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開発日記(1)

エルフのラボの翻訳室。


今日も、主任とタイラは2人で検討会を開いていた。2人が議題としているのは、仮想環境で移植できそうなゲームについてだ。


前回は、ドラゴンファンタジーというゲームをこの世界の仮想環境に移植して失敗をした。その失敗の原因は、ずばり鎧の重量だった。


ごく最初の頃に出てくる皮の鎧などはよかったのだが、鉄と鋼とフルプレートの鎧などは20キロを余裕で越えてしまい、プレイヤーの自分たちが身動きが厳しい状態になってしまっていた。


通常のゲームでは鎧の装備を変えても「すばやさ」が落ちる事などあまりないかもしれないが、実際にフルダイブの仮想環境だと違う。


敵はどんどん強くなるというのに、自分たちは動けなくなっていく。しかも、敵はどんどん大きくもなっていき、徐々に無理ゲーとなってしまった。


そして、フルプレートの鎧を着よう物なら、最初の頃に出てきたモンスターを追いかけるのもやっとだ。


レベルが上がって力が上がったとしても、鎧の重量を感じなくなる訳ではない。


力が上がり、重たい物を持ち上げる事が可能になっても、やっぱり重たい物は重たいし、それをずっと着たままで移動するのとなると、それだけで体力が減っていく。

ゲームなどでは、よく時間とともに体力を回復したりする物などもあるが、実際にはどんどん体力が奪われていく。

実際には水の精霊が疲れを取ってくれているのだが、精神的にきつい。この世界の仮想環境はリアルすぎるのだ。もう少し、リアルじゃなくていい。


RPG系のゲームはおそらくすべて途中から無理ゲーとなる。

アクション系のゲームなんてのは最初から無理ゲーだ。

仮想環境でのゲームは、はっきり言って運動能力が優れた奴が絶対有利だ。

コントローラーを使ってやるから、運動音痴な人でも楽しめるのであり、フルダイブの仮想環境は運動音痴ではどうにもできない。


主任もタイラも、どちらかといえば運動音痴な部類に入る。

キャラクターが激しく動くゲームは2人は無理。

その結論がでるのには時間はそんなにかからなかった。


では、いったいどのようなゲームであれば、この仮想環境で楽しめるのか。それがなかなか良いのがない。


ちなみに18禁系のゲームは、この世界に持ち込みする事ができないので論外である。


「パズルゲームは?」


「無理だろ?落ちて来る物を動かしたりとか、あれはどう考えてもコントローラーを使った方が楽だ。

 それに、あれは全体図が見えながらやるゲームだ。

 仮想環境に持ち込んでも、テレビでやるのと何も変わらん」


「シミュレーションゲーム、アドベンチャーゲーム、アクションゲーム、シューティングゲーム...シミュレーションゲームもちょっと厳しいですかね」


「シミュレーションゲームもパズルゲームと同じだな。

 マップって概念がある物は、仮想環境には不向きだな」


「アドベンチャーゲームで、脱出系とか、

 シューティングゲームで、敵をガンガン打つとか、

 プレイヤー視線で、なおかつプレイヤーが動いてやる物がいいんですかね」


「そうだな。アクションゲーム系は、高くジャンプしたり、高い所から飛び降りたりとか普通に無理だし、格闘系なんて、殴られると実際に痛い思いをするから、仮想環境には不向きだ」


「ギャルゲーはただ選択肢を選んで行くだけですもんね。あれだったら、ただのVRと何も変わらないですし、この世界の仮想環境を利用するまでもないですよね」


「女の子たちって言っても2次元だしな。

 2次元ものはやっぱりテレビの画面の中でみるのが1番だ。


 デッシーの反射神経を鍛えるって理由もできるシューティング系か、集中力を鍛えるって理由で...メタルギラとか難しいか?」


「メタルギラですか・・・あれ自分やった事が無いんですよね」


「あれだったら、脱出もシューティングも兼ね備えているし、

 エルフの賢者様にデッシーの強化の為って言ったら、許可が下りそうじゃないか?」


男たちは笑みをこぼす。

『賢者の弟子の強化』というちゃんとした理由があれば、

最大の壁となるエルフの賢者の許可が下りそうだからだ。


「でも、主任はクリア経験ってあるんですか?」


「俺もない。オーガやリック、ハルとかだったら経験あるんじゃないか?」


「彼らに協力をしてもらって、ゲームを解析して...いけるかもしれませんね」


「よし、それじゃあみんなに確認をしてゲームの解析を始めよう」


「了解です」








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


主任とタイラはオーガとリックの手伝ってもらい、「メタルギラ」の仮想環境への移植を見事に達成した。


そして...


「デッシー、今日は俺たちの世界のゲームを使っておまえを特訓してやる。みんなで強力して作ったゲーム...いや特訓環境だから存分に楽しめ」


「そのゲームって何ですか?」


「メタルギラだ!これだったら、この世界の仮想環境をフルに使える!そして、おまえの特訓にもなる」


賢者の弟子は、深いため息をつく。


「それ、全シリーズクリア済みなんですけど...」


「えっ?!・・・」


仮想環境に入った賢者の弟子は迷いなく、アイテムをゲットして敵を倒してストーリーを進めていく。


動きに迷いなく、トラップもすべて交わして...


「どうやら、このゲームを私の物は知っていたみたいね」


「ですね... なんか自分たちが知らないアイテムまでゲットしちゃってますもんね...」



ゲーム移植にかかった時間は、数週間。

賢者の弟子がクリアにかかった時間は、数時間。


脱出系のゲームは、クリア経験のある人間にはただの事務的作業となる事を主任は知った。





「やっぱり、この世界でオリジナルゲーム...

 賢者様たちを使ったギャルゲーを俺たちで作るしかない!」






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