第五回:プロットを作ろう!
逢魔時「底辺なろう作家プレゼンツ小説執筆講座へようこそ。第五回のテーマは『プロットを作ろう!』だ」
逢魔時「プロットといっても、ストーリーを語りによって再構成したものの方じゃないよ」
白崎「……逢魔時さん。多分、そちらを思い浮かべる人の方が少ないと思います。……そちらの意味のプロットとはどういう意味なのですか?」
逢魔時「本筋には関係ないけど知っておいて損はないからな。図解したからこれを見てくれ」
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◆ストーリーとプロット。
・ストーリー=物語内容(できごとそのものを時系列通り並べたもの)
・プロット=物語言説(ストーリーを語りによって再構成したもの)
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白崎「つまり、年表のように纏めたものがストーリーで、プロットは時系列をバラバラにして並べたものなのですね」
逢魔時「回想シーンなどで時系列を並べ替えた場合、それはプロットになる。ここでのストーリーやプロットは文学の用語の方だから、実際のストーリーやプロットとは関係ないので混乱しないように注意してもらいたい。これに関連してジュラール・ジュネットの図式についても説明しよう」
白崎「ジュラール・ジュネットって誰ですか?」
逢魔時「フランスの文学理論家で文学作品を客体的なテクストとして捉えた上で、言語学や記号学、修辞学の成果を採り入れながら、テクストの文学性を解明していった人物だな」
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◆ジュラール・ジュネットの図式。
ディスクール(言説)discours
……テクストに記されることば。あるいはテクストそのもの。
=
イストワール(物語内容)histoire
……物語の出来事。(情報)
+
ナラシオン(語り)narration
……語りの場、語り手、語る行為。(情報の伝え方)
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逢魔時「例えば、Aさんが遅刻したとしよう。次の二つの文は同じ意味を表すが……」
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A.電車の事故が原因でAさんが電車に遅刻した。
B.あの真面目なAさんが遅刻した。電車の事故が原因だった。
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白崎「確かに印象がガラリと変わりますね」
逢魔時「これは語り方を変えた――つまり、ナラシオンに変化を与えただけだが、これだけの効果が出る。書き方を変えるだけで、同じ情報でも変化を出せるということを知っておけば、小説を書くときに役立つだろう」
白崎「どのような語り方をするのかも重要なのですね」
逢魔時「さて、そろそろ世間一般のプロットについて話そう。ストーリーの要約で、ストーリー上の重要な出来事を纏めたものと言い換えることができる。プロットには以下のような種類がある」
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◆プロットの種類。
・トリートメント
ストーリーがどのように始まり (設定)、どのような展開 (対立、衝突) があり、どのように終わるのか (解決) を要約した文書のこと。
・アウトライン
それぞれのシーンを数行で書き出したものである。
・ジャーナル
キャラクターの掘り下げを行うための手記。
キャラクターの内面を描写し、それによりキャラクターの言動を理解するツールになる。
ジャーナルでは、キャラクターの人物描写、行動、人間関係、収入、家族構成、および学歴/学校歴などといった種々の情報が明確にされる。
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逢魔時「と、こんな感じに分かれているが、僕もここまできっちり作っていない。思いついたものをただメモのように書き溜めておいている。それを上手く繋げて作品を作るという感じだ。登場人物もざっくりと特徴を決めて、後は直接執筆する中で形作っていく。とにかく、思いついたことをメモに纏めておけば、物語の構想が膨らんで世界観の濃い作品に仕上がるようになる。……まあ、書き込み過ぎるとくどい作品になるため注意が必要だけどね」
白崎「確かに濃すぎる作品だと読むのが大変かもしれませんね」
逢魔時「最近は内容が薄く分かりやすいものが人気らしい。まあ、僕は設定に殴られるような作品が好きだから、そんな風な作品を書くんだけど。もし、小説を書くなら自分の好きなタイプの小説を書くべきだと思うよ。読者は確かに重要かもしれないけど、作者である貴方自身も読者なのだから」
白崎「? 作者が読者になるのですか?」
逢魔時「僕が教授を受けた大学の准教授曰く、『言葉=他者』ということらしい。言葉にすることで、自分の管理できないものになる=他者性を帯びるということになるんだ。だから、自分の書いた文章を改めてみると新たな発見ができたりする。作者が同時に読者でもあることを理解し、自分自身がまず楽しめる作品を書くことが一番だと僕は思うよ」