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第一話(3)将来の夢

 次の日の夕方。リヒトさんがまたお話があると家を訪ねてきた。

「昨日話しそびれてしまったけど、来月に王都でパレードがあるんだけど、ソレイルと一緒に行ってみないかい? 学校に行く前に学校に通う間過ごすことになるお屋敷の下見や、世話してくれるセレサとの顔合わせもかねて」

 セレサさんとは、リヒトさんの恋人であり、私とソルが王都の学校に通う間にお世話になる方だ。

 確かに事前に挨拶は大事だ。それに王都のパレードにも行ってみたい。

 なんでも王都では、年に一度建国を祝うパレードが開かれる。豪華な乗り物に乗った王家の方々が大通りを盛大に通るのだそうだ。年に一度の一大イベント。それに、パレードに伴って王都にはたくさんの屋台が出てお祭り騒ぎになるそうだ。

 パレードやお祭りは確かに気になるし楽しそうではあるけど、何よりも気になるのは王家の方たちを見ることができることだろう。一度でいいからこの目で本物の王子様やお姫様を実際に見てみたい!

 ソルは去年のパレードを見に行ったことがあって、様子を聞いたことがある。王様と王妃様と王子様とお姫様がパレードに出るそうだ。前々からいいなあ行ってみたいなあとは思っていたので、とても心が弾んでしまう。

 でもまずは両親に許可をとらなければいけない。さすがに下見は自分達でお金は払わないといけないと思うので、両親の承認は重要だ。

 数時間後、両親に相談に行っていたリヒトさんは難なく許可をもらってきていた。まあ、王都の学校への許可もすぐに取り付けていたので、なんとなくそうなるだろうとは察していたけど。

 下見と言っても一番の重大な任務は顔合わせだからと言って、宿代は面倒見てくれることになったらしい。リヒトさんの恋人さんはどれだけ懐が広い人なのだろう。お金があり余るほどある人なのだろうか。それとも、何か裏があるのだろうか。あまりにもこちらに良い条件が揃い過ぎているので、どうしても勘ぐってしまうのは誰もがしてしまう仕方ないことだと思う。例えリヒトさんがとてもいい人だと知っていても。

 そういうことで、王都で開催されるパレードを見に、私は近々王都に行けることになった。


 それは、村にいるある日のこと。

「僕、将来はもっともっと強くなって、どんな相手からでもリリナを守れるようになるよ!」

 ソルが強く語ってくれたその夢は、頼もしく嬉しい言葉である。

「それは頼もしいね」

「リリナは将来何になりたい?」

「将来の夢?」

 考えてなかった。この世界での将来の夢かあ。

「うーん……」

 何がいいかなあ。お料理が作れるようになりたいし、お裁縫もできるようになりたいなあ。前世では苦手だったから、それをできるようになってみたいし。できなかったことができたらいいなあ。

 待て待て。この世界に魔法があるならそれを極めてみたり、研究してみるのもいいなあ。

「やってみたいことがいっぱいあって、まだ決められないかなあ」

「あのさ、だったら、その、リリナの将来の夢が決まるまででいいから、将来の夢、僕のお嫁さんになってくれないか!」

 将来の夢が決まるまでの間だけっていうのもおかしな気もするけど。でも、ふふ、子供らしくてかわいいな。

「うん。いいよ」

「ほ、本当に⁉」

「う、うん」

 すぐに肯定の返事が来ると思っていなかったのか、最初に驚いて、もう一度力強く尋ねてきた。少し圧倒されてしまったけど、もう一度返事をする。

 将来の確かな夢が決まるまででいいっていうのが、気楽で返事してしまったけど。でもソルなら優しいし、気配りもできるし、話してても困らないし、頼りになるし、かっこいいし、それに私の好きな赤い髪をしてるし。何より幼馴染みっていうのがいいよね。お嫁さんは前世からの私の憧れでもあるし。

「そっか。よかった。ありがとう」

 もう一度返事したことで確かな約束を確保できたと思って安心したのか、笑顔でお礼を言われたけど、よかったのかな? 将来の夢が決まるまでだけど。それに私でいいのかな? ソルなら将来リヒトさんぐらいイケメンになってモテそうだけど。まあでも、私の将来の夢が決まるまでだから、いいのか、な?

 そう考えると、真剣に将来の夢を考えておかないといけない。前世ではあまり真剣に考えてなかったし、決めるのも遅かったし。今世では前世での失敗を活かして考えておかないと。

 そうして将来の夢についてうんうん考えていたせいで、ソルがこれまでにないくらい嬉しそうに微笑んでいたことに、私は気づかなかった。


「うーん、難しい」

 そんなことがあったので、偶にお母さんにお裁縫や料理を教えてもらったりしている。今はお裁縫をやっているけれど、でもなかなか難しい。前世の記憶を頼りにしてみているけれど、どうも上手くいかない。

 お母さんに教わりながらこの前クッキーを一緒に作ったけど、とても硬いクッキーが出来上がってしまった。お母さんは笑顔でおいしいと言ってくれたけど、とても食べにくそうだった。うまくできたらソルにも食べてもらおうと思ったんだけど。

「でも上手にできているわよ」

 やっぱりお母さんは笑顔で(おだ)ててくれるけど、うまくいってる気がしない。うーん。やっぱり前世のような便利な道具がない上に、中途半端でうろ覚えな知識な私じゃ上手くいかないのかなあ。

 私は少し落ち込みながらも、それでも一生懸命手を動かすのだった。

第一話はここまでです。

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