヴェカを一瞥し、オルガがそう問いかけてくる。


 でも、混乱しないという選択肢はなかった。


 なんと言っても、自分に一途だと思っていた夫に隠し子がいたのだ。挙句、その子供をメイドのように扱っていたなんて。


(あぁ、どうすればいいの……?)


 もう、神様か仏様に縋るしかない。


 心の中でそう思ってヴィヴェカが天井を見上げれば、オルガは「あぁ」と納得したように声を上げた。


「奥様。このアイシャは旦那様の子ではありますが、実子ではありませんよ」

「……え?」


 一体、どういうことなのだ。


「この子は旦那様の養女でございます。両親を亡くし、旦那様に引き取られた形でございます」

「……そ、そう」


 何だ、そうだったのか。


 そう思って納得しそうになるものの、リステアードの養女ならばどうしてメイド服を身に纏っているのだろうか?


 ついでにいえば、ヴィヴェカが認識していなかったのも気になってしまう。


「……けれど、そんなの知らないわ」


 ヴィヴェカが眉を下げてそう言う。オルガは、まるで当たり前だとばかりに頷いていた。


「そりゃそうですわ。奥様は子供がお嫌いでしたもの。なので、旦那様も内緒にしておりました」


 なんだそれは。夫婦として破綻していないだろうか?


(でも、まぁ、ヴィヴェカだし仕方がないわよね。……ヴィヴェカの子供嫌いも筋金入りだったし)


 思い直して、一人で納得した。でも、さすがにヴィヴェカにだけ教えないというのはいかがなものだろうか?


「それにですね。この子の両親は旦那様の遠縁の親戚とはいえ、平民ですの。なので、どちらかと言えば使用人たちが世話をしていた形で……」


 オルガによると、アイシャの母親はヘルベルガー侯爵家の分家である子爵家の女性だったそうだ。


 が、平民の男性と恋に落ち、そのまま駆け落ち。アイシャを設けたらしい。


「ですが、両親は落石事故に巻き込まれて……」

「……亡くなって、しまったのね」


 ヴィヴェカがオルガの言葉を引き継ぐと、彼女は頷いた。


「なので、この子は戸籍上は平民なのです。そのため、使用人で世話をしておりました。ちなみに、親族にも内緒にしております」

「……それが、正しいわね」


 ヘルベルガー侯爵家の親族たちは、プライドの高い人間が多い。それすなわち、平民の血が入った養女を迎えるなど許さなかっただろう。それは、ヴィヴェカとて理解できる。


「でも、どうしてそんな子が私のところに来たのかしら……?」


 そういえば、それが一番気になっていたのだ。


 その一心でヴィヴェカが問いかければ、答えたのは意外にもアイシャ自身だった。


「……奥さまが、心配だったのです」

「……え?」

「みんなは、私に奥さまに近づくなと言います。でも、私は奥さまが心配で……」


 俯きがちに、アイシャがそんな言葉を紡ぐ。


 だからこそ、ヴィヴェカの心に何か温かいものが芽生えたような気がした。

本来だったらアイシャが登場するのはもう少し後だったのですが、ちょっと早めてみました(´・ω・`)


どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします……!

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