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7.誓約

「……あれ、ここどこ……?……っ!私、なんで生きて……!」


白髪紅目の少女、ルナリは見知らぬ場所で目を覚ました。だんだんと意識が冴えていくにつれ、自分が置かれていた状況、そして自らの恨みを思い出していく。彼女が思わず身体を動かそうとすると、自分の身体が鉛のように重いことに気づいた。


「……っ!あれ、なんで……?」

「目が覚めたか。治癒魔法の影響だ。治癒魔法は対象の自己治癒力を増幅するもの。君の体力を使って傷を癒したのだ」

「だ、誰……?って、角……?」


ルナリの側に、高い品格を感じさせる佇まいの美しい女性が立っていた。そして、その女性の象徴的な角を見て、ルナリは彼女が魔族であると理解する。ちなみに、ルナリが本物の魔族を見るのは初めてである。


「お姉さん、魔族、なんですね……」

「あぁ……あまり驚かないのだな。まぁ、いい……私はシンシー。ここで1人魔王をしている」

「魔王、ですか……すごいんですね……」


シンシーは眼前の少女の反応が拍子抜けするほど素っ気ないのを見て、少し困惑する。以前彼女の角を見た人間達は、腰を抜かすか剣を抜くかのどちらかだったからだ。それに対して目の前の少女から汲み取れる感情は、諦観。これから何が起ころうと、自分には関係ない、どうでもいい。そんなところだろうか、とシンシーは推察する。


「それで、その魔王様が、どうして私なんか助けたんですか?」

「……興味だよ。それなりの勇者が大技を使ってまでただの少女である君1人を仕留めようとしたんだ。どう考えても異常だろう?」

「ただの少女……やっぱりそうなんですよね……」


シンシーの言葉を聞いて、ルナリの表情に影が落ちる。


「……違うのか?」

「……教典に、邪神は白い髪に紅い目で描かれているらしくて……私は邪神の忌み子だと」

「そんなバカな話が……」


バカげた話。シンシーはそうとしか思えなかったが、話を聞いていくうちにこの少女が村人達から虐げられ、晒し者にされていたのは理由をこじつけて村人の不満の捌け口にされていたということを理解した。同時に、あの村の人間達の醜悪さも。


(そんなバカげた話があってたまるか!相手は同じ種族の、無力な少女だぞ……!)


「その、なんだ……かける言葉が見つからないが……君、名前はなんというんだ?」

「……ルナリ、です……」

「ではルナリ……今から君にとても重要なことを伝える、いいな?」

「は、はい……?」

「いいか?君を助ける為に、君に邪神の加護を与えた。勝手にやった事は……済まないと思っている。それしか方法がなかったんだ。分かってくれ……」


そう言って、シンシーはルナリの表情を窺う。最早心配していなかったが、当初懸念していた拒絶して発狂するなんてことはなさそうだ。それどころか……シンシーにはルナリの瞳に少しずつ光が戻っていくように感じた。……仄暗い、歪んだ光が。


「それって、私が魔王になったって事ですか?」

「……そういうことになるな」

「ということは、今の私には力があるんですね?」

「……?あ、あぁ。かなりの適正を持っていたから、相当強力な魂装を出せるだろう」


それを聞いたルナリの顔はさっきまでの諦観の感情が抜け落ち、代わりに狂喜に震えた。


「ルナリ……?一体どうし……」

「シンシー様。貴女に感謝します。いえ、言葉では足りませんね……生涯の忠誠を誓います。その、代わりといってはなんですが……」


「人間を、皆殺しにさせてください」


優しき魔王は、少女の復讐の誓いに哀れみを覚える。助け合うはずだった同族達を殺し尽くすというのだ。ただ、容貌が他人と少し違うというだけで。


「いいだろう。少なくとも君には、それをする権利がある」

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