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異世界転送

みなさんは異世界という物をご存じだろうか?


よくアニメや漫画、ライトノベルなんかにも出てくるこことは違った世界。それが異世界だ。

多くの異世界は、この世界とは違った年代。違った様式の建物。そして違った種族が暮らしている。

そして、この世界で想像される異世界は、基本的にその世界に飛んだ人間が活躍する物ばかり。


そう人間や人間だった物を主人公にした想像物ばかりなのだ。

それは、はっきり行ってしまうと読み手が感情移入しやすいからというのと、何より商品となるからだろう。


では、果たして本当にそんな異世界なんてものがあるのだろうか?今回は、この私。異世界では『エルフの賢者の研究所の翻訳主任』と呼ばれている。この私の経験をお話しよう。


まず、異世界へはどうやって行くのか?


もっとも一般的な方法は身体から魂の接続を解除して、物質世界から精神世界にまず移動し、異世界の物質世界で用意された身体と魂を接続する方法だ。


この方法を利用した場合は、元の世界と異世界の両方の世界で身体を持ち、同じ人格や心を持つ事になる。


ただし、身体に残された記憶などの情報に関しては異世界には残念ながら転送されるような事はない。


その為、異世界に旅立つ時は記憶をデータとしてまず向こうの身体に転送をおこなう。


ようは、元の世界と異世界の身体で脳に入ったデータのコピーをおこなう訳だ。そして、魂の接続を異世界の身体に接続する。


わかりやすく例えるなら、元の世界の身体を今まで使っていた携帯電話とし、異世界の身体を新しい携帯電話と考えると良いだろう。機種変更の時に、古い携帯電話のデータを新しい携帯電話に転送すれば、新しい携帯電話でも古い携帯電話のデータをみる事ができるだろう。後は、どちらの携帯電話を利用するかを選択するだけの話となる。


この他の異世界への移動方法は、物質転送という方法だ。

ただし、これは異世界から来た者のみの利用が許可されている。

その理由は、異世界の人間は「病気」や「ウィルス」を恐れているからである。


世界が違えば、ウィルスや病気なども異なってくる。我々の世界では一般的で病院に行けばすぐに治る病気でも、異世界では治癒が不可能という事もある。


その為、物質転送は限られた異世界から来た者のみが許可され、我々の世界の人間の身体が直接異世界に行くなんて事はまずないと考えた方がよいだろう。

この魂のみか身体もセットか、異世界に行くのはこの2つのどちらかだと言う事だ。


「主任、すいません。尺がとりすぎちゃってるんで、もう少し短めでお願いできますか?」


「転送の説明とか、もう少し省いちゃっていいんじゃないですかね?主任は説明したがりなんで、わからなくはないんすけど、このままだと1時間の枠におさまんないですよ」


カメラを構えた男が、語っていた白衣を着た男(主任)に台本を見せながら話をする。


「取り直すのも時間がもったいないんで、もうカットしちゃいましょう」


「おまえら、もう少し俺に語らせてくれ。後少し!なっ。記憶を持ち帰れない所まで」


「・・・いいっすよ。ちょい早めでお願いしますよ」


実はこの異世界には多くの人間が来ている。なのに、我々の世界では異世界の存在はテレビの本の中だけとなってしまう。


それはなぜか?


異世界で利用している身体の記憶を、我々の元の世界の身体には転送されないからなのだ。


もしかしたら、君たちも本当はこの異世界に来ているのかもしれない。しかし、君たちもそして我々も元の世界の身体に戻ってしまうと記憶が一切無いために、異世界に行っていた事すら思い出せない。


異世界で、許可さえ降りれば異世界の身体の記憶も元の世界の身体に転送される事になるのだが、現在の所はその許可が下りる予定はない。


残念だ。実に残念だ。異世界の技術や科学を持って帰る事さえできれば。。。


「主任、ながいっす」


「これ本編どんどん短くしないと収まらないパターンですよ」


わかった。わかったよ。



これは、異世界で暮らすとある科学者の話だ。とても優秀で、皆からも愛される科学者の...


「賢者様、おはようございます」


部屋に入ってきた女性に、カメラを持っていた男は挨拶をして頭を下げる。


「みんな、何やってるの?」


女性は、カメラを持った男に聞く。


「いや、主任が自主制作映画を作ろうって・・・」


「ふぅ〜ん」


女性は薄笑いを浮かべて主任を見る。


「そんな事をしている暇があるのね?」


主任の顔はどんどんと青ざめていく。女性は何もない空中に魔法陣を描くと、その魔法陣から沢山の本が落ちてくる。沢山の本は主任をどんどん埋めていき、腰の所でようやく止まる。


「これ今日の分ね」


女性は笑みをこぼして部屋からでていく。


部屋の中には山積みとなった本。魂の抜けた主任。カメラを持って苦笑いを浮かべる男。


「ここでの撮影はやっぱりダメですね・・・」


こうして、主任の自主映画の制作は中断となった。

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