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capsule  作者: 天川 榎
前編 
6/28

第六話 嘘

第六話





capsuleは快調に飛行する。

ミユから、体大丈夫か、と聞かれた時は内心ドキッとしたが、大丈夫だよ、と伝えると、ミユは朗らかに笑った。


だが、出発する前、ミユは憂鬱な顔をしていた……



ーーーーーーーーーー


発進前

ネオジオ国

capsule格納庫内



ボクは静かにコックピット室に向かってトボトボと歩いていた。

もう直ぐ着く、という所で、ボクに後ろへ引き寄せられるような感覚が服から伝わってきた。

そこで後ろを振り返ってみた。そこには今にも泣きそうになっているミユがいた。どうやら、どう声を掛けたらいいか分からなかったので、無理矢理ボクの服を引っ張ったようだ。


「どうしたの」

ボクが優しく話し掛ける。

すると、ミユは顔を歪ませて大粒の涙をこぼし始めてしまった。

「ジョンが……」

鼻水をすすり、涙を拭きながら苦し紛れに叫ぶ。

「ジョンがどうしたんだ?」

ボクは内心戸惑っている。

「……どこにもいないの」



まさか、あの時の、ボクを庇った時のあれが原因?

いや、それは有り得ない。

だって、capsuleは遠隔操作だから、人がどうこうなることなんか無いはずなのに。嘘に決まってる。


「何冗談言ってるんだ」

「冗談じゃないもん!!」

ミユは体を上下に激しく揺らし、ボクに訴える。


ボクは、何て言っていいのか、一瞬戸惑った。


「だってcapsuleって無人遠隔操作だろ?なんで運転してる本人が失踪しなきゃなんないんだ?」

ボクはミユに疑問を突きつける。




だが、ミユは微笑した。

「知らなかったの?capsuleと操縦士の精神はリンクしているんだよ。だからcapsuleが完全に破壊されたら、その操縦士は廃人になるの」


突然こんな話をふっかけるミユには、いつも驚かされる。

だが、そんな話は一度も聞いたことない。あの白衣の男からもそんな情報は伝えられなかった。



だからどうしろっていうんだ?


今からどうこう出来る話じゃ無いだろ?


「何で自分の精神とcapsuleを繋げなきゃならないんだ」

ボクは血が滲み出る程に拳を握り締めた。


だが、ミユはそんな様子に見向きもせず、こう言い放った。


「capsuleはAIを積んでいる。だけど自律行動するためには知恵がまだ足りないの。だからcapsuleはキミの思考を学習しているんだよ」


ボクは唖然として、しばらくその場から動く事が出来なかった。




ーーーーーーーーーー



capsuleの飛翔音が耳障りだ。

雲はだんだん厚さを増していく。




capsuleが人を学ぶ?

一体どういうことなんだ?



capsuleって一体何なんだ?



思考が堂々巡りを繰り返す。



ダメだ。ここで迷ったら、今までやってきたことが水の泡だ。落ち着け。ボクはcapsuleがどうだろうと戦わなくちゃいけないんだ。

信念を曲げたら、ボクの存在意義が希薄になる。

この不安に飲まれるな。ボクはボクだ。






そうこう思案しているうちに、国境近く迄来た。

国境界隈は、芝生が生い茂り、ヱイラ国側に行くと、ちょっとした森林があり、その5km先に首都がある。

国境防衛基地と首都は幹線道路で接続しており、弾薬の補給などが容易に出来るようになっている。


前回の奇襲では反応がなかったヱイラ国の防衛システムが、今回は機能しており、随分と機関銃の音が鳴り響くようになった。

前回の反省を踏まえ、国境線の防衛を厚くしたのだろう。


突然機関銃の音が鳴り止み、一発の小型ミサイルが、森林の中から発射された。



デジャヴだろうか。こんなことが前にもあったような気がする。



ミサイルが、ボクのcapsuleに1km迄迫ってきた。



前はジョンに助けられて何とかなったのかもしれないが、今度は、そうはいかない。ミユに守ってもらうなんて、言語道断だ。




ボク自身が成長しなきゃいけないんだ。


ボクがしっかりしていれば、ジョンは……



無力。

ボクはいつだって何も出来なかった。いつも後悔ばかりしている。ボクが弱いから。


全部ボクの責任だ。

だから、ボクに力を。これ以上、何も失わないで済む程の力を。





力が……欲しい!





その時、コックピットが七色に光り出した。その光はボクの視神経を焼き切らんとする程強く、瞼を閉じても光が入ってくる。


「……うっ」


ボクのヘッドフォンから、不思議なことに、ボクの声が聞こえる。


「ようやくキミは力の存在を自覚したようだね」


その声は、上機嫌で語りかける。



何が何だかボク自身分からない。


何で自分の声がヘッドフォンから聞こえるんだ?

何でコックピットが光ったんだ?



その疑問には、ボクの声が答えてくれた。

「キミ自身が成長したんだ。だからそれにcapsuleが応えただけだよ」


ボクは問う。

「キミは一体誰なんだ?」



その声は引き笑いしながらこう答えた。

「capsuleの中のもう一人のキミだよ」


ボクの中に戸惑うボクも居たが、それ以上に歓喜に震えるボクの方が大きかった。














次回予告



覚醒したcapsule。圧倒的な力を見せつけるスミの前に現れる最強の敵。



次回

スフィア






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