TS賢者は頭を抱える!優秀なサポーターを追放したいでパーティーが崩壊寸前です。マジ勘弁してほしい!
久々に短編小説ではありますが書かせていただきました。良ければ一読お願いします。
「アラン!お前を追放する!」
そう叫んだのは俺のパーティーリーダであるレオンであった。俺の他にも女性が二人同じ席に座っている。一人は金髪隻眼の少女フィーネ。もう一人は赤髪隻眼の少女ネルである。ちなみに俺は黒髪で左右の目が赤と紫のオッドアイである。自分で言うのもあれだが、スタイル抜群の美少女である。まあ、これゲームアバターなんだけどね・・・
数年前に日本で死んでこの世界に転生した転生者である。転生時に俺が最もやりこんでいたゲームのアバターでこの世界に転生させてもらった。勿論ステータスもそのままだ。それから、いろいろあって今の同じ村出身の彼らとパーティーを組むことになった。
「ど、どうしてだ!レオン!俺たち今までずっと一緒だったじゃないか?」
アランがそう言うも
「お前、自分がどれだけこの[英雄の集い]の足を引っ張っているか分からないのか?」
レオンはそう言った。[英雄の集い]正直痛いパーティー名であるが、ここは黙っておこう。
しかし、アランが足を引っ張ているという言葉には賛同できない。なぜなら・・・
「アラン。お前はサポーターのくせに、まともなサポートも出来ていないじゃないか?お前の支援魔法なんかあっても大して能力が上がらないじゃないか?お前よりアリシアの支援魔法の方が遥かに能力が上がる。だってそうだろ!彼女は賢者なんだからなぁ。」
「でも、俺の支援も少しは役に立ってると思うけど・・・」
アランが弱々しく言う。
「男なのに情けないわね。いい加減、認めなさいよ。自分はお荷物だって。」
そう言うのは剣聖のネル。
「フィーネもそう思うわよね。」
ネルは聖女のフィーネにそう聞いた。
「ええ、そうね。正直アランは足手まといでしかないわ。」
「そんな・・・フィーネまで。」
「あらら、彼女にまでそう言われてやんの。わかったかアラン。お前は邪魔なんだ。」
そう言って勇者のレオンはフィーネを抱き寄せる。
「え?何やってんの?」
アランは動揺していた。
「何だ?知らなかったのか?フィーネはもう俺の女になってんだよ。」
そう言ってアランの前でイチャイチャしだす二人。
「ずるーい。私も混ぜて。」
そう言ってネルも言う。俺はこのパーティーに入ってそんなに長くはないが、正直反吐が出る。勇者であるだけで大した力もないレオン。剣聖でありながら全く剣の稽古すらしないネル。アランの恋人のくせに、役に立たないと分かった瞬間にレオンに走るフィーネ。俺はどうしてこんなパーティーに入ってしまったのだろうか・・・
「アリシア。君も皆と同じ意見なのか?」
アランが俺にすがるように聞いてきた。
「私は・・・」
「アリシアも同じ気持ちに決まってるだろう。わかんない奴だな!」
俺が何か言おうとする前にレオンが言った。
「(こいつ!俺が何か言う前に勝手に割り込んできて、殺してやろうか?)」
俺がレオンにそう思っていると「そっか・・・」といい、アランが涙を流しながら去ろうとすると
「おい、アラン、装備と金おいてけよ。元々それは俺たちのなんだからな!」
そう言って、レオンはアランから装備と金をひったくる。
「(こいつ最低だな。その装備と金はアランのだろう。)」
アランは装備も金もとられ涙を流しながら冒険者ギルド出て行った。
「はあ~、やっと出て行った。これで邪魔者はいなくなって精々するぜ。」
レオンはフィーネとネルを両脇に座らせ大声で笑っていた。正直、他の冒険者に迷惑だ。
「これで俺たちはBランクよりも上を目指せるぜ。」
「そうね、足手まといがいなくなったおかげで、これからはもっと効率よく依頼がこなせるわ。」
ネルがそう言いい
「そうですね。アランは冒険者より普通に暮らした方がいいわ。」
そうフィーネが心配するように言うが
「フィーネ!それ本音じゃないだろう。」
「あら?バレました?」
レオンの言葉に舌を出してかわいらしくフィーネが笑った。
俺は黙って三人の会話を聞いていた。
「(アランは優秀なサポーターなんだけどねぇ~)」
俺は初めて彼らとパーティーを組むことになったときに彼らの能力を鑑定した。確かにレオンたちは勇者・剣聖・聖女に相応しい能力を持っている。だが、俺が本当に驚いたのはアランだ!彼はサポーターでありながら支援魔法による能力の上昇が余りにも桁違いだった。自分に支援魔法をかけることが出来ない欠点はあるがそれでもパーティー全体の能力を10倍にすると言ったぶっ壊れた能力だった。俺の支援魔法でも精々2倍に出来ればいい方だ。正直ゲームアバターの能力でも、支援魔法に関しては彼には勝てないと悔かった。だからアランに興味を持ちパーティーに入ることを決めたのだ。
「(はあ~、マジでどうしようかな。このままだとこのパーティーの今後が心配だ。)」
俺はこのパーティーに入ったことを後悔し頭を抱える。マジで勘弁してほしい。アランはサポーターであるが俺の支援魔法で、そこそこ剣は振れるし、普通のパーティーで支援魔法さえあれば十分に前衛は務まる。だが、このパーティーはアランと俺の支援魔法で出鱈目な強さになっているため、どうしても自身に支援魔法がかけれないアランが弱く見えてしまうのである。しかし、雑用などは彼がすべてしてくれているし、戦いにだって参加しみんなの邪魔にならない様に確りと周りを見ることも出来ている。正直言ってめちゃ優秀!
「(アラン!!マジで戻ってきてくれ!)」
俺は心の中でそう叫んだ!
「(あ!あとでお金もっていってあげなきゃ!)」
俺はアランの事を心配しつつ、どうやってパーティーが崩壊しないか頭を抱えるのであった。