第六回:全知視点と限定視点って何?
逢魔時「底辺なろう作家プレゼンツ小説執筆講座へようこそ。第六回のテーマは『全知視点と限定視点って何?』だ」
白崎「聞いたことがない単語ですね。一人称と三人称なら聞いたことがありますが」
逢魔時「近年の文学研究では、三人称/一人称という区別は本質なものとして見なされていないんだ。そこで登場するのが全知視点/限定視点という区別ということになる」
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◆全知視点/限定視点。
・全知視点
……作中人物(登場人物)全員の心の中まで説明できる、神のような客観的な語り手。
・限定視点
……作中人物の一人として、出来事と関わりながら観察や感想を語る主観的な語り手。
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白崎「三人称/一人称の区別とほとんど同じような気がしますが、一体何が違うのですか?」
逢魔時「三人称というのは物語世界の外側から語っている一人称ということになる。つまり、三人称も一人称も両方一人称ということだ。だから、物語世界の外側の語り手/物語世界の内側の語り手の二つに分けるというのが最近の主流になっているらしい」
逢魔時「では、ここからは詳しく話に入っていこう。僕は小説の書き方は大きく複数の方法に分けられると思っている」
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◆限定視点
・一人称限定視点小説
……一人称で書かれた小説で、主人公の視点から終始物語が展開される小説。
・二人称限定視点小説
……語り部である私が、貴方に対して直接語りかけるように書かれた小説。かなり特殊で数は少ない。
◆全知視点
・一人称複数展開小説
……複数の一人称限定視点小説を束ねたようなタイプや小説。複数のカメラで撮ったように複数の視点から物語を描くことができる。普通の一人称小説と効果が同じため、三人称よりも深く心情を描写することができ、かつ通常の一人称よりも自由度が上がる。
・三人称全知視点小説
……第三者の視点から物語を書くタイプの小説。世間一般で言うところの三人称小説。視点を常に中立の一点に固定し、一切の心情描写を行わないものと、どの登場人物にも自由なタイミングで視点移動をすることで、登場人物全員について直接的な心理描写ができるものの二つのものが存在する。前者は完全な描写小説だと思われているが、物語を書く際にどの場面を選ぶかという時点で既に編集が入っているため、完全な描写小説は不可能だと言われている。
・三人称一元視点小説
……登場人物ではない第三者が語り部となるが、ワンシーンにつき登場人物の一人だけと視点を定め、その人物の見た風景や内心のみを描写する形式。一人称とは違い、視点主の口調や知識によるものではない文章を地の文に書くことができる。
・一人称三人称融合視点小説
……一人称複数展開小説と三人称全知視点小説の融合。書く場面によって最も楽しめる視点を選択するという方法。
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白崎「最後のは『文学少年召喚』のやり方ですね」
逢魔時「そうだね。ちなみに、僕は視点の切り替えの方法としてこのような方法を使っている」
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・主人公の視点→何も書かない
・それ以外の人物視点→【〇〇視点】
・視点人物の心情を描きたくない場面→【三人称視点】
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白崎「かなり複雑で読者を混乱させそうですね」
逢魔時「確かにそうだが、僕が三年を掛けてようやく辿り着いた最高の書き方が、この方法だ」
逢魔時「他に視点の使い方としては、一つの場面を複数の視点から描写するという方法もある。白花氏の著書『必勝の聖眼の神殺しと戦女神』https://ncode.syosetu.com/n5762cz/はその例として挙げられる。面白い作品なので、是非ご一読を」