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三単語で書く短編小説集

夏祭り

作者: 雨カラス

三つの指定された単語で書き上げました。

もしよかったら推測しながら読んでみてください。

 夏祭り後の駅の駅前のロータリーは人で埋め尽くされていた。


「心配だ」


 俺は思わず口に出してしまう。

 夏祭りに彼女と二人できていたのだが花火を見終わった後、最寄りの駅へ行こうと下が人の波に飲まれてしまい彼女と離れてしまった。

 電話を掛けようとするも電波も混み合っていて使えない。

 かと言って人混みの中から抜け出せるわけでもなく。

 俺は途方に暮れる。

 駅の改札前まで来ると四つしかない改札に何千倍の人間が押し寄せるため人と人との間隔が詰まってくる。


「くそ」


 どうしよう。

 このままだとアイツに会えない。

 そう考えていると俺の腰あたりに何かがぶつかった。


「痛って」


 俺は下に目をやると小学低学年の男の子が今にも泣きそうな目で俺を見ている。


「ごめんなさい」

「大丈夫だよ」


 泣かせないように優しく接する。

 その男の子は謝った後キョロキョロしだした。

 もしかして親がいないのか?


「お父さんとお母さんは?」

「うっ。うえーん」


 俺の行った言葉が引き金となったらしく男の子は泣き出した。

 本当に親とはぐれたらしい。

 仕方ない。

 俺は泣く男の子をひょいと持ち上げ、人混みから抜け出してこの子の親を探すことにした。


「すいませーん通ります!

 大丈夫。俺も一緒に探すから」


 男の子の背中をさすりながら人の波と逆の方へと歩き出す。

 ある程度歩くと、コンビニの近くにあった出店を見つけた。

 俺は男の子を元気になってもらおうとかき氷を買うことにした。


「すいません。かき氷一つ」

「何味がいいかい?」

「ねえ君、何味がいい?」

「……コーラ」

「じゃあコーラ一つ」

「はいよ」


 出店のおじさんは手際よくかき氷を作り、上からシロップをかけた。


「ほら食べな」


 俺は男の子を降ろしかき氷を手渡した。


「ありがとう」

「どういたしまして」

「うん」


 男の子はさっきより元気になったがまだ本調子ではない。


「俺もさ彼女とはぐれちゃって泣きたいんだけど男だからさ泣いたらダサいだろ?」

「……」

「だから俺はさ、ニコニコしようと思う。ほらニッー!」


 俺は今世紀最大の変顔を作る。

 それを見た男の子は最初は驚いていたが次第に笑い始めた。


「フフッ。アハハハ!」


 俺は続けてさっきと負けて劣らない変顔を作る。


「アハハハ。おっかしい!」

「よし元気になったな!」

「あ!ヨシヒロ!」

「あ、お母さん!」


 男の子の母親が現れると男の子は母親の方へ走っていった。


「すいません。ありがとうございます」

「いえいえ。じゃあバイバイ」

「うん。バイバイ!」


 男の子とその母親は手をつないで歩き出した。


「よし帰るか!」


 俺は親とはぐれて泣いた男の子を救ったからか心が晴れ晴れとしていた。

 俺、めっちゃ聖人じゃね?泣いた男の子を救うなんて。

 駅の方へとまた歩き出した。


「あれ、俺なんか忘れてる気がする。……ま、いっか」


 その後、はぐれていた彼女が泣きながら電話をかけてきた。


「駅」「心配」「かき氷」

分かりましたか?


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