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12.真実

「それで、なぜ彼に奇跡を?」

「この少年に興味があった。それだけだが」

「そんな理由で……!」


信じられない、といった風にラキエルはセヴェルを非難の目で睨み、ケネルの方を見た。


「私はラキエル。巻き込んでしまい、申し訳もありません」

「いや、僕は……生き返らせてもらっただけといいますか……」

「……そうでしたね。この場合、責められるべきはセヴェルです。みだりに命を扱えばバランスを崩しかねないというのに……!」


そういうと、ラキエルは再びセヴェルを睨む。すると、セヴェルが涼しげな顔で口を開いた。


「どうせ処分待ちの世界だ。今更人間1人の命など大したことではないだろう。主へ許可も取ったしな」

「あの方は……全く……」

「それに、だ。その少年……ケネルは死にたいらしいぞ?」

「え、そうなのですか?……いや、しかし……与えた命を再び奪うなどと……なんて横暴な」


2人の口論は続く。知らない単語も交えて話が進み、蚊帳の外に置かれていたケネルは居た堪れなくなり、思わず声を出す。


「あ、あの!」

「なんだ少年」

「お二人は何者なんですか……?一体どうやって僕を……」

「……」


ケネルの訴えを聞き、ラキエルはセヴェルに目配せする。


「構わないだろう。秘匿命令は出ていない」

「……そうですか。では、まず……そうですね……ケネル君は女神と邪神、と呼ばれる存在についてはどのくらい知っていますか?」

「えっと……人間に祝福を与えて勇者にするのが女神で……魔族に祝福を与えて魔王にするのが邪神で……それで、この二つは争っていて……」


そこまで言って、ケネルは言い淀む。もともと、彼は教会の教えに詳しくない。真面目に聞いたのは幼い頃だけだったし、ルナリと交流するようになって教会に反感を抱いてからは聞き流していた。


「その……すいません」

「いえ、むしろおかしな先入観を持っていなくて良かったです。いいですか?ケネル君の言うようにこの世界には二柱の神がいます。ですが、この世界の外……他の異世界も合わせれば神はもっと沢山いるのです」

「異世界、ですか……?」

「100、まではいかないが数十の世界があってな。この世界もその一つではあるのだが……」

「えぇ、この世界はだけは少し事情が異なります。本来、十数の神がそれら全ての世界を共同で管理しているのですが、この世界だけは女神と邪神……アーリマ神とフラマズ神の二柱の神に放任されています」


女神の名がアーリマ。邪神の名がフラマズ。他にも神は存在していて、他にも世界が数十ある。しかし、この世界は他の世界と違い、アーリマとフラマズによってのみ管理されている。


……ケネルは押し寄せる情報の濁流をなんとか整理し、理解して飲み込む。驚かされてばかりだが、不思議と疑う気にはなれなかった。詐欺師に人を生き返らせることはできないだろう。


「かつてアーリマ神とフラマズ神は罪……というより、問題を起こしてばかりいてな。その罰として、この世界に閉じ込められているのだ」

「なるほど……えっと、それでお二人はどういう……?」

「私達は異世界間の問題を解決する《外神》イオリ様の部隊所属の俯瞰界並列干渉部隊所属のAクラスチーム……」

「え……?はい……?」


今までなんとかついて行ったものの、今回ばかりはケネルの処理が追いつかない。そんな様子を見たラキエルは、伝わるように言い換えることにする。


「あー……ではなくて……そうですね、天の使いで……そう、天使です」




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