王妃は困っている
気を付けたつもりですが、時系列とかちょっとおかしいかもしれません。
スナック感覚でお読みください。
ミラは困っていた。
てっきり息子と結婚するのは顔だけ妖精で中身は腹黒なポーレット・ラウールだと思っていたのに、いざ蓋を開けてみれば嫁になったのはウィズ・ジュリアン侯爵令嬢だった。
彼女のことは良く知っている。アレクサンダーの婚約者選びの際、ポーレットとともに最後まで選考に残った令嬢だからだ。どちらかと言えばポーレットかウィズかという嫁選びではなく、息子の傍らにエメラルドを置くかウィズを置くかという選択だった。最終的にエメラルドが将来の側近として選ばれ、自動的に婚約者はポーレットになった。
しかしそれが大きな過ちだったと思い知るのは早かった。ポーレットは王子の婚約者としての立場に責任を感じるどころか、それを利用して楽をすることしか考えていなかった。
王妃教育にも身は入らず、少し目を離せば夜会で遊び惚ける。アレクサンダーも高位貴族らしからぬ彼女のふるまいに戸惑っているようだった。それはアレクサンダーが戦地に駆り出され、ミラが忌々しいカミーユ側妃に追いやられた後も変わらない。
やがてカミーユ側妃や他の王位継承者たちは自業自得で脱落していき、ミラは王宮に舞い戻り、アレクサンダーが立太子する時がやってきた。立太子の儀と同時に結婚式を取り行うことが決まり、ミラは久々にラウール父娘と対峙した。
「ポーレット嬢にはもう少し己の立場を理解してから嫁いでもらいたかったのですが…こんなことになった以上、致し方ありません」
ミラが王宮から追放されている間、ポーレットはこれ幸いと悪い遊びに耽っていたという。さすがに純潔を失うような馬鹿は仕出かさなかったようだが、彼女の評価は崖っぷちだ。追放先の離宮にまで彼女の放蕩ぶりが伝わってくるのだから相当だった。
全部知ってんだぞ、というミラの言葉にラウール伯爵は顔を青くしているが、ポーレットは面倒臭そうな顔をしただけだった。それでも婚約者を今更替えることはできない。ただでさえ側妃たちの失脚に貴族が右往左往しているというのに、王家が弱みを見せることはできないのだ。
さらに頭の痛い問題が続く。帰ってきた愛しい息子は…ゴリラになっていた。悲しいかな、にっくき夫の遺伝子がしっかり受け継がれていたのだろう、二メートル越えの見事な巨漢になっていた。
髪と瞳の色も夫のものだったので、ミラの要素は消えた…おのれ夫。ミラは変わり果てた息子の姿を見た途端、失神してしまった。ちなみにポーレットも同じく失神したらしい…迂闊だ。
そんなこんなで頭を抱えていたミラだったが、結婚式の会場で見た光景にまたしても気を失いそうになった。
ザンダーと共に登場した花嫁が、なんか違うな…という気はしたのだ。しばらく考えて身長がおかしいのだと気づく。ポーレットは150センチ前半だったから、高いヒールを履いていてもザンダーより頭一つ半は低いはずだ。
なのにベールを被った花嫁は明らかに180センチは超えていた。そして誓いの口づけをするために上げられたベールの下は…そう、冒頭の通りウィズだったのである。
結婚式の後、何にもなかったふりをして立太子の儀を国王の代理でやり遂げた私を誰か褒めてください…。
後からポーレットは駆逐されたと聞いた。どうやらリースマン宰相が立ち回り、ポーレットに不満を感じていたザンダーがそれに乗っかったようだ。
王妃になるにしては色々足りなかったとはいえ、大した罪を犯していない彼女の末路が気になったが、ミラはそれ以上知ることはできなかった。
本当に困る。
…ちょっとは王妃の硝子の心臓を労わってくれてもいいんじゃないだろうか。
「パンジー、報告をお願い」
「はい、ウィズ様…いいえ、ウィステリア様は五か国語をマスターし、現在は六つ目のリバーシュ語を習得中。東部地方に偏ってはいますが経済に明るく、財務省の幹部が助言を求めることもあるそうです」
「…」
「さらにここ二年ほどリースマン宰相の下で働いていたこともあり、特に大臣クラスはウィステリア様が王妃になることを歓迎しています」
「…」
「何よりザンダー殿下…あ、こちらももうアレクサンダー王太子ですね。ウィステリア様への溺愛ぶりがすごいと侍女の間でも有名です。執務の時以外はずっとウィステリア様にくっついてウザ…仲睦まじいようです」
「…」
「ウィステリア様はそれほど溺愛されているというのに、高価な宝石やドレスを求めることもなく、それどころか妃としての仕事は何かないのかと頭を悩ませておいでとか…こりゃワーカーホリックってやつですね」
「なんじゃそりゃぁああーー!!弱点がないじゃないのよぉーーー!!!」
ミラは側近兼侍女のパンジーの報告に頭を抱えて絶叫した。そんな素のミラをパンジーは冷めた目で見ている。幼い頃からの付き合いなので遠慮なんかない。
「ウィステリア様の弱点など見つけてどうするつもりなのですか?」
「決まっているじゃない、いびるのよ!姑は嫁をいびるものなの!!」
「…今すぐ全国の心優しい姑の方に謝罪してください」
ただパンジーは「嫁いびりをするな」とは言わない。そんなことを言ったところで思い込みの激しいミラは止まらないし、大体ミラに大したいびりができるはずがない。ザンダーが相談もなく花嫁を替えてしまったから拗ねているだけなのだ。
「ウィステリア様の弱点ならばありますよ」
パンジーの言葉にミラは目を剥いた。
「身長です」
「…はあ?」
「あまりに高すぎる身長のために、ポーレット様をはじめとする他の同年代の令嬢たちから、女の出来損ないだと陰口をたたかれていました」
「何言ってんのよ?体重ならまだしも、身長なんて弱点でも何でもないでしょう。あえて言うなら本人じゃなくて、栄養を与え過ぎた親の落ち度よ」
「しかしポーレット様はそこを利用して、彼女を社交界で孤立させ、縁談を潰していました」
「え!?あの娘、そんな性格悪いことまでしてたの?怖…っ」
確かに性格は悪いが、貴族なんてそんなものだ。結局ミラは純正培養の元王女様なのである。
「なのでウィステリア様は、同年代の令嬢とは交流がほぼありません。…これは弱点では?」
「…よ、よろしい。…そこを突きましょう。……交流がないってところよ?身長じゃないわよ?そんなのただの悪口じゃない」
「さようでございますね(棒読み)」
本当にいびる気あるんだろか。パンジーはもう返事をするのも面倒になってきた。
「失礼するわよ!!」
ミラは先触れもなくウィズの部屋に乗り込んだ。意地悪な義母は連絡なしで突撃するものなのだ。
周囲の侍女や女官たちが目を丸くしている…よしよし、つかみはオッケーだ。が、肝心のウィズは立ち上がって優雅に礼をした。
「王妃陛下…ご機嫌麗しゅう」
「う、う…麗しくなんかないわよ!」
「申し訳ございません。こちらからご挨拶に行かねばならないのに、王妃様に御足労いただくなんて」
「え、あ、…そうよ!そうだわよ!!失礼しちゃうわ」
おかしい…。
ウィズは何だかとっても嬉しそうだ。演技?…だったら大したものだが。
ミラは知らない。ちょっと過保護気味の自分の息子が、急に書記官から王太子妃になってしまったウィズを心配し、会う人間をかなり制御していることを。
昨日ようやく初夜の寝所から解放されたウィズはまだ身一つで王宮に嫁いできた状態で、身の回りの世話をする侍女すら王宮の人員を借りていた。本来なら妃の身の回りの世話をする者は実家から派遣されることが多く、婚礼の日までに身辺を洗われ、王宮のしきたりをある程度仕込まれたうえで一緒に登城するものなのだが、ウィズの場合は経緯が経緯のため間に合わなかった。さらにザンダーは、ウィズに面会できる異性は実の家族のエメラルドとジュリアン侯爵しか認めていなかった。リースマン宰相ですら半径五メートル以上近づくなと厳命されている…こっちは結構私的感情が入っている。
だからウィズはする仕事もなく、気軽な会話ができる侍女もおらず、非常に退屈していた。そこに現れたのが生贄だったのである。
「王妃陛下、今すぐお茶の用意を致します。さあこちらへ」
ウィズは流れるような仕草でミラを自分が座っていた椅子に促し、女官たちに命じてテーブルを持ってこさせた。てきぱきとしていて、接客に慣れていることが窺える。
それにミラが現れてから自分はすぐに立ち上がり、そのままこちらに自然な動作で椅子をすすめるなど、上下関係のマナーもきちんと押さえていた。誰だ、貴族と交流がないなんて言った奴は…あ、私の側近だわ。ちらりとパンジーの方を見れば、素知らぬ顔でミラの椅子の後ろを陣取っている。つま先を踏んづけてやろうかとしたが、こっそりやるにはぎりぎり距離が足らなかった。
そうこうしているうちにお茶の用意ができてしまったようだ。紅茶のいい香りがして、テーブルにはサンドイッチやお菓子の皿が乗せられた。
…紅茶!!
ミラの目がきゅぴーんっ!と光った。
これだ!
いびりトメなる者、「あーらぁ、ごめんあっさーせ」と紅茶を嫁のドレスにかけねばならぬ!
自分のやるべきことを見出したミラはにやにやと笑いながら紅茶が冷めるのを待った…もちろん、熱々の紅茶をかけてウィズを火傷させないためだ。ほどほどに冷ましてからかけてやろうとしている時点で色々アレなのだが、天然なミラは気づいていない。
不気味な笑みを浮かべる王妃に女官たちは戦々恐々とし、パンジーは相変わらずネジ飛んでるなぁとため息をつき、ウィズは紅茶が気に入ってくれたのね、と喜んでいた。そうして紅茶をちびちび飲みながらドレスにかける機会を窺っていたミラだったが、思わぬ来客に計画を狂わされることになった。
入り口の方がざわざわと騒がしくなったかと思うと、「失礼するわよ!」とつい数分前に誰かがやったような台詞で一人の令嬢が乗り込んできた。
「エマニュエル公爵令嬢、お待ちください!こちらは王太子妃様のお部屋です。勝手に入られては困ります!!」
青い顔をした王宮女官たちが後ろから追いかけてくる。現れたのは淡い水色のドレスをまとった、一見可憐なプラチナブロンドの令嬢だった。
リンダ・エマニュエル公爵令嬢。ミラは不躾な(もちろん自分のことは脇に置く)訪問に眉を寄せていたものの、そっと息をはいた。確かにリンダ嬢では、王宮に仕える女官とはいえ手に余るだろう。
公爵令嬢という身分もそうだが、母親の公爵夫人は二代前の女官長なのだ。年配の女官や侍女はエマニュエル公爵夫人に取り立てられ、未だに後ろ盾になってもらっている者も多い。その娘に強く言えないのは当然だった。
リンダはウィズの姿を認めるとにやりと笑った…可憐な美貌が台無しだ。
「こんにちは、ジュリアン侯爵令嬢。どうやって王宮に入り込みましたの?」
「…こんにちは、エマニュエル公爵令嬢。こちらは王太子殿下がご用意くださった私の部屋です」
ウィズは感情を押し殺したような声で答える。しかしミラとの時とは違い、明らかにリンダに気圧されていた。
「何てこと、どうやってザンダー殿下を誑し込んだのです?まさか花嫁が当日にあなたになっているなんて驚きましたわ」
「私の口からは何も…」
「お黙り!仮にも侯爵令嬢ともあろうものが何てあさましいことを…王太子妃の地位がほしいからとザンダー殿下とポーレット嬢の間に割り込むとは!!」
「…」
ウィズの肩がわずかに震えている。
「ねえ、一体どんな汚い手を使ったの?お前のような図体が大きいだけの女の出来損ない、王太子妃に相応しくありません!即刻その座を辞して王宮から立ち去りなさい!」
「…」
「何とか言ったらどうなの?この醜女が!ここはお前がいていい場所じゃ…っ、…!!」
ばしゃっ。
リンダは胸元にかけられた生ぬるい液体に唖然とした。公爵家の令嬢として大事に育てられた彼女に、紅茶をかける人間なんて今までいなかったのだから当然だ。
「何すんのよ!!」
鬼の形相で紅茶をかけた相手を見て、また唖然とする。それはリンダが膝を折って接しなければならない数少ない人間の一人だったからだ。その人物は、空になったカップをくるくるさせながら、リンダに負けないくらいの凶悪な顔で笑った。
「あーらぁ、ごめんあっさーせ」
「お、お、王妃様…なぜここに…」
「それはこっちの台詞なのよねぇ…息子の嫁と仲良くお茶を楽しんでいたというのに、気分が台無しだわぁ。ショックで手元が狂ってお茶を零しちゃったわぁ」
おどけたように言うミラに、リンダはだんだんと表情を険しくしていく。エマニュエル公爵家はもともとカミーユ側妃派寄りの貴族だった。リンダの中に他国出身の王妃への敬意など本来存在しない。
「王妃様といえどもエマニュエル公爵家の私に対して無礼ではありませんの?だいたい、私はそこにいる大女に身の程を教えてやっていただけですわ」
「あら、あなた公爵家のお嬢さんだったの?いきなり王太子妃の部屋に挨拶もなく乗り込んで、王妃である私を無視し、王太子妃に対する見当はずれな罵詈雑言を始めるものだから、どこかの野猿が紛れ込んだのかと思ったわ」
「なっ…!!」
リンダはわなわなと震える。
「ぶ、無礼な…っ。お父様に言いつけてやるわ。エマニュエル公爵家の後ろ盾がなくなれば王妃といえど…」
しかしミラはひるまなかった。
相手がエマニュエル公爵家ならば容赦はできない…なにせ因縁があるのだ。
「エマニュエル…エマニュエルねぇ…。なんか聞いていると不快になる名前なのよね。どうしてかしら、パンジー?」
急に水を向けられたパンジーだが、さすが王妃の側近を務めているだけあり、すぐにミラの意図を察してくれた。
「それはおそらく…王妃様が流行病にかかったという誤った診断をした医師を手配した家だからではないでしょうか」
「…あっ」
眉一つ動かさず一気に言い切ったパンジーに、リンダは口をぱくぱくさせる。
「あーー!そうだったわ。あのやぶ医者を寄こした家だったのね。おかげで私は離宮に送られたのよねぇ」
「それだけではありません。長年王都を留守にしているアレクサンダー様の王位継承順位を下げるように国王陛下に奏上していました」
「…っ」
「あとは…そうそう、キース王子に娘を輿入れさせようとしてたわね。その娘の名前は…」
「リンダ様でございます」
「じゃあもしザンダーが戦死でもしていたら、王妃になる未来もあったということね!あらあらあら…」
ミラは扇でわざとらしく口元を隠す。
あんさんのこと侮ってるんですぜ、というちょっとわざとらしいポーズだ。
「キース様と側妃様が処刑されて焦り、慌ててザンダー様に取り入ろうとしているのではないでしょうか」
「そりゃもう少しで王妃になれるところだったんだものねぇ。簡単には諦められないわよねぇ」
リンダは顔色を赤くしたり青くしたりと忙しい。ミラの態度に怒りを感じてはいても、王太子の生母にこれ以上歯向かってはただでは済まないという理性も働いているようだ。
「ねえパンジー。私は不安なの」
「何がでしょうか、敬愛なる王妃様」
「ザンダーはこの母の言い分を信じてくれるかしら…。エマニュエル公爵家に陥れられ、エマニュエル公爵家に離宮に追いやられ、エマニュエル公爵家にその日の食事にすら苦労させられたという母の話を…!」
「王妃様!!そんなことはありえません!ありえませんとも」
ミラとパンジーは向かい合って手を取り合う。目には涙まで浮かべている…ここまで来たら、とことんやってやるのだ。
「お労しや、王妃様…。離宮は掃除は行き届いておらず、食事は固いパンのみ…。冬の日に冷たい井戸水で王妃様のお体を冷やすのは忍びないと火種を頼んでも、元側妃とエマニュエル公爵家の手の者によってそれすら恵まれず…。すべては私の力不足でございます」
「いいえ、いいえパンジー。あなたが傍にいてくれたからこそエマニュエル公爵家からの仕打ちに耐えられたのよ」
「王妃様…っ」
エマニュエル言い過ぎである。だというのに、ミラとパンジーの三文芝居に目を真っ赤にしている女官までいる。
実際はそこまで過酷ではなかった。確かに離宮は清掃も物資も行き届いていなかったのだが、外から持ち込むのは何も禁止されていなかった。国王と不仲なミラをよそにちゃっかり子爵家の次男坊を捕まえたパンジーは、側近の仕事もしつつ、まあまあ裕福な家の奥様になっていた。なのでミラが幽閉された時は、必要な物資と身の回りの世話をする侍女をきちんと手配してくれている…ちなみにパンジー自身は一週間に一回くらいのタイミングで離宮を訪ねていた。
だがまあ、それくらいは大げさに言っても許されるだろう。誰も離宮に追いやられた王妃がどう過ごしていたかなど調べはしない…もちろん幽閉したエマニュエル一門であるリンダですら。
「憎きはエマニュエル公爵家…。アレクサンダー様と王妃様を陥れ、それが失敗するとあからさまに阿ろうとするとは…」
「ち、ちが…」
リンダは否定しようとしているが、声にあまり覇気がない。パンジーが言っていることが図星だからなのは明白だ。
「ご心配には及びません、王妃様」
「そうなの?パンジー」
「エマニュエル公爵家は奏上によってアレクサンダー様を王位継承第一位から引きずり降ろそうとしていました。その記録は必ず残されているはずです」
「あら、そういえばそうね」
リンダの顔色が一気に白くなった。
「わ、わたくし、失礼いたします!!」
リンダは入ってきたのと同じくらいの勢いで部屋を飛び出していった。
フリルとレースたっぷりのボリューミーなドレスだったというのに身軽なものだと感心していると、ふとウィズの表情に気づいた。リンダの理不尽な言い分に黙して耐えていた彼女が、キラキラした目でミラを見ている。
今更ながらミラは自分の本来の目的を思い出した。嫁いびりをするはずが、嫁の敵を撃退してしまった。いやいや、あの女は政敵の娘なわけだからこれで良かった…のか?
後から聞いた話だが、リンダはウィズの部屋を出た途端、待ち構えていた衛兵に捉えられて貴族牢に放り込まれたらしい。リンダがウィズの部屋に突撃したことは、女官たちによってすぐにザンダーとリースマン宰相に知らされていた。
パンジーが言った通りエマニュエル公爵家の存在に危機感を抱き粗探しをしていたザンダーと宰相にとって、リンダは飛んで火にいる夏の虫だった。後の話になるが、エマニュエル公爵家は当主夫妻が隠居、嫡男が継ぐことになったが侯爵に格下げされたうえ領地を半分に削られた。王家の血も引く公爵家相手にかなり苛烈な措置だったが、一族から王妃を出すという権力欲のために王位継承の順序に口を出したことが重く見られた。
ちなみにリンダ嬢は、阿るつもりだった相手のザンダーが自ら行った尋問にボキボキに心を折られ、紹介された辺境の男爵の後妻に大人しく収まったという。