わがまま夫人は夫を孤独にしない
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「奥様は、どういう風の吹き回しなのか、ドレスを売り払おうとされておりました。……大方、この調子ではアクセサリーや宝石なども売り払ってしまわれるでしょう」
どうやら、オルガはヴィヴェカがやろうとしていることを理解しているらしかった。
何とも呑み込みの早い侍女だろうか。変わってしまったヴィヴェカの思考回路にも、もう柔軟に対応し始めている。
「……それは」
リステアードがオルガの言葉を聞いたためか、言葉を詰まらせた。
「旦那様は、奥様を愛していらっしゃるのでしょう? でしたら……旦那様がするべき行動は、一つしかありませんわ」
まるでリステアードを嗜めるような言葉だった。
それを聞いたためだろうか。リステアードがヴィヴェカに視線を向けてくる。彼のその紫色の目が、ヴィヴェカを射貫いた。
「……すまないが、朝は無理だ。昼は仕事で出る予定ということもあり、夜からになるが……」
眉を下げて、彼がそう言う。リステアードは嘘をつかない人間だ。
つまり、必ず夜には一緒に食事を摂ってくれるということである。
「かしこまりました。では、夕食を楽しみにしておりますわ」
にっこりと笑ってヴィヴェカがそう言えば、リステアードはヴィヴェカから露骨に視線を逸らした。
その頬は仄かに赤く染まっており、やはりというべきか照れているらしい。
「では、俺は部屋に戻る。ヴィヴェカは、この後どうするつもりだ?」
「私は、とりあえず朝食を摂ろうと思います。その後は、断捨離しますわ」
「……断捨離、だと?」
ヴィヴェカの言葉を聞いて、リステアードが声を漏らす。
その後、感心したように頷いていた。
「だが、そんなもの必要ないだろう。ヘルベルガー侯爵家は裕福だ」
が、さすがは貴族と言うべきか、庶民の感覚はわからないらしい。
それにムッとしてしまいそうになるが、ヴィヴェカが言えたことではない。
そう思いなおし、ヴィヴェカはゆるゆると首を横に振った。
「いえ、これは私なりのけじめでございます。……もちろん、旦那様にいただいたものは取っておきますわ」
「……ヴィヴェカ」
リステアードの目が、大きく見開かれる。きっと、彼は自分の贈り物をヴィヴェカがまだ持っていたことに驚いているのだろう。
とはいっても、贈り物を無下には出来ないと父がヴィヴェカに半ば無理やり持たせたようなものなのだが。そして、そのうえでヴィヴェカの頭の中に捨てるという選択肢がなかっただけなのだが。
「いつか、旦那様にいただいたドレスで、社交の場に参加させていただこうと思います」
本当ならば、もっと早くにそうしていなければならなかった。
けれど、今からでもきっと出来る。……今からでも、リステアードとヴィヴェカの関係は変わっていくことが出来るだろう。
そんなことを思いつつ、ヴィヴェカはリステアードの手をぎゅっと握りしめた。驚きからか、リステアードの身体が震える。
(とっても大きな手。ごつごつとしていて、努力もされているのよね)
リステアードは若い頃は騎士として国に従事していたという。その過程で、現在も気分転換に剣をふるうことがあるということだ。
そのためなのか、リステアードの手はごつごつとしており、いくつかの傷もあった。それが、何となく愛おしい。
(こんな人が闇落ちしてしまうなんて……絶対に、あってはならないわ)
こんな妻でも見捨てず、愛し、努力をしっかりとしていた。
ライトノベルの中では彼は闇落ちしてしまった。でも、この世界は現実になったのだ。
この世界の未来を変えることは、出来るはずだ。
「……ヴィヴェカ……放して、くれ」
だが、あまりにもヴィヴェカが手を握りしめてくるものだからか、リステアードがそう控えめに声を上げた。
彼の様子は狼狽えており、どうやら相当参っているようだ。
今まで触れてこようともしなかった最愛の妻が、いきなり自分に触れてきている。そうなるのも、ある意味頷ける。
「嫌ですわ」
けど、易々と放すつもりはヴィヴェカにはなかった。
「私、旦那様を今後孤独にはしないとお約束します。……どうか、私と本当の夫婦になってくださいませ」
小首をかしげて、はっきりとそう伝える。ヴィヴェカは容姿だけは抜群なのだ。
その証拠に、リステアードが狼狽えたのがよく分かった。
「……あ、あぁ、善処、する」
リステアードははっきりと頷いてはくれなかった。しかし、今はこれで十分だ。
(今日から、私と旦那様の夫婦生活の、始まりよ!)
結婚して二年が経った。普通ならば新婚という時期は過ぎているが、きっと今からが――リステアードとヴィヴェカの新婚生活なのだ。
次回は多分リステアード視点です。
その後、第2章に移ります!
どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします……!




