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capsule  作者: 天川 榎
後編 
25/28

第弐拾参話 駆け抜けて、永遠

第弐拾参話 

駆け抜けて、永遠



ネオジオ国

研究所

廊下



裸。

惨めだ。とっても惨めだ。おそらく今の姿を鏡で見てしまったら、恥ずかしさのあまり、気絶してしまうだろう。別に脱ぐ必要はなかったんじゃないか?いや、あの状況下では致し方ないことだ。だか、よく考えれば皮膚の擦れる音も……ダメだ!余計なことを考えるな。余り考え過ぎると相手に足元を(すく)われる。


ボクが記憶する限り、ブレーカーの在り処、若しくは発電機の在り処は、指令室から出てかなりの距離がある。確か途中の中央階段を下る……んだったっけ?てか、暗くて何処に階段があるのか全く確認できない。とりあえず、右手を壁際に当て、前へ進む。足音が心臓の鼓動を早くする。物音一つが恐怖に繋がる。

慎重に歩を進め、遂に大きなくぼみに辿り着く。ここがおそらく中央階段。

左足をくぼみに落とし、段差を確認。傍の手摺りを伝い、右足をそっと着地点を探るように伸ばし、無事に両足を一段下に落とすことが出来た。順調だ。この手順を繰り返せれば、予定通りに発電室に着くハズ……


そう思慮しているうちに、明かりが点いた。

ボクの裸体が白日の下に晒されることが、この瞬間確定した。

てかイオ、無事、かな?


*


所変わって、研究所の指令室。

電気系統が復旧し、レーダー等も復活。

バルケスとアンとヤンは、そこら辺の係員に取り押さえてもらった。どうやら、奴らは身分を調べたところ、元々はネオジオ国から亡命してきたという、所謂難民だった。この様子だと、おそらくあの忌々しいヘンリ現神とやらは、国民に無意識のうちに暗示をかけ、先程の鈴を用いてかけられた暗示プログラムを実行させるという、とんでもないものだった。つまり、国民全員が無意識のうちに戦闘員にさせることが可能ということである。

全く、国民をなんだと思ってんだ。奴隷か?


レーダーが復旧した頃には、ネオジオ国のロボット達は既に研究所に突入していた。

侵入する無数の兵士。無残にも破壊されていく施設。只彼らの予想を裏切ったことが一つだけあった。そう、capsuleとスフィアが何処にも見当たらないのである。

「一体どこへやったんだ?」

兵士たちは血眼で探す。もしかしたら、先の戦闘で相討ち?そんなはずは無い。既に将校達が、ロボットのパイロット達をこの目で確認したと言っているんだ。絶対にロボットはある。隠されている。例えば、ネオジオ国みたいに、地下とか?


ある兵士は、指令室に突入した。

そこには、がらんどうの部屋と、何の指示も与えられていない機械と、衣服。

逃げられた、とすぐさま察知し、どこか隠れられる場所を手当たり次第に探りを入れる。座席の下、壁、天井、衣服……、あ、あった。

丁度モニタの下辺りの床を何度か踵でノックすると、奥で音が反響して返ってくる。ここだ。空洞が有るのに違いない。そのことを直ちに師団に報告すると、指令が下り、何人か兵士を分けてもらい、突入の準備が整った。あとはここに仕掛けた爆弾を起爆させるだけ。手元の赤いリモートコントローラの白いボタンを、小刻みに震える手を左手で押さえ、慎重に親指に力を入れる。

これで、昇進……


そんな気の緩みをも見逃さなかったのは、全裸のスミであった。


*


全速力で指令室に戻る。

このままだと、イオが、アルが、危ない。

先程から、地鳴りがひどい。眩暈を起こしているんじゃないかと錯覚するほどに、地面が猛烈に駄々をこねている。もう既に敵襲にあっているんじゃないか?いや、もう確定事項だろう。あのヒゲダルマが攻め入るみたいなこと言ってた気がする。


研究者全員は地下の避難所シェルターに逃げ込んでいる。あとは、アル達が地下の防衛本部に無事移動を済ませていれば、この状況を打破することは容易だ。何故かって?もちろん、ロボット達を瞬時に地下に収納出来るシステム(要は格納庫直結の地下収容所がある)が整っているからだ!あとは、パイロットが……って、ボクしか今動けない。この状況は、まさに、窮地。どうしようもない。スフィアもあるが、capsuleも負けてはいない。一刻も早く向かわなければ、みんなの命が危ない!

ボクは、足に火がついたように、現場へ急行した。


現場というのは、指令室のことなのだが、既に、ネオジオ国の兵士に陣取られていた。

その光景を見るや否や、ボクの心臓は何処かへ飛んでいくような心地がした。

ダメだ。八方塞がりだ。しかも裸。服が無残にも部屋に残され、兵士たちに靴で凌辱を受けている。

ココで退くか、それとも意を決して飛び込むか。勇気が足りない。

もう兵士たちは着々と爆薬を地下通路への入り口に仕掛け、突入の準備を整えている。

マズイ。このままだとみんながやられる。どうしようどうしようどうしよう。


そんな時、アルの言葉が甦る。

「逃げるのか」


確かに今までは色んなキツイことから逃げ続けて来た。でも、もうそんな自分は捨て去る。

誰の為に今まで戦ってきた?何のために人を殺した?何でネオジオ国に戻って来た?何で今までアルに従ってきた?なんでイオのキスを受け入れた?


全部、イオだ。イオを救うため。イオを守るため。イオを思ったが為。

そうだ、ボクは、いや、オレは……


「イオが、好きだあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

肺に詰まっていた有りっ丈の空気を声帯で震わす。

もう兵士なんかに負ける気がしない。吹っ切れた。

拳を突き立て、スイッチを握っていた兵士の面にストレートを喰らわす。

そしてすかさず走り込み、爆弾を入り口から引きはがし、兵士の方へ両腕の遠心力を利用し、全力で振り切る。

「これでも喰らえ!!」

爆弾は宙を舞い、きれいな放物線を描き、兵士たちの頭上へ落下。


すさまじい轟音と共に、兵士は花と散った。


<終>












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