002 ユニ王国の現状
紅林の目が光に慣れ、ようやく自分に抱き着いている人を見る。
黒髪が綺麗な女性だとは思うが、紅林の胸に顔を埋めている為顔は見えない。
しかし服装は見え、日本ではあり得ないような格好をしていた。
そう中世の貴族のような…
しかも訳のわからない言葉を発していたため、状況を理解しようと言葉を発する。
「ここはどこ?勇者ってなに?」
紅林の言葉を聞き、リカエ王女は顔を離し、横たわっている紅林の横に座り込む。
リカエの顔立ちは、紅林から見ても綺麗であり、端正という言葉がぴったりであった。
紅林もどちらかというと、純粋な日本人というよりは、ハーフっぽい顔立ちをしている。
しかし目の前にいる女性はハーフというよりも、欧州人に近い顔立ちである。
その彼女が先ほどの流暢な日本語を話したのか?と紅林は頭の中が混乱する。
しかし、軽く周りを見渡す限りこの場には彼女しかいなく、先ほどの言葉の後に抱き着いてきたことを考えると、彼女しか考えられない。
少し気怠い感じがするものの、紅林は上半身を起こし、胡坐をかいた状態になり、目の前の女性を真正面から見据える。
「えーと、まずはここはどこ?」
「ユニ王国の私の私室です。」
紅林は純粋な疑問をまず投げかけたものの、即座に回答が返ってくる。
しかもまったく知識のない王国の名前を持ち出されてだ。
「ユニ王国って初めて聞くけど、地理的にどの辺?ユーラシア大陸?北アメリカ?南アメリカはないか…」
リカエの顔を見て、自分で投げた質問の最後はうやむやにする。
日本にいたはずなのに、どこかに飛ばされた?という非現実的なことは考えず、
事故にあったという記憶から、自分の体が日本で対応出来ないほどひどいものだったため、海外へという考えに至るものの、その考えも破棄された。
自分で胡坐をかいた限り、体に気怠さはあるものの、どこか怪我をしている感じではなく、また痛みもない。
ということは…と、紅林が数個ある可能性から、取捨選択をしていると、目の前の彼女が話し出す。
「いきなりのことですいません勇者様。私はユニ王国の王女リカエと申します。」
そう挨拶するなり、立ち上がり華麗な挨拶をするリカエ。
そこから簡単ではあるものの、今のリカエというよりはユニ王国の現状を話し出した。
・デニス王国によるユニ王国への介入、および理不尽な要求。それに対応してきたこと。
・このままでは3か月を持たずにユニ王国が潰れてしまうこと。
・危惧したリカエはデニス王国の王子に婚姻を申し込むものの、理不尽な要望をつきつけてきたこと。
・その要望にユニ王国の重鎮や市民、当然のことながら王であるスティーブも憤慨し、婚約申込を取り消したこと。
・デニス王国はその事実を基に、武力行使をしてきたこと。
・ユ二王国は食料には困らないものの、鉱石はすべてデニス王国から仕入れており、この仕入が法外な値上がりを見せていること、逆にこちらからの食糧は法外な安さで出していること。
・その状況を鑑みて、父親は自分の命を差出し、デニスへの降伏も考えていること。
・悲観したリカエが、禁術書に書いてあった勇者召喚を行い、その召喚に伴いここにいること。
一方的な話をされた紅林は、その話の整理にかなり戸惑った。
「簡単に言うと、ここは俺から見れば異世界で、勇者召喚にて招かれたってこと?」
その紅林の質問に、リカエは頷く。
「どこのラノベだよ!」
紅林は大きな声で突っ込みをいれ、頭を抱えた。
その大声に触発されたのか、ドアがノックされる音が聞こえる。
「姫様?大声が聞こえましたが、どうなされましたか?」
その声にリカエは答える。
「問題ありません。心配させてすいません。ついでで悪いのですがお父様をお呼びしてもらえますか?」
リカエは冷静にドアの外にいる者に声をかける。
その声と内容を聞き、承諾した都度を言い、ドアから離れていった。
「勇者様の今後も含め、お父様とお話をさせていただければと思います。」
リカエは満面の笑みを浮かべながら、頭を抱えている紅林に言葉をかけた。