極彩王
彼女の言葉には、力がある。
己の意志を皆の意思と変えるような、力がある。
この国を納める王は女であり、まだ子供であった。
しかしその女王たる彼女が眼下の民に撒く言葉達は確かな力を有していた。
その幼い顔で堂々と佇み、短い腕には──鳥が居た。
彼女の肩まで上げている腕には極彩色の鳥。
その鳥は彼女に寄り添い、大人しく彼女の言葉を聞いている。
演説が終わった。
幼くとも女であろうとも言葉の強さで支持を得る彼女の背に国民からの歓声が当たり、城の中へと入ると、あの極彩色の鳥は彼女の腕から肩へと乗り移った。
それに、彼女は年相応に無邪気に笑った。
演説の間は微笑みもしなかった彼女は首や頬を擽る羽に笑い、鳥を優しく撫でる。
そして自室に入ると、鳥はベッドの上へと飛んだ。
彼女も鳥の隣で寝転がり、また笑みを浮かべた。
「あなたが居れば、あたしはなにも怖くないわ」
彼女はそう極彩色を撫でた。
唯一の友であるこの鳥を抱き寄せ、彼女の両手でちょうど収まる体躯の鳥は大人しく彼女の肌を羽で擽る。
幸せそうに笑う彼女に、鳥も笑った。
ほくそ笑んだ。
災難続きであった己の命であるが、よもやこんな幸運があろうとは、と。
〝辞上の英勇〟の殲滅を言い付けられそれを熟す最中、本物の〝英勇〟に見付かって命からがら逃げ込んだここ。
そこがこの国のまだ姫だった彼女の部屋であり、鳥の傷に同情した彼女から治療を受け、果てには〝友〟なんてものにまで成り上がった。
彼女はこの極彩色の鳥が悪しきものとも知らず、〝人ではない力〟を扱うものとも知らず。
あの力ある言葉がこの鳥に因って効果を発揮し、己が傀儡になってしまったとも、全く以て知らず。
随分こじんまりとした国ではあるが、この国を、民を、そしてこの娘を、真綿で締め上げた時の醜い悲鳴でも、己の主に捧げよう。
主は──そういった趣向が大好きなのだ。
鳥は笑う。
ほくそ笑む。
ゆっくりと片翼で彼女の首に真綿を回しながら、もう片翼で彼女たる傀儡を操りながら。
ほくそ笑む。
彼女はそれでも友に笑み、その極彩色を愛でていた。