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capsule  作者: 天川 榎
後編 
18/28

第拾六話 拮抗

第拾六話


拮抗







ネオジオ国

capsule格納庫






ボクは、何か言葉を発そうとしたが、喉の奥につっかえてしまった。



ボクは、見捨てられたのか?それとも、突き放しても付いてくる程の忠誠心があるのか、試しているのか?


解が無い。

当の本人は扉の向こうへ消えてしまった。聞こうにも聞けない。


このまま立ち尽くしたままで良いのか?



……良いわけない。折角ここに戻って来たのに、何もしないなら戻って来た意味がない。


今置かれている状況もあまり知らないし、何しろcapsuleって一体何なのかも知りたい。

だったら、ここで立ち止まってはいけない。



「追いかけてみるか、アルの背中を」




こうしてボクは意を決し、格納庫を後にし、アルの足音の聞こえる方向へ歩を進めた。




――――――――――



ネオジオ国

研究開発室





無事にアルを眼前に捉えたボクは、追従し、ある扉の前にたどり着いた。



その扉に掲げられている標札には『いこいのプール』と書かれていた。


ちょっと待った。まさか、ここで融合実験をやるのか?もっと設備をマシにした方が良いんじゃないか?




色々と突っ込み満載だが、挙げればキリがないので、とりあえず中に入ることにした。


アルは、ボクにどんな顔を見せるのだろうか。突き返されるだけなのか……


逸る手を抑え、扉をゆっくりと開ける。


中から、塩素の匂いが漂ってくる。


「ごめんください」「……どうぞ、お入り」

気だるい返事が返ってきた。



部屋を見渡すと、だだっ広い空間の中心に、25メートルプールが1つ。その周りには、透明のビニール袋に包まれた機械群が陣取っている。


そして、プールを真剣に見つめるアルと、見知らぬ女性。




「どうした?早くこっちに来い」

アルが温かい笑顔を浮かべ、こちらに手招きする。



……とりあえず必要とされているようなので、一安心。




「あら、この子がcapsuleのパイロット?」

女性が、ボクを指差す。


すると、アルはボクの肩に手をかけ、自分の方に引き寄せた。


「そう!自慢のパイロット、スミだ」



そんな滑稽な紹介をされ、ボクは赤面した。女性は、その光景を鼻で笑っていた。



「で、早速だけど、capsuleとの融合実験をやりたいのだが」

アルは、ボクに計画表を手渡した。



そこには、こんな事が書かれていた。



①電子パルスを利用し、capsuleとリンク



②徐々にcapsuleと部分的に融合


③capsuleと完全融合



本当に実現出来るのか?

ヘスもこんな過程を経て生体融合したのか?


数々疑問は挙がるものの、やらないことには何も始まらない。ここに来た意味が無くなる。


「分かりました。早速始めましょう」

ボクの心に、迷いは無かった。


ボクに手渡されたのは、ゴーグル付きのヘルメット。そのヘルメットから、コードが何本も出ていて、サーバーと思わしき所に繋がっている。


プールには、ボクが使っていたcapsuleが沈んでいた。capsuleからコードがサーバーへと延びている。


サーバーを介して、ボクとcapsuleを同期させるということだ。


コックピットとは、一線を画したシステムと、アルは豪語していた。


「VR-X2、始動!」

という掛け声と共に、ボクの脳の中に、ぼやけた何かが入ってきた。





暗闇の中で、僕がボクに話しかける。



「久しぶり」

「またあったね」

「ところで君はボクに何を求めているんだ?」

「ボクと1つになって闘うんだ」

「なんで?」

「そうした方が良いから」

「理由が無いのか?」

「有るよ!融合すれば、この世界で負けることなんか無くなる」

「そんな力を手に入れて、どうする?」

「ヱイラ国とネオジオ国を破壊する」

「破壊した後どうする?」

「先住民がまた独立国家を自然発生的に作るだろう。そいつに手を貸して、ボクは偉くなるんだ」

「偉くなったところで、キミは何も変わらない」

「変わるさ!世界がより良くなる」

「キミは人の幸せについて考えたことある?」

「無い。考えた所で何になる」

「じゃあ、キミにそんな事言う資格なんてない」

「この世で幸せになれる者なんか、ほんの一握りしか居ないんだ」

「でももし、一人一人が独自の幸せの定義を掲げていたら?」


「そんなの、単なる気休めだ」

「分からず屋。キミは少々頭を冷やした方が良い」




その瞬間、頭に激痛が走った。


あまりの激痛に、涙が止まらなくなっていた。



「大丈夫か?スミ」

女性は、システムを緊急停止させ、アルはボクの方へ駆け寄った。





「幸せなんか、ありゃしないんだ……」捨て台詞を吐き、ボクは深い眠りについた。






〈終〉


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