第拾話 復讐の時、来たり
第拾話
復讐の時、来たり
ネオジオ国
capsule基地
食堂
森の木立が一斉に揺れる。
おそらくcapsuleが発進したのだろう。
「本当に良いのか?」
アルは、空をぼんやり眺めている。
「はい」
ボクは、無理やり笑顔を作り、その場をやり過ごした。
「無理するな」
アルはそう言い、ボクの肩に片腕を掛けてきた。
……ボクは、何をしているんだ。
本当に、これで良かったのか。
その瞬間、ボクの目から一筋の雫が頬を伝った。
後悔した。
あの時、ちゃんと真実を言えば良かったのに。
あの時、乗らない、なんて言わなきゃ良かったのに。
すると、ボクの様相に見かねたのか、アルはボクの左頬を、思いっきり右手でひっぱたいた。
「今更嘆いてどうするつもりだ!!!」
アルは、頬を叩いた右手をさすりながら、耳障りな程に叫んだ。
「あんたに何が分かるんだよ。ボク達を拉致して、いいように使って、挙げ句の果ては人殺しもやらせる。そんなアンタらがボク達の気持ちなんか……分かるハズがない!!」
「分かるさ」
「嘘だ!!」
アルは、その言葉一瞬戸惑った。だがキッパリと、こう言い切った。
「実を言うと、自分もこの国に拉致された一人だから」
その時、ボクは、アルが何を言っているのか、理解する事が出来なかった。
「5年前、ヱイラ国に妻と子供を置き去りにした、最低な人間さ」
ボクは、その話が記憶の中の一片に酷似していることに気づく。
ボクの昔の友達が話していた、お父さんが居なくなったとか言っていたような……
「……もしかして、子供の名前はヘスだった?」
「知っているのか、息子を!」
アルの顔は、瞬く間に明るくなった。
「幼なじみだから、アイツが引っ越すまで」
アルの目からは、感極まったのか、大粒の涙が止めどなく溢れ出ていた。
「……仲良かったのか?」
「いや、最後はケンカしちゃって。お別れの挨拶も出来なかった」
アルは、少し沈黙した後、
「実はさ、そのヘス、今日ココに拉致されてくるんだ」と、憂鬱気に呟いた。
本当なのか?
だったら、ココに着いたら……
ボクは、ヘスに何て謝れば良い?
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ヱイラ国
某所
荒廃した風景とは、まさにこのことを言うのだろう。
辺り一面にガレキが散らばり、所々が赤く染まっている。
建物という建物全てが壊され、原型を留めているものは皆無に等しい。
アルからの命令によると、この付近に新たなパイロットがいるとのことなのだが……
『アンタたち、こんなことして、何が楽しいの?!』
やかましい。
こちらの事情も知らないで。こっちだって、好きでやってるワケじゃないのに。
空は、いつの間にかどす黒くなり、雷雨の予感を漂わせる。
不思議と、気分も憂鬱になる。
私はいつまでこんなコトを続けなければならないのだろうか。ジョンは、いつになっても意識が戻ってこないし……
考え事をしていると、頭がボーっとする。悪い癖だ。
数分程捜索していると、レーダーに反応があった。
『え』
イオから、驚嘆が漏れる。
「どうした。なんか異常があったか?」
私の問いかけにも応じない。
私とイオの距離は、約30mであるが、障害物が多く、様子を容易に見ることは難しい。
建物の残骸を破壊し、イオの元へ向かった。
コンクリートの粉が舞い、視界が不明瞭になる。かろうじて、capsuleの影が見える程度だ。
イオのcapsuleが、目前まで近づいてきた。しかし、どうもいつもの様子とは違うのである。
「どうした」
『……スミに宜しくと伝えておけ』
明らかに声色が違う。別人に操られているのだろうか。
「アンタ一体誰なんだ?」
『capsuleとヘス、一体化した物体と言ったら分かるかな』
そんな馬鹿な!
capsuleと人間が生体融合?あり得ない。機械と人間が完全に、しかも拒絶反応無しに?
一体、この世界に何が起こっているというのか。私の理解の範囲を超えている事象が、いとも簡単に起こっている……
私は、これ以上考えることは無駄だと悟った。
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ネオジオ国
指令室
突然、capsuleからの現場の映像が途絶えた。
「おい、どうした!」
『イオに異常発生です。回収するハズのパイロットと……イオのcapsuleが生体融合しています』
司令部の全職員が凍りついた。
「とりあえず、コックピットから一旦出ろ。イオは何とかする」
アルは、部屋を飛び出し、コックピット室に急行した。
無事でいてくれ……
そう、ひたすら願うしかなかった。
コックピット室周辺は、やけに熱くなっていた。
内部は入ってみなければ分からないが、ミユは無事であることは既に先程確認出来ている。
問題は、イオである。操縦経験のあるスフィアとの互換性がcapsuleにはあるということで、駄々をこねたスミの代わりに出陣させた。
だが、こんなことになるとは誰が予想出来ただろうか。
アルは、コックピット室の扉を力強くノックする。
「おい、誰か返事しろ!!!」
その問いかけに、ミユは即座に答えたが、やはりイオの返事は無い。
扉から、ミユが出て来た。
その瞬間、気絶し倒れた。
「何があった!!」
アルは、ミユを両手でそっと抱きかかえ、必死に語りかける。
しかし、応答は一切無い。
「オイラがやったんさ」
アルがミユに夢中になっている所に、誰かが後ろに来ている。
聞き覚えのある声。
………………まさか!!
「久しぶりだね、お父さん」
両手両足の先の皮膚が2cm程隆起し、体はcapsuleのように白く染まり、顔も被りモノしたかのように、あの一つ目がハッキリと見える。
アルは、言葉を失ったまま、只呆然とその場に立ち尽くしていた。
〈終〉
次回予告
capsuleと一体化したヘス。気を失ったまま何も語らないミユとイオ。久し振りの再会を喜べないアル。
そして、過去に因縁を持つスミ。
全ての点が一つの線になった時、何が起こるというのだろうか?
次回
own cake
ハッピーバースデー、トゥーユー。