わがまま夫人は考える
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今回から第2章になります! どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします……!
リステアードと別れて、ヴィヴェカは私室に戻ってソファーに腰を下ろした。
(ふぅ、とりあえず旦那様と共に食事を摂る許可を得られたのは、前進と言ったところかしら)
そして、心の中でそう零す。
まずは食事などの時間を共に。その後は、度々話せるような時間を作る。最後に寝室を共にしてもらおう。
これが、ヴィヴェカの算段だった。さすがにいきなりデートになど誘っても無理だろうし、寝室を共にしたいと言ったところで断れるのがオチだ。
ならば、まずは外堀を埋めていくにかかる。そう、思っていた。
「オルガ。喉が渇いたわ。お茶を持ってきてくれない?」
「かしこまりました」
そんなことおオルガにお願いして、ヴィヴェカは体よくオルガを私室から追い出した。
何故追い出したのかなど、答えは一つ。一人になって、いろいろと考えたかったからだ。
「……とりあえず、一歩は前進したけれど、まだまだ前途多難といった風ね」
ヴィヴェカの口から、ボソッとそんな言葉が零れる。
そもそもな話、ライトノベルがいつの時期から始まるのかが、いまいちよく分からないのだ。
ヴィヴェカが亡くなって、リステアードが闇落ちする。そこまでは理解している。けれど、いつヴィヴェカが亡くなるのか……。
そこがわからない以上、気を付けるのにも限度があった。
「タイトルも思い出せない。ヒロインの名前は……えぇっと」
それなりに覚えていることから、愛読していたのは間違いないだろう。が、美陽として生きていたころは、これでもかというほどライトノベルを読んでいた。その所為で、一つ一つの作品への印象が薄れているようだ。
(印象に深く残っているのに、タイトルもヒロインの名前も思い出せないなんて……)
まぁ、印象に深く残っていただけでも幸運と取るべきだろう。
自分自身にそう言い聞かせ、ヴィヴェカは立ち上がる。向かうのは、書き物をするために用意された机だ。
「とりあえず、現状を知るのが大切よね。……ヴィヴェカには日記をつける趣味はなかったけれど、ある程度保管してある手紙から、現状も分かるはず」
机の前に腰掛け、引き出しを開ける。そうすれば、そこにはいくつかの手紙が入っていた。
ヴィヴェカは実家と頻繁に手紙のやり取りをしていた。それすなわち、ここからある程度の情報が得られるはずだ。
「ヴィヴェカとしての記憶も頭の中に残っているけれど、もしかしたら新しい視点で物事が見れるかもしれないわ」
そう思い、ヴィヴェカは手紙を取り出して中身を見てみる。
父であるキーゼル伯爵。年の離れた兄。二人の綴っている文字は男らしい豪快な文字である。だが、読みにくいことはない。不思議と読みやすく、ヴィヴェカの頭にするりと入ってくる。
(そもそも、旦那様はどうして私を妻にすると決めたのかしら? お父様もそこに関しては教えてくださらなかったし……)
ふと、そんなことを考えてしまった。
もしかしたら、リステアードはヴィヴェカに一目惚れしたのかもしれない。ヴィヴェカは見た目と身分だけは極上だったためだ。
しかし、それだけで妻を決めるとは思えない。それに、そうなれば父が断るはずだ。娘の望まない結婚を、勝手に推し進めるような人間では、ないのだから。
(もしかして、キーゼル伯爵家って、何か危ないことでもしているのでは……? もしくは、没落寸前だったとか?)
ヘルベルガー侯爵家に嫁ぐ前のことだろうか。少しずつ、実家の使用人が減っているような気がしていたのだ。
まぁ、ヴィヴェカの癇癪に付き合いきれず、辞めていく使用人の数が多かったので、ヴィヴェカはそこまで気に留めていなかったようだが。
「それに、何となく家財道具も減っていたし、食事も質素になり始めていたような……」
もちろん、質素になっていたといっても貴族の体裁はしっかりと守った食事だった。ただ、それまでが豪華すぎたという意味である。
「……キーゼル伯爵家がどんな状態なのか、知る必要がありそうね」
そこがわかれば、父がヴィヴェカとリステアードを婚姻させた理由がわかるかもしれない。
そう思い、ヴィヴェカはぐっと手のひらを握った。
それとほぼ同時に、オルガが戻ってきたのか部屋の扉がノックされる。
「……どうぞ」
ヴィヴェカが静かに返事をすれば、部屋の扉が開いた。
「し、し、失礼いたしますっ!」
が、この声はオルガのものではない。むしろ、オルガはこんな風に緊張する性質ではない。
驚いてそちらに視線を向ける。すると、そこには――年若い。いや、メイド服に身を包んだ幼女がいた。
「……え?」
思わず目をぱちぱちと瞬かせる。……彼女は一体、誰なのだろうか?




