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27.真価



「な……!」


平凡な冒険者。そんな男は仲間が一瞬にして死体と化した現実を受け入れることができなかった。いや、誰もがその光景を信じることができなかった。


「ば、化け物がぁぁぁぁ……!あ」


一人が蛮勇に駆られ飛び出し、そして肉塊に変わる。復讐鬼は一切表情を変えない。ただ彼らを見るのみだ。


「お前たち!そんな雑魚に狼狽るなぁ!」


皆が固まる中で、声を張り上げる者が一人。全快したガイナスである。


彼らはガイナスの号令に顔を見合わせる。それでも、ガイナスは実力だけは認められていた。故に、彼らも闘志を取り戻し始める。


「すまない!遅れた!雷の勇者が来たぞ!」

「……土の勇者、参上した」


更に、続々と名の知れた勇者が到着する。見れば、魔法が使える教会の手の者も多くが集結していた。


「ゴーレムは我々が遠距離から対処します!皆様は復讐鬼に集中を!」


元々、ここに集まっているのは低級の魔法を無効化できるレベルを持った者達。すぐに陣形を組み、ルナリを囲んだ。


真っ先に飛び出すは、やはりガイナス。それに続くように、勇敢な冒険者が雄叫びを上げる。


赤い槍と黒い剣、双方がぶつかり合い激しい火花を散らす。ガイナスはそのまま押し切ろうと力を込める。が、ルナリは違った。


一歩踏み込んだルナリはそのままガイナスの顎を強化された脚力で蹴り上げ、一周半。その足で背後から迫っていた冒険者を踏みつけ、飛び上がる。


空中でルナリが黒剣を振るうと、剣撃が黒い波動となって冒険者達を襲う。ガイナスは辛うじて防いだが、残るは全員両断された。


「な……!」

「問題ない!今が絶好のチャンスだ!」


声を上げたのは、雷の勇者。今のルナリは空中で剣を振った後。ロクな回避行動は取れない。チャンスというのは事実だ。


「《ライトニング・ハンマー》!」


雷の勇者が放ったのは、魂装の能力を使用した大技の雷撃。頑強な建造物すらも破壊する高威力の技だ。


「……っ!な、なんで……!?」


……だが、その雷撃はルナリがルナリに直撃する寸前、まるで何もなかったかのようにかき消される。この技に絶対の自信を持っていた雷の勇者は何が起きたのか分からず、放心する。


何が起こったのか、ルナリを除く誰もが理解していなかったが、未だに隠れ潜んでいるジストは捉えることができていた。


(ありゃ……土の魔法か……?だとしたら、合わせて隠蔽魔法も使われてるな……)


電撃を伴う攻撃に対する代表的な対応策が土の魔法である。すぐに土の魔法で防げば、ダメージを大幅に防げるのだ。とはいえ、相手の放つ魔法が事前に分かっていなければこの対応策は使えない上、あの勇者の雷撃に関してはそれすら焼き尽くす正真正銘の必殺技だ。


(あの白髪じゃねぇよな。……この催眠魔法と同じ使い手か。……はは、とんでもねー化け物だ。あれ見てまだ戦おうとする奴は全員バカだね)


ジストはそんなことを考え、さらに息を潜める。このままやり過ごす魂胆だ。そして、そんな彼の見解は的中していた。


(シンシー様……感謝します……!)


シンシーは姿を見せなくとも、堅実にルナリのサポートに徹していた。『廻典ノトリアス』の力で、支援魔法と防御魔法をルナリにかけているのだ。


「……甘い。《ランド・バリエード》」


だが、冒険者達も全員呆けているわけではない。土の勇者が魂装の能力を使用する。ルナリの着地点の地形が蠢き、凶悪な針山を形成した。


それを目視したルナリは身体を捻り、針山に黒剣を突き立てる。そして、口を歪めて嗤う。


獄絡怨土ブルトガング・アブゾーブ


その瞬間、誰もが寒気を感じ、足を竦ませる。見れば、大地が黒く変色し、泥のように蠢く。そして、屍が、戦士達の死体が溶けていく。


無念を怨に。屍を贄に。歪められた力がルナリの『怨剣ブルドガング』に集っていく。


「ば、化け物……!い、祈りよ炎に!セイントファイア!」


自身の恐怖を紛らわすためなのか、初歩の魔法を苦し紛れに使う見習いの聖職者。それに続いて、取り乱した魔法が使える人間は揃って無造作に魔法を打ちまくる。冷静な者達の静止も彼らの耳には入っていなかった。


彼らの弱い魔法はしかし、その全てを悍しい黒い泥に飲み込まれる。


そして次の瞬間。放たれた魔法と同じものが泥から飛び出、放った者に直撃する。そのうち十数人が、何が起こったのかも分からずに絶命した。


そんな光景を見て、勇者達や他の強者は緊張を最大限に引き上げる。流石のガイナスも呆気に取られ、今更命の危機を感じ始めた。


……『怨剣ブルドガング』の真の能力。自分や周りに漂う怨念を汲み取り力とし、受けた攻撃と同じか、強化された攻撃を繰り出す。


仕返し。復讐。それを為すルナリの心の具現化である。



ちなみにサブタイはその場で考えています。一々覚えてないのでいつ被ってもおかしくありません。

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