弓張月の夜に
弓張月が
遠くに白くありました
何しも勝る
しずかな夜に
夏に近づく
雷雲が
ひとつ光を打ちました
私の手には
一杯の珈琲
さざなみひとつ
立てぬそれを
不意に
揺らせば
ひとりは
曖昧に夜と とけてゆきました
愛がそこにあったのなら
私は
欲しい と
手を伸ばしたでしょう
温もりがそこにあったのなら
私は
すがるように
身を寄せたでしょう
星々は
見上げるより
遥かに遠い場所で
隣り合っていることを
知る今でも
ひとさし指とおや指で 測る距離を
夢みるのは何故でしょう
雲が割れれば
仰ぎ見る あなたと
目が合うでしょう
言葉はなくとも
あなたの さみしさを
ずっと
知っていた気がします
時に
懐かしささえ
感じるでしょう
私と
あなたは
まるで
違って
それなのに
驚くほど 親しい
私たちは
微笑みで 語らい合い
眼差しで 慈しみ合うことすら
出来るのです
引き絞られた
弓張月の
光が射しています
何にも代えがたい
あなたの影を くっきりと
生み出す光が 射しています