22.孤高
天聖の勇者ミスナ・エルゲイルは苛立ち半分で城塞都市の街道を歩いていた。自分で何も考えられない傀儡の王。女神を盾に無茶ばかり言う教会。良ければ嫁に、悪ければ奴隷か何かにさせようとする貴族共。度重なるストレスで彼女は勇者になったことを後悔し始めている。実際、疲れと不機嫌がかなり顔に出ていた。周りには凛々しいと思われているが。
やがて、ミスナは今回の召集場所である都市の中心の宮殿に到着した。教会の息がかかった貴族が貸し出している。
ミスナはまるで乗り気がしなかったが、仕方なく足を踏み入れようとする。だが、そんな彼女の道を塞ぐ男がいた。
「お前が天聖の勇者か……ほう……」
男の不躾な目線に晒されるミスナ。慣れているとはいえ、断じて気持ちのいいものではない。だが、不愉快であったとしてもミスナは無駄なエネルギーをこの男に割く気にはならなかった。
「あぁ、すまない。当然知っているだろうが俺は炎の勇者、ガイ……」
「知らん。失せろ」
ミスナは男を乱雑に払い除け、前へと進む。予想もしていなかった行為をされて、ガイナスは一瞬呆けたが、すぐに顔を屈辱に歪める。
「なっ……き、貴様!」
「誰だか知らんが、お前も勇者なら急げよ。もうすぐ時間だからな」
その言葉に、ガイナスは怒りで顔を真っ赤にするが、黒フードの男に止められる。そんなことをしている間にミスナは先へ行ってしまった。
「あ、あの女ぁ……!」
「落ち着けよ。ほら、天聖サマの言う通りもう時間だぜ?置いてくぞ」
そして、宮殿の一室にて会議が始まる。十数人の勇者、教会関係者、騎士団幹部、王の使者が集った。議題はもちろん、現在一番の危険分子たる『黒剣の復讐鬼』である。
開幕早々、騎士団幹部が声を荒げた。
「話によれば、かの者が復讐などと村を襲っているのは教会の不当な対応に端を発すると聞く!どう責任を取るつもりなのだ!」
「わ、我々は適切な対応を取ったまでです!これまでの所業を見ればアレが邪神に属する者であるのは明らかです!」
教会に対する責任追及を強める騎士団。この二つのバランスを取る役割を持つのは王もとい貴族だ。この場でそれに属する王の使いの男は胃を痛めながら話題を変えようとする。
「お二人とも!い、今は事態に対処する術を練りましょう!天聖殿はどう思われますか?」
男は強引に本来の議題に修正し、話の流れをミスナに託した。
「放っておけば無辜の民が傷つけられるのは事実。即刻対処すべきだろう」
腐った教会や貴族がどうなろうとどうでもいいが、とミスナは心の中で付け足し、毅然とした態度で言った。そして、次にガイナスが口を開く。
「他の奴らは知らんが、この俺がいるんだ。対処などすぐに終わるだろう。……そこの天聖も実際は大したことなさそうだしな」
ガイナスは大きな自信と共に、あからさまな嫌みを言った。だが、ミスナはなんの反応も示さない。その事実が、ガイナスを更にイラつかせた。
また、そんなガイナスを他の勇者や会議の面々は冷めた目で見ていた。
そして、黒フードの勇者も小声で一言。
「うわー、自惚れに腹いせかよ。救えねー」
「?おい、何か言ったか?」
「何も言ってねーよ」
あっさりと誤魔化されるガイナス。彼は隠された他人の悪意には疎い人間だった。そして、当のミスナはといえば。
(あー、今寝たらバレなかったりしないかなぁ。バレるよなぁ)
連日の疲れから来る眠気との格闘で話を聞いていなかった。結果的に、ガイナスは誰からも相手にされていなかった。本人は気づいていないが。
そして、議会は進み、結論が出る。
「とにかく!これだけの勇者が揃ったのです!復讐鬼など簡単に消せるでしょう!」
作戦はこうである。近隣の村全てを遠見の魔法で監視し続け、異常が起きた瞬間に全員で向かうというもの。あまりに強引が過ぎるとミスナは感じたが、彼女は議論にほとんど参加していなかったし、ここにいるのは無能ばかりだと思い直して黙ったままでいた。
そんなミスナの姿が、周りには自信に裏付けられた余裕に見える。そんな光景を見たガイナスは大きな苛立ちを覚える。
(ミスナ・エルゲイル……!俺など眼中にないと……本気で……!)
ガイナスは感情を隠すのは不得手だ。その苛立ちは誰が見ても分かるものだった。
(あーあ、こりゃガイナスの野郎、そろそろマジで破滅とかしそうだなぁ)
そして、黒フードの勇者……ジストは内心ガイナスに見切りをつけた。
やぁ。読者の皆様……がいるのかどうかわからないが、残念なお知らせがある。
ストック切れた(。∀°)
更新頻度ぴんち
タスケテ
あっ評価待ってます⭐︎2とかでいいです。
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