第弐拾伍話 或る戦い
ある人は言った。戦争するのは良くないことだと。
またある人は言った。戦争は然るべき手段であると。
闘うことが必然だとすれは、果たして無関係と言える人間は存在するのだろうか?
もし無関係だと言い切れる者がいたとしたら、こう諭す者も出るだろう。
「あなたは生かされてきた」
第弐拾伍話 或る戦い
気味が悪い進展状況だ。
そこそこ相手の手の内が見えてきた途端にこれだ。有効な手段といえば、capsule。
だが、敵の数が多すぎる。こっちは数機しかない。向こうは数千数万で押し寄せる。圧倒的に戦力が不足している。戦車や長距離砲などを配備し、防衛戦で、ヱイラ国からの支援を待つ他無い。
「どこまで持つか」
アルは嘆息し、徐にポケットから煙草とライターを取出し、喫いだす。
「臭い」
と、イオが文句。
「すまん」
そのまま、アルは部屋から出て行ってしまった。
次の行動を、アル、イオがそれぞれ画策する。
アルは、何とかイオから頂いた有り難い提携関係を持続し、最終的にはヱイラ国全体から支援を賜りたい。一方イオは、既に個人的欲求であるスミの保護には成功している。後は国からの命令に従いつつ、スミを無事に生還させるだけだ。
では、ヱイラ国の動向はというと……
研究所に向けて兵器を運搬していることをキャッチしたヱイラ国。
「首相、ネオジオ国がどうやら軍事演習を……」
補佐官が首相に眉間に皺を寄せながらペコペコお辞儀をする。手はなぜか拱いてる。
「なにぃ?事前連絡も無しにか?……万が一に備え、国境付近にスフィアと兵器等を配備しろ」
首相がいそいそと命令書を発行している。その時。
「もし、もしもし。こちらイオ一等兵」
「なんだ?」
「現在、研究所占拠に成功。その後、ネオジオ国は研究所抹消のため、兵を配備。このままではヱイラ国まで被害が及ぶ可能性があります」
「分かった。兵を至急研究所へ派遣する。ヱイラ国軍緊急戦闘配備!今正に奴らと雌雄を決する時だ!!!!!」
これを以て、分裂戦争以来の全面対決が決まった。
所戻って研究所。
約束を取り付けたイオは微笑みを浮かべ、勝利を確信した。実を言うと、イオはこの島におけるすべてのロボット製作者である、サヤカについて知っていたからだ。一応軍事機密なので、実の息子であるスミには真実は言えなかったが、ある特殊なコードを使うことにより、更なる強さを引き出すことが可能になるのである。
コード「ゼムテックス」。
金属軟化をある程度制御した上で、capsuleをスフィアに定着させ、両ロボットの良さを伸ばす超合金合体型決戦兵器と化す。
操縦者は1人から2人に増える。共同で作戦を練れたり、片方が負傷したなどの不測の事態を未然に防ぐことが出来る。
丁度良い。試してみよう。
「スミ、ちょっといいかな?」
イオはcapsule格納庫へと手招きすると、飼い馴らされた犬のように、その呼びかけに応えた。
<続く>