現代知識と現地知識の融合
初投稿になります。
今まで諸先輩方の作品を読むだけの人間でしたが、なにを思ったのか自分でオリジナルを書いてみようと筆をとりました。
正直、誤字脱字や、作品的におかしいところ、広げた風呂敷が畳めない可能性は多々考えられます。
暖かく見守っていただければ幸いです。
ご意見・ご指摘は謙虚に受け止めさせていただきます。
稚拙な作品に、アドバイスしてやってもいいよという方は、アドバイスをいただけると幸いです。
「さて、この国はあといかほど持つと思う?」
「次回の侵攻は防げたとしても、その次はもう…3ヶ月後にこの国は厳しいでしょう…」
「ふむ…こんな負け戦にこれだけの人間がまだついてきてくれている、わし一人の命でどうこうなる問題ではないかもしれんが、降伏をするか…せめて、せめて国民が虐げられないように。」
!!!
王様の一言に、静寂が訪れ、長い間沈黙が続く。
5分たっただろうか?10分たっただろうか?とても長く感じた時間だが、実際は短い時間だったろう。
玉座の間が、荒々しく音を立てて開く、この場にいる全員が、隣国デニス王国の侵攻かと思うほどの荒々しさだった。
そこに立っていたのは、この国の唯一の姫、可憐でお淑やかな王女、リカエ王女だった。
腰まである黒い艶のある髪の毛、目鼻立ちはキリッとしており、スタイルは胸が少しばかり小さいものの、まったくないわけではなく、スレンダーな体型をしている。
どこの誰が見ても、美人と認めるであろう彼女が立っている。
「お父様、そのようなことをするのであれば、私がデニス王国に嫁ぎます。」
その言葉に主だった者たちは、苦虫を潰したような顔をする。
それは、国王もしかりで、その発言をしたリカエ王女でさえも、同様の顔をしている。
「リカエ、散々話し合ったはずだ。デニスへ嫁げば、お前の尊厳自体がなくなる。純粋に嫁ぐだけならわしも賛成をしていたであろう。しかし、あの条件ばかりは、父親としても国王としても飲むことは出来ん。」
「しかし!お父様!命と比べられないのではないでしょうか?」
「確かに命は尊いものだ。その考えは今でも変わらん。ただ、あの条件は命と比較出来るような代物ではない。わしたちがどうにかなるものであれば我慢も出来るが、国民に対してのあの条件だけは受け入れられん。」
その場の会議に出席していたものたちも頷いている。
スティーブ国王、リカエ王女のユニ王国と、隣国デニス王国はこの世界を2分している王国である。
20年ほど前までは、打倒魔王を方針とし、手を取り合って様々な良い交流があった。
しかし、魔王討伐がなされた20年前から、徐々に関係は崩れていく。
最初は些細なことだった。魔王城に乗り込んだ兵数がデニス王国の方が多かったため、ユニ王国へ援助を要求してきた。
ユニ王国は、魔王を討伐したばかりということもあり、あまり経済的に余裕がなかったものの、穏便にすますために支払いを即座に行った。
しかし、事あるごとにデニス王国は様々な理由をつけてユニ王国へ様々な要求を行う。
当初ユニ王国は、訝しげながらも、デニス王国の要求を飲んでいた。さほど飲めない要求ではなかったからというのが一つと、この世界2分されている以上、良好な関係を維持するためであった。
ユニ王国は自然に恵まれており、作物が育ちやすいという環境もあり、食料に困らなかったのも災いした。
デニス王国は、様々な鉱石場を持ち、加工品に優れいている。
そこでユニ王国は、今まで要求を飲んでいた見返りに、原石の低単価での輸入を要求する。
しかしデニス王国は、気候や人足代の高騰等様々な理由をつけ、今までと同額、下手をすると値段を釣り上げてしか輸出されることはなかった。
そんな中、リカエ王女の婚姻を巡り、デニス王国とユニ王国に大きな溝ができる。
当初、スティーブ王はデニス王国の話に乗り気であった。
そう……デニス王国からのあの条件を聞くまでは。
ファ〜〜〜ッ
紅林星は大きなあくびをしながら、通学路を歩いていた。
市立司馬学園に通う3年生である紅林は、バスケ部に所属しているごく一般的な生徒である。
身長も183cmとそれなりに高く、バスケ部でもスターターに名を連ねてもおかしくない運動神経を有している。
しかし、マイペース過ぎるため、それが叶うことはなく、本人はそれを全く気にしていない。
今通学路を歩いている紅林、しかし時間は午前11:00と、通学時間にはおかしな時間である。
理由があるといえばあるが、それは正当な理由ではない。
単なる寝坊なだけである。
昨日発売された、とあるホラー系の鬼ごっこのようなゲームにのめり込んでしまい、部活後の体に鞭を打ってやりこんでしまい、起きたら10時を回っていただけの理由である。
両親が共働きのおかげで、一度起こされ、布団の中で目を覚ましたものの、二度寝という有益?な時間を貪っていたら、このような時間になっていた。
「腹減ったな~。」
そんな独り言を呟きながら、いつもの通学路を歩く。
先ほどの言葉に促されたのか、いつもなら交差点を右に曲がるところ、紅林はコンビニに寄るために直進する。
甲高いブレーキ音、体に走る衝撃。
紅林は確認したはずの右側から来た車に、体を飛ばされていた。
そこに慈悲はなく、冷たく、硬い道路に体を打ち付ける。
どこか他人事のように頭の中は冷静な紅林。
特に走馬灯のような過去のことなど思い出さず、小さい声で呟く。
「あっ…これは俺死んだな…」
紅林にとって数時間の時間がたっており、周りの雑音が聞こえる。
まだ瞼が重く、目は開けられないものの、今の状況を把握しようとする。
「確か、車に轢かれて、死ぬって思ったはず…ってことは、死なずに病院か…入院生活長いのかな~?」
と、どこか他人事のように口に漏らす。
さらに情報をもらおうと、まだ重い瞼を開ける。
光が差し込み、瞬時には目の焦点があわない。
そんな中、紅林には意味が分からない言葉が聞こえるとともに、自分の体に抱き着いてくる人がいた。
「勇者様!お助けください!!」