一つの店と魔獣とエルフの少女と
レンは見つけた店に近づいていった。
そこにはレンが見たことのあるような野菜や果物が並べてあった。
「これってリンゴだよな?」
赤い果物を見つけ、呟く
「ん?いらっしゃい!それをお求めで?」
顔のイカツイ男の店主が聞く。
レンは赤い果物を店主に見せ、
「あの、これってリンゴだよな?」
すると店主は、
「何を言ってんだ、それはルンゴだろ。そこにもちゃんと書いてあるだろ、大丈夫か兄ちゃん?」
『ルンゴ』こっちの世界ではこういうらしい。
「あー、そうだった わりぃわりぃ。てか、これ文字だったんだな。」
「はぁ?当たり前だろ。本当に大丈夫か兄ちゃん?まぁ、それはいい、兄ちゃんそれ買うのか?」
レンは財布を取り出し千円札を店主に渡した。
「これで買えるか?」
「はぁ?なんだこりゃ?こんなもん使えねぇよ。」
店主はレンに千円札を返した。
「やっぱ使えねぇのか。」
レンは財布にお金をしまいながら
「じゃあ、おっさん。俺、一文無しだわ。」
・・・
「なんだよ金なしか。だったら用無しだ。帰れ!他のお客さんの迷惑だ!」
店主は金がないとわかった途端に態度が急変した。
「なんだよ、金ないと客にそういう態度とんのかあんたは!」
レンはそう言い、店を後にした。
店を後にしたレンは行く当てもなく、ただひたすらに歩いていった。
王都を散々歩き回り、王都を出てレンは森の道を歩いていた。
「やけに静かだな。亜人はいるけど動物いねぇのか?この世界」
ーーダメだーーこーーらにげーいとーー
「ん?またこの声か。誰なんだ一体。」
ーーダメだ ここからにげないと!
「逃げる?なんで?」
ーー早く!
「まず、お前は誰なんだよ!」
ーーそんなのはあとでいい!
「だからなん…で?」
『グルルゥ』
「なんだ?!…っ、獣臭。ってことは、もしかして魔獣か?やっぱ異世界だからいるのか?」
次の瞬間、レンの足がナニかに噛まれ、血を吹き出している。
「ぐあっ!」
レンの足はふくらはぎ辺りがえぐられている。
ーーだから言っただろう?にげろって
「ぐぅあぁ 痛い痛い痛い!なんだこいつ。」
レンはなんとか立ち上がり、周りを見渡した。
「おいおい嘘だろ?」
なんと周りを黒く大型の犬のような魔獣が取り囲んでいたのだ。
その魔獣達は一斉にレンへ飛びかかった。
『やべぇ死ぬ!』そう思った。
「エレメンタル・フォース‼︎」
死を覚悟したレンだったが、レンを囲んでいた魔獣が光の矢らしき物に貫かれていた。
「ぬわっなんだ?!」
「君、大丈夫?」
レンが顔を上げると、そこにはレンが今までに見たことのない美しい女性が立っていた。その女性は薄い黄色の髪の毛で童顔で耳が長い。
「大変!足がえぐられてる!大丈夫?今治してあげる。」
彼女はそう言い、呪文を唱えた。
「エル・ヒール!」