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25.集結



「……なんだぁこりゃ……」


黒フードの勇者、ジストは都市の異様な光景に息を呑んだ。大路地の中心を堂々と高レベルのゴーレムが進んでいた。にもかかわらず、住人達は逃げも騒ぎもしない。というか、異常を認知できていない。


「認識阻害系の広範囲催眠魔法か……レベルは低いが、出所がわからんと解除も無理……あっ、おい!ガイナス!」

「ふん、こんな雑魚共、俺の敵じゃない……俺は強いんだぁぁぁぁ!《ボルカニック・ホーン》!」


苛立ちをぶつけたかったのか、感情のままに飛び出すガイナス。すると、ゴーレム達が一斉にこちらを向く。正気の人間に反応するのか、ジストまでもが標的にされた。


本来、ゴーレムに炎熱の攻撃は効果が薄いのだが、それすらも無視する圧倒的な火力。ガイナスの槍の炎はゴーレム一体の外装を完全に焼き尽くす。だが。


「っ!ぐぁっ!」


直後、倒されたゴーレムの魔核……いわゆる心臓部が爆発。何も警戒していなかったガイナスは容赦なく吹き飛ばされる。もろに食らってしまったガイナスはしばらく動けないだろう。倒れたガイナスにゴーレムが殺到する。


「ちっ!『疾刃コルド』!《スピード・シフト》!」


見かねたジストは魂装を顕現、強化された脚力でガイナスを回収し、ゴーレムを一切相手にせず退避する。ジストが見たところ、命に別状はなく、それなりの回復魔法をかければすぐに動けると見た。


「にしても、なんなんだ……この先には……教会か。てことは例の復讐鬼絡みか……?」


催眠魔法のせいで門番が機能していなかったため、対応が遅れていたが続々と戦える者達が集まってくる。


「ゴーレムか。おしお前らァ!ギルドが特別褒賞を出すって言ってんだ!狩り尽くすぞ!」

「「「おぉぉぉぉぉ!」」」

「騎士団総員、民を守る為に立ち上がれ!」

「「「はっ!」」」


近くに屯所がある騎士団、近くにいた冒険者。時が経てばこの広い都市中から戦力が揃うだろう。


「私は教会のシスターです!怪我のある人はこちらへ!」

「お、じゃあこいつ頼むわ」

「ぐっ……!」


回復魔法を使えるらしい女性の足下に、乱雑にガイナスを投げ捨てるジスト。


「こ、この傷は……」

「無警戒なこいつが悪い……あのゴーレム、特別製らしくてな。ぶっ壊れそうになると魔核が爆発する。警戒するようあの連中に言ってくれないか?」

「ほ、本当ですか!?分かりました!」


ガイナスを手際よく回復しながら情報を共有するシスターを尻目に路地の隅の方に移動するジスト。


「悪いな。俺は目立ちたくないんでな……」


そう呟き、ジストは集団から気づかれずに離れ、近くの家屋に侵入、潜伏した。ジストとしては、相手が強敵で自分が怠け者というのを抜きにしたとしても、どうしても戦う気が起きなかったのだ。


(何の罪もねぇガキが死にそうだっつうんなら少しはやる気も出るんだが……今回の相手はそこら辺の配慮もしっかりしてる。おまけに標的はあのゴミの巣窟の教会ときた。戦う理由なんざ一切ないね……)


そんなことを考えながら、ジストは外の状況を覗き見する。ガイナスの失敗を活かし、戦える者はトドメを遠距離攻撃で済ませるなど工夫しながら戦い、優勢気味だ。対処を誤らなければ、大した敵ではない……が。


「……あれは」


突如、戦場のど真ん中に降り立つ影。黒い剣を持った、白髪紅目の少女。


あまりに場違いな風貌だが、その目には確かな殺気が孕んでいた。


「な、なんだあれ……子供……」

「バカ!ありゃ例の復讐鬼だ!」

「あ、あの村がいくつもやられたっていう……」

「け、警戒!警戒だぁ!」


噂の強敵の出現に気を引き締める戦士達。だが、その警戒も虚しく。


次の瞬間、物言わぬ屍が三つ増えた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新が続いている点。   内容は、ブックマークして読み続けているぐらいには◎(◎かよ!)   読者は確かに存在している模様です。 [一言] どうやったら和解出来るのか、全く予想も付きません…
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